表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
連載開始 1巻4/10発売!【完結】魔王様、溺愛しすぎです!  作者: 綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢をよろしく
26章 禁じられた魔術

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

345/1398

343. 治癒してデートは続行

「我が君、死臭と薬品の臭いがしますぞ」


 フェンリルの鼻は遠くの獲物を捕らえるため敏感だ。彼が死体の臭いだと断言するなら、間違いはないだろう。眉をひそめて、リリスから受け取った小人を覗き込んだ。


「呼吸してるようだが……」


 時折咳き込みながらも、小人は呼吸を続ける。どう見ても死体ではなかった。じっと見つめたあと、2つの解決策を思いつく。できれば後者を選んで欲しいのだが……。


「リリス。この小人を助ける方法が2つあるから、よく聞いて選んでくれ。ひとつ目はこのまま帰って、ルキフェルに預ける。ふたつ目はこの場で治癒してみる。どうする?」


 選択肢が複数ある時、選んで欲しい選択肢を後ろにする。絶対に選ばれたくない面倒くさい案を最初に提示し、相手の選択肢を後半へ引っ張る心理戦だった。ルシファーとしては小人を見殺しにする気はないが、せっかくリリスと2人きり(この場合のヤンは1匹換算)でデート中なのだ。出来るならまだ帰りたくない。


 じっと見つめたあと、リリスは手の中の小人に視線を落とした。


「治癒して、治ったら考えるんじゃダメ?」


「リリスが出した答えなら、オレはそれでいいぞ」


 治癒の魔法陣を描いてふと気づく。魔力の量に調整しないと、小人の身体が耐えられないかもしれない。魔法陣の中に新しい文様を書き足した。古代の魔法文字だが、魔力量を必要最小限に抑える記号として使われてきた。それを織り込んで、手のひらの上で展開させる。


 ぼんやりと光った後、ゆっくりと小人が身を起こした。


「……大丈夫そうだな」


 ほっとする。魔力を流しすぎてパンクしなかったことに安堵した。失敗して「パパの役立たず」なんてリリスに罵られたら、たぶん立ち直れない衝撃を受けただろう。


 手のひらの上に座った小人は小首をかしげ、それから立ち上がろうとしてぺたんと座り込んだ。まだ回復度合いが足りないのか。もう一度弱い魔法陣で治癒を重ねてみる。


「パパ、この子……足が具合悪いんじゃないかしら」


「どれどれ」


 顔を突き合わせて、小さな足を眺める。確かに身体の大きさの割に、奇妙なほど足が細かった。その足には鱗に似た模様があり、背中に小さな昆虫に似た羽がある。そのバランスは妖精に近いが、明らかに歪だった。


 一言で言えば『自然界の法則に反して』いるのだ。


 魔族にとって、羽は体内から溢れた魔力が顕現した象徴だった。つまり魔力が弱い種族は最初から翼をもたない。それはシトリーのような鳥人族であっても同様に適用される、いわば世界のルールだった。この小人の魔力はアルラウネの葉1枚程度の量で、魔物や魔族に分類されるか難しい。


 微小な魔力量もさることながら、羽の付け根が弱く羽ばたく動きがぎこちなかった。まるで後から付けたパーツのように、違和感が過る。


「羽も不自然だ」


 眉をひそめたルシファーの手から小人を受け取ったリリスが、おどおどする小人に微笑みかけた。ゆっくり指先で頭を撫でると、小人は笑う仕草を見せる。しかし声は一切発しない。声帯を持たない種族か、または心話など別の会話手段を持つ可能性があった。


「パパ、お茶にしましょう」


 ルシファーが用意したお茶に気づいて、リリスが先に立って歩き出す。その手のひらの小人を落とさないよう、細心の注意を払って歩く少女が敷物の上に腰を下ろした。大量のクッションを周囲に置いて、リリスの座り心地が良いよう整えたルシファーが隣に座る。


 ぐるりと回り込んだヤンは小型犬サイズのまま、ルシファーの足元に寝そべった。お茶を淹れて手渡そうとして、小人の存在に気づいたルシファーが周りを見回す。


「リリス、このお皿に小人を置くといい」


 本来はカップのソーサーなのだが、少し縁が持ち上がった小皿はちょうどいい大きさだった。花柄のカラフルなソーサーに、同柄のカップではなく小人が降ろされる。


「小人さん、何を食べるのかしら?」


 普段は世話を焼かれる側のリリスは、世話を焼くことが嬉しいようだ。焼き菓子の端を指先で砕いて、脅かさないようにソーサーの縁に置いた。おどおどした態度は変わらないものの、食べ物に近づいて匂いをかぎ、小人は砕けた欠片を口に押し込む。


 パンパンになるほど頬張る姿に、ルシファーと顔を見合わせた。

いつもお読みいただき、ありがとうございます(o´-ω-)o)ペコッ

感想やコメント、評価をいただけると飛び上がって喜びます!

☆・゜:*(人´ω`*)。。☆


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ