表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】魔王様、溺愛しすぎです!  作者: 綾雅(りょうが)今年は7冊!
序章 魔王様、ただいま育児奮闘中!

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

21/1398

19. 帰そうとしたのですが

「魔王陛下のお言葉です。帰って構いませんよ」


 頭痛をこらえるように顳顬(こめかみ)を押さえたアスタロトのセリフに、王女であり神官である女性は一礼して立ち上がった。しかし魔法使いは動かない。悩みながら口にしたのは、予想外の言葉だった。


「帰る方法がありません」


「どういう意味ですか?」


 アスタロトが顔を上げる。整った顔に赤面しながら魔法使いが説明した内容は、ある意味、納得できる話だった。魔王領まで彼女達が無事にたどり着けたのは、未熟ながらも偽勇者と騎士2名が戦って魔獣を追い払ったからだ。


 多少の魔法が使えても魔力量が少ない魔法使いと、回復系しか使えず戦力にならない王女では、魔の森を抜けて人族の領地まで辿り着けない。説明された内容に、アスタロトはいい笑顔を向けた。


 この次に続くだろう言葉を予想した民は、勝手に賭けを始める。アスタロトが彼女らを殺すか、生かして放り出すか。2つの選択にバアルが改めて賭けを呼びかける様子を、恨めしそうに指を咥えたベルゼビュートがにらみつけた。


「ならば簡単です」


 そう告げたアスタロトが雷を呼び起こす前に、ルシファーが右手の刀を地に突きたて、彼女達へひらりと手を振った。


 一瞬で転移させた姿に、バアルが頭を抱える。またしても賭けはパーだった。


 殺すか、生きたまま追い返すか――まさか、転移させて終わりなんて。だがこれは勇者を騙った青年や騎士と同じならば、殺した方に入るのかも知れない。そう考えて賭けの勝敗を計算し始めた。


「陛下?」


「お前、殺す気だっただろ。オレの指示は帰ってもらうことだぞ?」


 溜め息をついた魔王の指摘に、無言で頭を下げるアスタロト。どうやら当たっていたらしい。雷を落として殺せば帰す手間も要らないと考えたのは、彼が排除派だからだ。


 あっさり転移させたルシファーは刀を消すと、抱いたままのリリスに微笑む。静かだと思ったら、いつの間にか眠っていた。唇の端に光る涎をちょいちょいと拭いてやり、ばさりと黒い翼を広げる。


 国民へのサービスだ。翼は溢れた魔力から形成されるもので、色や形に制限はない。好んで黒衣を纏うルシファーの翼は1対2枚を解放していた。本来の彼の姿は12枚の大きな翼を背負った状態だが、即位以来見る機会がない。即位記念祭などのイベントでも6枚しか披露しなかった。


「リリスを寝かせるから、帰るぞ」


「……わかりました」


 理由が情けない。まだ飲み食いを続ける民に挨拶の手を振って、空へ舞い上がった。歩いて戻ってもいいが、飛んだ方が威厳がどうのと言われたことを思い出したのだ。


 あっという間に終わった娯楽を残念がりながらも、ダークプレイスの住民達は日が暮れて夜になり、夜明けが来るまで宴会を続けるのであった。





 転移させられた王女でもある神官は身を起こし、すぐ隣に倒れている魔法使いの呼吸を確認する。生きている事実にほっとして見回した風景は、見覚えがあった。


 自国のすぐ近くにある森の入り口付近だ。ここらは騎士団が定期的に魔獣を駆除しているため、安全とされる地域だった。


「ん…」


「大丈夫?」


「いったい何が……、転移?」

 

 魔法使いの疑問へ頷いた。あの場で何が起きたのかは知らない。しかし魔王である純白の青年が自分達を助けてくれたことは理解していた。


「私達は魔族を誤解していたのかも知れません」


 そう呟いた神官へ、魔法使いは何も言わずに頷いた。

いつもお読みいただき、ありがとうございます(o´-ω-)o)ペコッ

感想やコメント、評価をいただけると飛び上がって喜びます!

☆・゜:*(人´ω`*)。。☆

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ