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【完結】魔王様、溺愛しすぎです!  作者: 綾雅(りょうが)今年は7冊!
100章 幸せになろう

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【サポーター特典SS】※2022/6/7公開

 ルシファーは幼いリリスを腕に悩んでいた。どの髪飾りがいいか。早く決めなくては出かける時間が遅くなってしまう。


「リリス、どれがいい?」


「全部」


 以前は「これ」と選んでくれたのだが、先日ひょんなことから「全部」を覚えた。そう言えば全部手に入る、子どもの学習能力は高い。いけなかったのは、そう言われた時にルシファーがその場に並んだお菓子をすべて与えたことだった。これで成功体験を得てしまったのだ。


 両手を広げて全部を繰り返す幼女に困惑し、己の教育方針の誤りに気付くもすでに遅い。リリスはご機嫌で並んだ3つの髪飾りを両手で示した。全部! ひとつでも可愛いから、全部付けたらもっと可愛い。幼い理論だがあながち間違ってもいなかった。


 大輪の花にリボンが重ねられたタイプ、コームに小ぶりな花が大量に飾られたもの、大小二匹の蝶が舞うクリップ。頑張れば全部飾れないこともないか? 迷った末、リリスに逆らえないルシファーは彼女を膝に座らせた。


「全部付けるから、動いちゃダメだぞ」


「うん。パパ、可愛くね」


「鋭意努力する」


 前向きに頑張ります。そんな言葉を、つい仕事バージョンで返した魔王はまずコームを手に取った。すでにアデーレにより後ろで結んだ黒髪の上に差し込む。櫛の部分が見えないよう注意し、小花が並んだ状態にした。


 斜め右上、耳よりわずか高い位置に蝶のクリップを止める。左側しか空きがないので、そこに大きな花を飾った。垂れたリボンがリリスの耳や首筋に掛かって可愛らしい。だが本人は擽ったいのか首を竦めた。


「パパ、くちゅぐっちゃい……くちゅ、くすぐ……ちゃい」


 言い直してもうまくいかず、ムッとした顔になる。尖った唇を指先で押し戻した。


「こら、可愛い顔が台無しだぞ。リボンはここに止めるぞ」


 耳の後ろに垂れるよう調整し、魔法陣で固定した。完璧だ。リリスの希望である「全部」を叶えた上、彼女の愛らしさも両立した。首筋の擽ったいも解消できた。


「大成功だ」


 自画自賛の魔王だが、この時点ですでに保育園は遅刻だった。時間に気づいて、リリスの手を引く。


「じゃあ保育園へ行こうか」


「パパ、今日は休み」


 言われて予定を確認する。予定表に記された印から、本日は保育園が休園だった。しばらく固まる。ぎこちなく振り返った先で、愛らしく装った娘が首を傾げた。


「よし、ヤンを連れてピクニックしよう」


「ほんと!?」


 やったと両手を挙げて喜ぶリリスを抱きかかえ、極秘ミッションが始まる。侍女や侍従に見つからぬよう物陰を歩いて中庭へ抜け、小声でヤンを呼び寄せた。足音をさせず現れたフェンリルを転移魔法陣で包み、一気に湖へ向けて飛ぶ。


 出現した先でまた周囲を確認し、追いかけてくる者がいないことに安堵の息を吐いた。料理はアデーレに用意してもらい、空間を捻じ曲げて受け取ればいい。寝転がったヤンに寝転がるルシファーは、花冠を作るリリスを見守りながら目を閉じた。


「アシュタ、これ留めて」


「シィ、リリス様。私が来ていることがバレます」


「しぃ」


 アスタロトが人差し指を立てて唇に当てる仕草を真似て、リリスは楽しそうに笑った。それから出来上がった花冠をルシファーの髪に載せる。振り返って、アスタロトと笑い合った。


「では失礼しますね」


 足元の影に吸い込まれて消えたアスタロトを見送り、リリスはルシファーの隣に潜り込んだ。当たり前のように抱き寄せる腕に甘えながら、彼女は赤い瞳を閉じる。今日のパパはお休みだけど、アシュタは秘密で話さなかったみたい。


 目が覚めたルシファーが状況に気づいて頭を抱えるのは……まだ数時間先のお話。






*********************

カクヨムのサポーター特典です。1ヵ月以上経過したので掲載します。

『現在連載中』

 魔王様、今度も過保護すぎです!

 世界を滅ぼす僕だけど、愛されてもいいですか

 要らない悪役令嬢、我が国で引き取りますわ ~優秀なご令嬢方を追放だなんて愚かな真似、国を滅ぼしましてよ?~

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[一言] >パパ、くちゅぐっちゃい……くちゅ、くすぐ……ちゃい ・リリスが可愛すぎて転がりそうになります。
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