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連載開始 1巻4/10発売!【完結】魔王様、溺愛しすぎです!  作者: 綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢をよろしく
93章 大規模視察、留守番は誰

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1275. 迷子の森のアドキス

「ここはさっきも通った気がするの」


「あっちじゃないか?」


 魔の森で、シトリーとレライエは道に迷っていた。印として手折った花の茎を確認し、眉を顰める。この場所は踏み込まないようにしていたのに、どうして迷い込んだのか。それこそが迷いの緑と呼ばれる地域の特性だった。足を踏み入れた記憶がないのに、いつの間にか引き込まれる。


()()()()整理しよう。上空から確認する手は使えそうか?」


 竜人族のレライエも竜化で空を飛べるし、シトリーは鳥人族だ。解決手段として最適に思われたが……森の上部は蔓が覆い木漏れ日も届かない。その為、太陽の方角を確認して、位置を割り出す方法も使えなかった。


「無理ね、翡翠竜さんの二の舞よ」


 シトリーは飛ぶ際に、翼に魔力を乗せる。両手を翼に変化させるため、その翼は大きかった。絶対に途中で引っかかるし、蔓自体がうねうねと動いているので、確実に獲物を捕らえに伸びてくる。


 すでに一回、アムドゥスキアスが挑戦した。彼は現在行方不明である。というのも、上空から確認すると言って飛び立ち、あっという間に蔓に絡まれた。助けようとしたレライエの目の前で、無情にも投げ捨てられてしまったのだ。とんでもない距離を飛ばされたらしく、長い距離を感じさせる悲鳴はドップラー効果で届いたほど。


 彼が戻ってくるのも時間がかかりそうなので、自力で脱出を試みていた。早くしないと、次の予定がずれ込んでしまう。ちょうどお昼休みを挟んでいたため、現時点でまだ余裕があるが。


「ねえ、いっそ魔王城に戻ったらどうかしら」


 ふわりと浮いた瞬間、うねうねと近づく蔓にうんざりしながら提案する。シトリーの言葉に、レライエも迷った。確かにこのまま蔓と戦っていても、時間ばかり消費してしまう。魔王城に戻って、誰かに転移で飛ばしてもらうなり、自力で飛んで目的地へ向かった方が早そうだ。


「問題はアドキスだ」


「ここへ戻ってきちゃう?」


 レライエは「たぶん」と口にしながらも、確証があった。レライエに惚れ抜いてストーカーのような婚約者の言動は、かなり把握している。つい先日も仕事で話したコボルトに悪戯しようとした理由が、レライエの手を握ったから……だった。その程度でコボルトの毛を丸刈りにしようとしないで欲しい。


()()アドキスだぞ?」


 レライエに反論できず、シトリーも苦笑いした。


「翡翠竜さんって、かなり能力高いのよね? 元大公候補だもの。なぜ転移を使わないのかな」


 ふと気付いたシトリーの疑問に、レライエは額を押さえて溜め息を吐いた。


「失敗するそうだ」


「え?」


「奴は方向音痴で、座標指定がよく間違っている。以前も洞窟へ行こうとして失敗し、滝壺の中に出現した。水流に巻かれながら浮き上がるのは大変だったぞ」


「……わかったわ」


 方向音痴すぎて、座標指定が信用できない。本人が太鼓判を押す時ほど失敗するらしい。武芸に秀でて体が丈夫な竜人族じゃなければ、レライエの命は何回危険に晒されたことか。転移先が火口の縁だった時は、これで終わりかと思った。嘆く友人を慰めながら、シトリーは渡された魔法陣を見つめる。


「やっぱり一度魔王城に戻りましょう。翡翠竜さんがここへ戻れる可能性は低いわ」


 だって――方向音痴なんだもの。この場所の方角すら怪しいんじゃないかしら。


 友人の思わぬ指摘に、レライエは目を瞬き……こくんと頷いた。


「そうだな、我々は魔王城に戻り出直そう。奴はそのうち追いついてくる」


 ストーカー気質全開のアムドゥスキアス、方向音痴だが執着心には定評があった。おそらく匂いでも辿ってたどり着くだろう。彼女らの予想を肯定するように、泥の沼に落ちた緑の竜は鼻をひくつかせる。


「もう少し向こうかな」


 この時点で、すでに3回も転移に失敗していた。

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