1239. 風呂敷と折り紙も
話し合いで決まった内容を、書類にまとめるよう大公女らに命じる。これは魔王城を頂点とした政のルールだった。魔族全体に絡む提案の場合、大公にアイディアを提起する書類を作成する。それを検討した大公が定期的に行う貴族会議に諮り、問題がなければ魔王の署名を添えて決定された。
全体の方針が決定されてから、再度内容の確認と詳細の詰めを文官を交えて行い調整した上で、魔族全体へ通知される。貴族達は全員集まることは少なく、謁見申し入れをしに来た者や参加できる家の者が協力するシステムだった。あまり顔を出さない貴族がいれば、その領地へ大公や重鎮が足を運んで意見を聴取する仕組みもある。
辺境に住もうが、転移魔法が使える高位魔族には関係ない。魔王ルシファーの足が軽いこともあり、ちょこちょこと視察名目で遊び歩いていたのが過去の経緯だった。その習わしに従い、提案書を作るのは大公女の仕事である。アンナは休暇中で、イザヤも育児休暇を取得したばかりだ。赤子をあやしながらの書類作成は気の毒だろう。
「書き方の見本があったわよね」
「確か資料室で見たわ」
「紺色の表紙に銀文字がそうよ。資料室を入って左側、手前から3つ目の棚の最上段だったかしら」
レライエとルーシアがひな形探しを始めると、リリスは本の装丁や置かれた場所を細かく説明した。驚いた顔を見せるが、すぐにシトリーが資料室へ向かう。お茶会は解散したものの、イザヤやアンナはまだ執務室にいた。
過去にリリス用に購入したが、使わなかった玩具やベビーオールが余っている。それらを提供すると言ったら、あれもこれもと選び始めた。持ち運べる量を検討しているようなので、必要なら全部送ると言われ、混乱しながらもまだ選んでいる。部屋に収まる量に調整したいらしい。
いくら広い屋敷でも、置ける量は限られているのだから当然だ。ルシファーのように収納魔法を習得すれば、今後はいくらでも使えるだろうが……。
大人しい弟と騒がしい姉。どちらも同じ顔をした双子は、覗き込む誰にでも愛想を振りまく。お陰で部屋にくる文官や侍女達の評判も上々だった。まだ歩き回る月齢ではないので、タオルに包んで並べた双子は時々確認するだけで問題なかった。
両親が玩具を選別し、子供達に見せる。反応の良い玩具を中心に集め、不思議な四角い布を広げて積み重ね始めた。それぞれの角を持ち上げて対角線上で結ぶと、立派な包装状態となる。
「なんとも……不思議だな」
シーツで何かを包むことはあったが、このような包装は知らない。バッグのようにも使えるのだと説明を受け、驚いた。包み方が多種多様にあるのなら、これを本にして広めたら人気が出そうだ。畳んで持ち歩けるし、包むものの形状を問わないのは利便性が高い。
「この包み方を本にして欲しい」
「やってみますわ。実践で教室を開いた方がいいかもしれません」
なるほど。実際に教えるのもいい。だが本にして残すことで、遠方で参加しづらい者にも知識を広めることが出来た。どちらも同時進行することになり、絵が得意な者を選んで描かせることで合意した。
片方は我が子のベビー用品や玩具をもらい、片方は知識を得た。どちらも満足できる物々交換である。
「また新しい知恵があれば提供してほしい」
ルシファーの言葉に、隣で夢中になって風呂敷を巻いたり解いたりするリリスが笑う。
「ルシファー、これって折り紙だわ」
「あ、折り紙の本も出しましょう!」
アンナが興奮した様子で手を叩き、意気投合したリリスと盛り上がった。書類に使う本を手に戻ったシトリーが戻り、大公女達は提案書作りを始める。知恵や知識を出し合う彼女らの様子を、ルシファーは穏やかに見守った。
魔族が少しでも楽しく暮らせるように。今後の発展を願いながら。




