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連載開始 1巻4/10発売!【完結】魔王様、溺愛しすぎです!  作者: 綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢をよろしく
88章 何事も過ぎれば害

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1214. 倫理的に問題じゃないか

『ルシファーは生まれた時から魔王。ベール、ベルゼビュート、アスタロトは……あなたの試作』


 思わぬことを口にした魔の森を見つめる。凝視すると表現した方が近い。そこで彼女は照れた。10年後のリリスのような姿で、赤くなった頬を両手で包む。お母さんと呼んだものの、非常に愛らしい仕草だった。


「試作とは?」


 大切な話なので、外見に惑わされていい加減に終わらせる気はない。また話をするチャンスがあるか分からないこともあり、ルシファーは先を促した。ふらふらと距離を詰めた魔の森が、リリスの前に座る。伸ばした手を、ルシファーは反射的に受け止めた。


 ひんやりしている。夏の日に木陰の苔に触れたような、心地よさだった。冷たいのだが、刺激的ではない。氷や雪に似た感じはなく、しっとりと柔らかい手触りだ。


『ルシファーを作ろうとして、ひとつ失敗した。だから3人を生んだ』


 一番初めにルシファーを生み出そうとしたが、魔力の込め方を間違えて崩壊した。バラバラになった魔力を集めて、違う形で生み出したのが幻獣霊王であり、精霊女王や吸血鬼王だった。それぞれに特色を持たせ、能力を偏らせたことで作り方を学んだのだという。それから理想の魔王を作り上げた。


 魔の森という概念に近い自分を守る存在として――誰よりも強く、優しく、美しく。森である彼女がもっとも好む陽光に似た白い姿を与えた。


『王は民が必要。私という大樹に枝が伸びるように』


 様々な種族を生み出した。雨水が川となれば、そこに住まう種族を。茂みがあるなら、利用する種族を。ルシファー達の生活を見守りながら、徐々に種族を増やしていく。衣服を与えるために糸を紡ぐ虫を、その糸を布にするアラクネも必要となった。そうして増やした結果が、今の世界なのだ。


「リリスはどうして?」


『あなたのそばに居たいから、分身を作った。人族が増え、森を保てなくなるのが怖くて』


 魔の森という大きな存在が、奪われ続ける魔力の補充が出来ずに滅びの危機に瀕していた。その兆候は小さく、気付かぬうちに亀裂を生んでいたのだろう。ルシファーは触れた冷たい指先を握り込んだ。


 リリスを生み出し、その中に避難しようとしたのか。もしそうなっていたら、ほとんどの種族が滅びただろう。そうならなくてよかった。人族を排除するという最後の決断が間に合ったことに、ルシファーは安堵の息を吐く。


「人族の排除が遅れて申し訳ない。もっと早く滅ぼすべきだった」


『私も言わなかった。ルシファーは悪くない。でも助けてくれて嬉しかった』


 微笑む魔の森は、また輪郭がぼやけていく。元が姿を持たない存在であるため、固定した姿を纏うことが苦手なのだ。そう判断して、楽にしてもらっていいと告げるが、魔の森は首を横に振った。


「もう、ルシファーったら! お母さんはルシファーに触れて、綺麗な姿を覚えていて欲しいのよ」


 だから姿を得た。リリスが叱るように告げる。同じ黒髪で金の瞳をもつ魔の森が、指先を握り返してくる。ささやかな触れ合いなのに、彼女は本当に嬉しそうだった。


「私は徐々にお母さんと同化していくの。いずれは一緒になって、私達はルシファーのお嫁さんとして暮らせるわ」


「同化? リリスが消えるのか」


 不安に襲われたルシファーの手を引っ張り、魔の森は首を横に振った。大きく、絶対にそんなことはないと否定する。


『私とリリス、もともと同じ』


「中身は同じなの、お母さんと私は同じだわ」


 繰り返す2人を見比べて、ルシファーが考え込んだ。お母さんは生みの親だ。リリスはオレが育てた。順番で行くと祖母、オレ、娘だろう。祖母と娘が同一人物で嫁になる……倫理的に問題じゃないか?


 混乱したルシファーに、魔の森とリリスが同時に笑う。


「違うわ。双子のようなものだと思って。お母さんの自我はこれから休眠期に入るの。その間は私がお母さんを宿すのよ」


 すべての魔力を取り戻した森は、しばらくの間、活動を抑える。そう告げられ、ルシファーは驚きに見開いた目を瞬いた。

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