表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
連載開始 1巻4/10発売!【完結】魔王様、溺愛しすぎです!  作者: 綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢をよろしく
88章 何事も過ぎれば害

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1215/1398

1209. 雨が止んだら顔を上げて

 夜半から降り出した雨は、各地で景色を変えた。温泉地がある火山は流れ込んだ雨で水蒸気爆発を起こし、全体の形が東側へ傾く。海辺に近い森の川が氾濫して崖が崩れ落ちた。川の流れる位置が移動したことで、リザードマンの沼地が大きな池になってしまう。様々な弊害と変化を齎した雨は、午後には小康状態となり止んだ。


「今回は人的被害は抑えられたか」


 ルシファーは避難民のリストを見ながら、安堵の息をついた。まだ完全に把握したわけではないが、空を飛べる魔王軍の精鋭達が手分けして魔力感知を行った結果、現時点で生き埋めの報告はない。魔王軍を動かしての避難が順調だったことで、ケガ人程度で済んでいた。


「よかったわ、お家をなくした人はしばらくお城にいてもらうのよね?」


「そうだが……」


 リリスの言い方に、何か考えているらしいと首を傾げる。魔王城に避難した人々は、住んでいた領地が荒れている場合も多い。復旧作業に通い、住居や周辺の環境を整えてから戻るのが基本だった。寿命が長いため、のんびりと新しい村や町を設計する種族も少なくない。


 魔王城だけでは全種族を取り込めず、ベールやアスタロトの城に空間を接続して拡張した。その維持に使う魔力を供給するため、ルシファーはしばらく城を離れられない。リリスが外へ出たいと願っても、叶えてやれるのはかなり先の話だった。残念だが、海への旅行はお預けだ。


「大勢で集まるのなら、何か作りたいわ」


 思わぬ発言に、真意が掴めずに考え込む。欲しい物があれば強請るはずだ。大勢で作りたいと言うが、物が目的ではないような口ぶりだった。しばらく考えたが、省略され過ぎたリリスの願いが分からず、ルシファーは彼女に尋ねる。


「大勢で作りたいものがあるのか?」


「違うわ。えっと……今まで別に暮らしてたから繋がりがない種族も多いでしょ? せっかく一緒に暮らすんだから、お互いに得意なことを合わせて何か作れば、仲良くなれると思ったの」


 通じていないと分かったため、リリスも言葉を駆使して伝えようと努力した。ルシファーも解読力を目いっぱいフル活用した結果、やっと話が通じる。


「普段は接点がない種族同士が一堂に会したのなら、得意分野を生かした新しい産業の開発が出来るか。よく考えたな、リリス。復興の間に手が空く人や子ども達に協力してもらおう」


「私が考えたんじゃないわ。アンナの赤ちゃんを見に行ったら、イザヤとアンナが話してたの。それを伝えたのよ」


 自分の手柄ではないと笑うリリスだが、こういった話を耳に挟んでもそのまま終わらせる者もいる。きちんと周囲に説明し、実現する方向を示すことも大切だった。組織の上の者が硬い考えをしていたら、それだけ下が苦労するのだから。


「そうか。それでも助かった。さっそくアスタロト達に提言してみよう」


 具体的な案がいくつか出れば、そこからは議会の承認を得てルシファーが署名するだけ。リリスを引き寄せて黒髪に接吻ける。自分の手柄だと言い切ることも出来たのに、正直に話すリリスが無邪気に喜ぶ。その様子を見つめるルシファーは、オレの子育ても捨てた物じゃないと笑みを深めた。


「雨はこのまま止みそうだ。復興で忙しくなるな」


「森の木を使えるように、魔の森にお願いしてみようかしら」


 思わぬ発言に、ルシファーが目を瞬く。魔の森の木々を伐採すると、その代償に魔力を持っていかれる。だがもし代償なしに木々を使える期間があれば、復興がはかどる筈だった。だが、そんな都合のいい話が通るのだろうか。


「どうやって頼む?」


「また森の中に入るのよ」


 簡単そうに言われたが、ルシファーは不安を覚える。リリスが森の子なのは間違いない。生みの母である魔の森の中は、リリスにとって居心地がいいだろう。何かあってもルシファーが助けてやれない場所に、彼女を送り出すのは気が引けた。溢れた魔力の処理に赴いた前回とは違う。もやもやした気持ちのまま、愚痴るように声を絞り出した。


「オレは心配だ」


「だったら、一緒に行く?」


「「は(い)?」」


 ルシファーの声に重なったのは、復興案を運ぶアスタロトの声だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ