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連載開始 1巻4/10発売!【完結】魔王様、溺愛しすぎです!  作者: 綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢をよろしく
83章 勇者が攻めてくる季節

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1147. 我が配下から謀反人ですか

 珍しくルキフェルが敵を譲ってくれた。それも丁寧に居場所の指示付きだ。浮かれて転移した先で、ベルゼビュートは眉をひそめた。


 やだ、この子。見覚えがあるわ。


 濁った深赤の髪と同色の瞳、唇の端に覗く濡れた牙……小麦色の肌の女性は目を細めて睨みつけてきた。これ、アスタロトのところの子爵令嬢じゃない。リリスを拾ってすぐの頃、ルシファーとアスタロトが落とした人族の砦に囚われた吸血種だ。


 エルフの友人を訪ねる途中で捕まったと供述したけれど、あの時の彼女は人族の血の匂いをさせていた。おそらく襲って逆襲されたのは間違いない。それでも咎めの対象にならなかった理由は、当時の彼女が傷だらけであったこと。他にルーサルカを含む数人の子供が捕らえられていたことにあった。被害者として判断されたのだ。今回は明らかに状況が違う。


 少し足りない胸元には赤い血が垂れていた。唇の端も汚れ、その表情は険しい。よからぬモノを口にしたのね。溜め息が漏れた。ここ十数年で魔の森は変革期を迎えている。これから徐々に淘汰される種族が現れるだろう。魔の森に最も近しい精霊だからこそ、ベルゼビュートはそれを敏感に察していた。


 魔王城と距離を置いているのも、それが原因のひとつだ。仲良くした子が、数年後には淘汰され滅びる可能性がある今、出来るだけ単独で行動したかった。別れを繰り返すことは精神を消耗する。ルシファーのように痛みを昇華できるならいい。アスタロトやベール、ルキフェルは別れを受け入れる。


 でも……それが出来ない。痛みとして棘が胸に残った。新たな痛みを受けるなら、知らないうちに消えて欲しい。卑怯でみっともないと思いながらも、ベルゼビュートは逃げを選んだ。いつ死ねるかわからないのに、ずっと痛みを増やし続ける勇気はなかった。


「何を……してるの?」


 足元に数人の人族が転がっている。手足を縛られ転がる人族の首筋や腕には、いくつも噛み傷があった。問うまでもなく、餌として捕獲したのだろう。今は人族を保護する魔王の命令がない。見かけた人族を食料として捕獲しても構わなかった。


 足元の死体は問題ではない。ルキフェルが「魔王の敵」として送り込んだ場所に、子爵令嬢と数人の吸血種が集まっていたことが重要だった。あのルキフェルが間違うはずはない。つまり、彼女らは種の頂点に立つアスタロトを裏切り、隠れて魔王に反逆した。


「アスタロト、来られる?」


 召喚の意図を込めて彼を呼ぶ。今はアデーレの療養を兼ねて、自領に引き籠っている。漆黒城で休む彼が深い眠りに入っていたら……声は届かないだろう。だが起きていれば、必ず応える。それだけの信頼は築いていた。


「ベルゼビュート? 何事……おや、()()()でしたか」


 人族排除派の急先鋒だったアスタロトは、人族の死体に動揺しなかった。人族の血を主食とする一族に、狩りを禁じなかったのだ。子爵令嬢は軽く会釈をして、汚れた口元を拭った。


「何か問題ですか」


「……陛下が人族の少女に襲撃された。もちろんご無事よ。関与した主犯を特定したルキフェルに従い訪れた先で、これよ」


 足元を指さす。ベルゼビュートも人族排除派だった。ルシファーの知らない場所でいくつも村や町を滅ぼしたし、各種族に手を出した人族を殺してきた。それは事実で隠す気もない。だから餌にされた人族への同情はなかった。淡々としたベルゼビュートの指摘に、アスタロトが目を細める。


「なるほど、我が配下から()()()ですか」


 種族の長として不名誉なことだ。魔王を直接襲ったのなら、一族は褒め称えるだろう。それは勇気の証明であり、魔王位を狙うことは権利として認められているからだ。しかし他者を操って策謀をめぐらす方法は、ただの謀反だった。反逆者として処分される。


「ええ。あなたの手下だから、任せるわ。手を貸した方がいい?」


「そう……ですね。折角ですから手をお借りしましょう」


 珍しく話に乗ってきたアスタロトに驚きながら、ベルゼビュートは愛用の魔剣を呼び出す。鞘を必要としない美しい銀の刃を右手に握り、口元を緩めた。

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