表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
連載開始 1巻4/10発売!【完結】魔王様、溺愛しすぎです!  作者: 綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢をよろしく
79章 先祖返りが増えてませんか

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1094/1398

1088. 涙脆い風物詩

 誰も呼ばなくていいと言ったのに、呼ばれてしまったベルゼビュート。大公の地位は貴族の頂点だし、彼女も辺境周りで忙しいはずだが。


 溜め息をついたルシファーは、仲裁に入った。事件は解決しているのに、新しい騒動を起こされては堪らない。何より一度滅びかけたせいか、この若者は祖父のプルソンと違った。他者の話を聞く余裕がある。


 手短に事情を説明し、ベルゼビュートに剣を納めさせた。彼女の登場にリリスがいち早く気づけたのは、空中に滲んだ魔力の色だという。転移を使う先に、転移先に魔力が先に現れる現象を可視したのなら、驚くべきことだった。


 転移はどこに誰が飛んだのか。現れるまで分からないのが強みだ。それを直前とはいえ、色で見分ける能力は賞賛に値する。ルキフェルあたりが研究と称して、分析したがるだろう。


「あの、すみませんでした」


「いや、構わぬ。名を聞いても良いか?」


 報復したり後で罪に問う気はないが、この場で「若者」や「青年」と呼称するのは無理がある。その上「半鱗族」と呼べば、周囲に勘違いされるだろう。魔王に弓引いた一族として記憶されるのも気の毒だった。


 気遣いに頷いた青年は「プルフラス」と短く名乗る。頷いたルシファーは、目の前の屋台の店主達に声をかけた。


「騒がせて悪かった。誤解があったようだ。商売の邪魔をした詫びに、在庫をすべて買い取ろう。民に無料で振る舞ってくれ」


 今日の販売分として仕入れた在庫をすべて買い取る。その話に、わっと店主達が盛り上がった。ちまちまと焼いていた網の上に大量の肉や魚が乗せられる。手招きして子供達を呼び寄せ、好きな物を食べるように伝えた。


 リリスや大公女3人も積極的に動いてくれたお陰で、あっという間に屋台の前が人だかりで見えなくなる。こっそり屋台の裏に回り込んだリリスは、手際良く魚や肉を貰い受けた。


「ほら、食べて」


 プルフラスに串焼きを差し出す。紙袋に詰め込んだ串を、おずおずとプルフラスは引き抜いた。大きな肉串を見ていると、リリスは笑いかける。


「冷めちゃうわ」


「でも」


「リリスの好意だ、受け取っておいてくれ」


 ルシファーが歩み寄って声をかけた。身構える様子のない彼と違い、肉を頬張りながらもベルゼビュートはプルフラスを睨んでいた。その視線を遮る形で、イポスはリリスの斜め後ろに立つ。


「はい、イポスも」


「ありがとうございます」


 彼女相手の時は「仕事だから」と断っても聞いてくれない。付き合いが長くなって理解したイポスは素直に1本抜いた。こちらは魚の丸焼きだ。両手を使って食べる羽目になり、イポスは苦笑した。


「ガープとはどこで知り合った?」


「向こうから訪ねてきたのです。母は俺を生んですぐに亡くなったそうです。そのため一族の話を誰からも聞いたことがなくて。叔母もあまり教えずに亡くなりましたし……」


「そうか。気遣ってやれなくて悪かった」


 ルシファーの言葉に、プルフラスは目を忙しなく瞬いた。不覚にも泣きそうだ。それを抑えて肉に齧り付く。


「うっ……」


 なぜかルシファーの後ろにいたベルゼビュートが、代わりに涙を溢していた。化粧が溶けるぞと注意しかけて、リリスが慌てて人差し指を唇に当てる。余計なことを言うなと伝えるゼスチャーは、魔王に届いた。慌てて口を噤む。


 可哀想、なんて酷いことをする奴がいるの――肉や魚を頬張った口で文句を言い、ぼろぼろと涙を流す。女大公ベルゼビュートの姿に、民は大して驚かなかった。涙もろく情に弱い。彼女の性質は民に快く受け入れられていた。敵と睨んだ相手に同情する姿は、いつもの風物詩に近い。


「またベルゼビュート様が泣いてるよ」


「あの方は涙脆いからね」


 店主達は新しく焼けた串を手渡しながら、微笑ましく見守った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] そんなベルゼビュート様を私も好いてます。(´∀`*)ウフフ
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ