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連載開始 1巻4/10発売!【完結】魔王様、溺愛しすぎです!  作者: 綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢をよろしく
78章 温泉旅行は驚きがいっぱい

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1078. ついにお母さんか

 色で魔力を見るリリスが目を細め、不思議そうに振り返る。魔力感知でアスタロトを確認したルシファーも、首を傾げた。


「なんで帰ってこない?」


「アシュタ、動かないわね」


 ケガをした様子もないのに動かず、同じ場所にいる。爆発があったことも気づいていないのだろうか。少し深い位置にいるアスタロトを待つこと5分。ようやく出てきた。


 転移を使わない理由がわからない。何かを掴んで出てきたアスタロトは、容赦なくマグマの中へ掴んだものを放り出した。真っ赤な溶岩に沈んだ後、ぷかっと浮かんだのはピヨによく似た雛だ。


「アスタロト、何だ……それ」


「鳳凰の雛ですね」


「「「誰の子?」」」


 鳳凰やアラエルまで加わって疑問を呟く。


「え? お前達の子じゃないのか」


 この場で一番可能性が高いのは、喧嘩していた鳳凰夫婦だ。しかし2人は顔を見合わせた後、左右に首を振った。作ってないし、産んでない。


「……まさかあの雌に産ませたんじゃないでしょうね」


 妻の怒りに夫は焦った。それはない。なぜなら、若い雌との浮気は妻の勘違いなのだ。絶対に違うと言い切れるし、もちろん愛しているのは妻1匹だ。


「ない! 絶対にない!!」


「怪しいわ」


 疑う妻をよそに、ルシファーは火口から声をかけた。


「ひとまず上げてくれ」


「わかりました」


 放り投げられた雛を拾い、アスタロトは火口まで飛んだ。あの灼熱のマグマの海と爆発を掻い潜ったとは思えぬ、涼しい顔で雛を落とす。


「この雛が穴に詰まっていました。その先に温泉らしき地下水がありましたので、雛が栓になっていたのでしょう」


 引っこ抜くのに時間がかかり、抵抗した雛が吐いた炎が爆発の原因らしい。状況を簡単に説明されるルシファーが頷き、リリスはぺたんと座って小柄な雛を見つめた。懐かしい。ピヨも卵から出てきた時、こんな感じだったわ。そんな感想のまま手を伸ばそうとして、慌てたレライエに止められた。


「リリス様! 手が焼けます!!」


「あ、ああ。助かった、レライエ」


 ちょっと目を離しただけなのだが、鳳凰の雛を手に乗せたら火傷では済まない。結界は張っていても、危険な行為だった。また炎を吹けば爆発するかも知れないのだ。


「リリス、誰かに触るときは許可を得なさいと教えただろ?」


「ごめんなさい。ライ、ありがとう、助かったわ」


 懐かしさに駆られて、手を触れようとしてしまった。申し訳なさそうに謝るリリスに向かい、雛はよたよた歩いてくる。間で両手を広げて接触を拒否する翡翠竜に、きらきらと目を輝かせた。


「ぴぃ!!」


「違うっ!」


 ん? 全員が翡翠竜に注目する。いま、雛の鳴き声と会話しなかったか?


「ぴぃ、ぴっ」


「お前とは種族が違う。僕は雄で婚約者もいるんだ」


 胸を逸らして威張るアムドゥスキアスに、全員が「ああ、またか」と納得した。鳳凰は神獣や幻獣に分類される特殊な鳥だが、どこまで行っても鳥だ。目を開けて初めて見る生き物を母親だと思い込み、子鴨のように追い回す。刷り込み現象と呼ばれる鳥の習性だった。


「どうしてアシュタじゃなかったのかしら」


「目が塞がっていたのですよ」


 くすっと笑いながら、アスタロトが種明かしをした。地下水が流れる水路は、マグマが近く温められ温泉となる。その途中に卵の殻をつけた雛が引っかかっていた。すっぽりハマって抜けない雛を持ち上げたところ、目脂で前が見えない状態だったらしい。


 目脂を燃やす目的もあり、水で弱っていた雛を温めるためマグマに投げ入れた。呼ばれた時も雛が驚いて目を閉じたため、アスタロトを見なかったようだ。ようやく落ち着いて目を開いたら、アムドゥスキアスが視界に入った。


「アドキスもついにお母さんか」


 ほっこりした雰囲気で呟く婚約者に、翡翠竜は短い足で地団駄を踏んだ。


「違います! 僕はお父さんになりたいんです!!」

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