097 初めていいねされた日
チビは自己アピールを忘れない。なぜならば誰かに認められたい欲求が強いからだ。なのでチビは自身のフェイスブックに努力や練習している風景の写真を撮影してそれを投稿していた。そこには『自分はこんなに頑張ってるんだから誰か認めてくれ』という悲痛な思いが現れているようだ。しかしこういう人間が真の成功を収めるためにはネットの時間を削減しなければならない。インターネットには様々な知識が集中しているので、知識太りになる可能性があるからだ。それに自分の部屋にこもって一心不乱にキーボードを叩く姿は滑稽である。客観的に自分を見るとかなり異常な状態だ。一日の大半をパソコンの前で過ごすのはいただけない。やはりインターネットの時間を削減しない限りは真の成功は現れないのだ。ところが、今の時代はパソコンが主流となっているからインターネットをしないのはモヤモヤとした気分にはなる。だが胸に抱えているその不安感こそがネット依存の症状だと理解出来る人間は少ない。ネット依存で成功している人間などいないので、まずは依存からの脱却が必要だった。そのためチビは徐々にインターネットの利用時間を制限していた。そんな事をパソコンの前で考えていると、フェイスブックに珍しく「いいね」が押されていた。チビには友達なんていないので誰も見てくれないと思っていたが、意外にも誰かが見てくれていたようだ。
「ボクの投稿が初めていいねされた!」
1年以上も毎日フェイスブックを利用していいねを押されなかった人物はチビぐらいかもしれない。それぐらいチビは無視され続けたのだ。人間、何が一番辛いかと言えば無視される事だからそれ故に今回のいいねはかなり嬉しかった。チビはパソコンの前で阿波踊りをしながら「えらいこっちゃ、えらいこっちゃ」と鼻歌を唄っていた。あまりに嬉しさに血迷ったかと言われそうだが、これぐらい嬉しかったのだから仕方がない。




