092 チビは二度寝を楽しむタイプ
結局、眼鏡を購入したチビは重圧など達成条件のために体験する過程の時にしか現れないのだと妙に納得していた。眼科に行って分厚い眼鏡をつけて視力を測定している時にはもう重圧などまるで感じていなかった。前もって行くのが怖いと思っているだけで、行ってみたらまるで怖くもなんとも無い。そもそもチビのメンタルは他の選手よりも強いのだからちょっとの事ではストレスなど微塵も感じない。しかしそれでも不安に感じてしまうのは自身を過小評価してしまっているからだろう。2年目に突入した2軍生活ですっかり自分に自信を失って、過小評価してしまうクセがついてしまったと思われる。無論、こんな状態では良い筈が無いので、チビは自己啓発本を読んで自分に自信をつける方法を模索していた。とは言っても、本を読むだけで自信がつくなって一瞬に過ぎない。その一瞬を何か月も続けて、ようやく本当の自信を掴めるのだ。チビもそれを分かっているつもりだったが、分かってはいなかった。
翌朝、目が覚めた時から眼精疲労が凄まじかった。どうやら昨日、スマホで調べものをしていたのが原因らしい。凄まじく目が痛くて動けない。こんな状態では疲れがとれないのも当たり前で、まるで体が錘になったような感覚をしている。しかもこの時期はまだ肌寒い日があり、今日の朝はどうやらその肌寒い日のようだ。冬季鬱病という言葉があるように、人間は寒いと感じると精神状態が壊滅的に悪くなる。これは人によるかもしれないが布団が恋しいと思ってしまう。なのでいつまでも寝ていたくて「球場に行きたくない」とチビは布団の中に閉じこもったまましばらく起き上がらなかった。
案の定、チビは寝過ごしてしまい、普段家を出る時間に目覚めてしまった。こうなってしまっては朝食を食べる暇など無い。なんせチビはいつもいつもギリギリまで起きないので時間の余裕など最初から存在していないのだ。こうなってしまっては朝食を抜きにして急いで出発する必要がある。ところが朝は脳がエネルギー不足で集中力も皆無になっていた。結果的にチビは新幹線の予定に間に合ったのだが、当然の如く貧乏な彼は新幹線でおにぎり一つ食べるのもままならなかった。




