090 視力の低下
あまりにもストレスと無縁なのとは裏腹に、チビは精神的に弱そうと見られる節があった。本人はまったく気が付いていないのだが試合をしている最中はかなり無愛想である。まさに苦虫をかじったような顔を終始していて、苦しそうな顔立ちをしている。本人はまったくそのつもりは無いにも変わらず、そうしてしまっているのだから困り果てる。なんでそういうイメージを持たれるのかと自問自答した時に、チビはある点に気が付いた。それは目が悪い事だった。元は野良猫だったのに何を言い出すのかと思っただろうが、彼は1年足らずで視力が激減していたのだ。しかも眼鏡もコンタクトレンズも装着していないので、どうしても目を薄めて白球を見るクセがついてしまっているのに気が付いた。それでは無愛想だと思われても仕方がないので、オフの日に眼鏡を買おうと決意していた。とはいうものの、2軍では試合だけは一丁前に組まれているのでオフの日は中々訪れない。ダブルヘッダーなど何も珍しくないので、肉体的苦痛は溜まっていく。それでいてチビはストレスが溜まらないのだから凄まじい精神力を持っているとも言える。眼鏡が欲しいと思っても「ま、いいか」と思って先延ばしにする楽観的思考は生まれ持っての才能だ。唯一と言っても過言では無く、他の選手と比べても誇れる点だった。これだけ屈辱的な2軍漬けの日々を過ごしていても、不満は無いのだから恐れ入る。しかしそれでも1軍に上がる意欲は持っているので問題は無いのだが、やはりそのためには成績が鍵になってくる。




