088 少しの成功を重ねていく
オフシーズンが終わり、ようやくオープン戦が始まっていた。無論、チビは活躍など最初から期待されていないので出番は皆無である。それに2軍人数は昔よりも遥かに多くなっているので、全ての選手に出番が与えられる訳では無い。物事にはどうしても優先順位がある。その優先順位を判断するのは紛れも無く結果を残しているか否かだった。たとえどんなに努力をしていても結果が伴っていなければ斬り捨てられる。それがプロの世界だ。その点で言えば、チビはお世辞には良い結果を残したとは言い難い。なのでチビの出番はここでも無かった。それは想定内だったの良いとして、次なる問題は2軍戦での成績だ。いくら2軍の成績はあてにならないと言っても、打率.208程度の単打ヒッターを昇格させる程、今のアルファダックスは選手不足では無い。1軍選手の大半が怪我になれば話しは別だろうが、そんなのは非現実過ぎて考える気すら起こらない。なので昔からの成功である実力とやらで上へと昇る必要があった。
そもそも、2軍戦では投低打高となっているので平均打率は.300丁度。その中で打率2割を叩きだしたチビにはバッティングセンスが無いと言われるのもしかたなかった。かろうじてバントを決める技術はトップレベルに位置しているが、とてもヒットを打つ技術を持ち合わせてはいなかった。オフシーズンにはそんな自分を歯がゆいと思ってか、毎日10時間以上のハードな練習を自分に課せていた。全てはヒットを打つために。その一心で過酷な練習にも根を上げずに気力を出し続けていた。するとそんなチビに恵みが訪れたのか、2軍の試合でヒットを打ち続ける自分の姿がそこにいた。2軍の選手とは言え、相手は自分よりも優れた遺伝子を持つ動物達。今でこそ人間の形をしているが、運動神経は段違いだ。それでもチビは相手投手の速球にも対応し、4月の最終時点では打率を.298にまで上げていた。去年とは明らかにヒットを打てるようになっているので、練習の成果はあった訳である。




