080 血反吐を吐く練習量
世界が終焉を迎えようとも野球を続けるだけの意志を持っていた。他の2軍選手が銀座に出て可愛いチャンネーとシースーを食っていようとも、チビは泥水で渇きを潤し、梅干しで飢えをしのぎながら練習をしていた。それでも、去年は彼等との差は埋まらなかった。銀座に出ているのだからロクに練習していないにも関わらず、彼等は好成績を残し、練習漬けのチビは結果が出ずに監督から怒られるのだ。「あいつらを見習え!」と憤激をされて、拳骨を喰らわされる日々。本当は誰よりも努力をしているにも関わらず、結果が出ないだけで監督から大目玉を喰らう。ここで普通の選手ならば「どうせ俺なんて……」と精神状態を悪くして、どん底に叩き落とされそうになるかもしれない。だが、チビは監督から怒られる度に情熱を抱いていた。その理由はまさしく『他人から怒られてる時は、まだ自分は発展途上だ』と前向きに考えられるからだった。本当に無関心ならば怒らずに放っておくだろうし、監督が選手にキレるのは愛情の裏返しだと、どの本を見ても書いてあるから別に悲観に思う必要も無かったし、そもそも悲観に感じる方がよっぽど体に悪いのでそこはネガティブではなく、ポジティブに判断する方がよっぽど得策である。
だからこそ、チビは今年のオフは練習漬けにしようと計画していた。それこそ血反吐を吐くぐらいの気持ちで日々の練習を取り組めば、きっと道を開けるんじゃないかと思っているのだ。そういう訳で、チビはさっそく行動を開始していた。まずは1週間、面白くもない練習を12時間続けた。無論、合間合間に泥水飲んで水分補給をしたり、遠くを見てボーっとしながらリフレッシュをしていた。とにかくチビには金が無いので、人よりも贅沢品を使ってリフレッシュをすうrなど出来ないのだ。それ故に自然を上手く使って、この地獄を乗り切らないと身が無かった。最初こそ「早く帰りたい」と思う自分がいて、色々な誘惑が頭の中を過ってくるのだが、チビは絶対にそれらの欲に屈しなかった。とにかく、理想の自分を思い浮かべる事によってそれらの誘惑を追い払ったのだ。




