079 トレードは積極的に
世間ではストーブリーグが賑わっている時期だったが、チビにとってはまったく関係の無い話しである。ドラフトで去年指名されたばかりの選手がトレードに出されるなど前代未聞であるため滅多に無いのだ。勿論、何年もチームに在籍しているにも関わらず結果が出ない選手などは積極的にトレードに出される。それだけ結果が悪いと、選手としても監督しても「環境が悪いのかもしれない」と思ってトレードの駒に使うのだ。こうなってくると相手も似たような選手であるので大成功とまではいかないが、それなりに活躍してくれる可能性だって十分に考えられる。それに昔とは違い、生え抜き至上主義の考え方は段々と薄まっているのでトレードは喜ぶべき物だと考える選手も多くなった。しかしそれでも長年同じチームに在籍していると、チームやそのファンに親しみを覚えるようになるのでトレードは嫌だと拒む選手も中にはいるのだ。自分はこのチームで生涯にわたって骨を埋めて暮らすのだと誓う者が。それで結果が出るのなら何の問題も無いが、結果も出ないのに同じチームに在籍を続けるのは意味が無く、むしろ野球人生の危機が訪れてしまうのでオススメは出来ない。少なくともチビはそうだt考えていたので、もしも今年結果が出なかったら環境を変えてみようとまで考えていた。やはりその理由は環境の変化こそが不調を脱する切っ掛けになると知っているからだ。精神力は自分の力でなると思い込む選手は何人もいるのだが、それは本当に心が強い人間だけの言い分だ。本当に弱い人間は積極的に行動しない限りは絶対に不調から克服出来ないので、環境を変えるのも一つの手となりえる訳だ。
そう思っているチビは引っ越し願望を強く抱いている。いつまでも2軍の寮生活では面白くないのは明らかである。門限も決まられているし、食べる御飯だって刑務所の人間も裸足で逃げ出す程の汚さと不衛生が目立っている。だからこそ、何処かに引っ越して環境を変えたいと強く願う自分が存在していた。それでも活躍していない2軍選手は強敵的に寮生活を余儀なくされる暗黙の了解があるので下手に引っ越しをすると永久的に干される可能性だってあるのだった。




