表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
67/107

067  アドレナリンが出る瞬間とは


 いくら本を読んでも行動に移さないと意味が無いのだが、その点ではチビの行動力は中々のものだった。2軍は誰も練習していない怠惰の世界なのに、先輩達の誘惑に打ち勝って1人で黙々と修行をこなしているのだから大したものだ。常人ならばどうしても欲に負けて日々の努力を放棄しそうなのにチビは違う。自己啓発本で学んだ目標の立て方を実行している。それでもまだ結果が出ていないのでアレだが、とにかく続ける事に関してはチビの才能は大したものである。雨の日も風の日も雷の日も、毎日すると決めた事は必ずやり通しているのだ。


 何故、チビがここまで忍耐強いのかと言えば野良猫時代のひもじい思いをしているからに他ならない。あの時は1日の御馳走がゴミ袋から出てきた秋刀魚の残骸など良くある事で、飯にありつけない時もあった。人の家の玄関から漂う魚の焼いている美味しい匂いを「羨ましいな」と思いながらも、空腹でどうしようもない日々が続いていた。なのでチビにとっては2軍生活や野球の練習など大した苦痛ではない。野良猫精神を持っているからこそ、2軍での理不尽な日々を乗り越えられるのだ。


 そしてチビは今、恋をしているので少しの出来事はへこたれない。それだけ好きな人がいるのといないのとでは精神的苦痛がまるで違う。好きな人の顔を思い浮かべるだけで先輩からの嫌がらせも楽に思えるし、苦痛を軽減できる。それだけ恋をしている時はアドレナリンが放出されているのかどうかは知らないが、火事場の馬鹿力が発動している気がする。阪海ワイルドダックスの英雄、AKIRAは自分をとことん追い込んで火事場の馬鹿力がいついかなる時も発動できる状態を作りだしていたので、他の選手よりも圧倒的な成績を残してきたと言われているが、チビにとってアドレナリンが放出される瞬間は恋心を抱いている時に他ならないのだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ