058 ほとんどの選手は晩節を汚さずに引退をする
不平不満ばかりを言っていては成長出来ないのも分かっているが、それでも2軍の劣悪な環境と1軍の豪華な待遇を比べれば溜め息も自然と出てしまう。2軍選手と1軍選手が住んでいるエリアは完全に封鎖されていて、2軍選手は外出するのにも制限されている。だが、1軍選手は自由に外を歩けるのだから羨ましい。2軍選手のほとんどは刑務所のような暮らしを余儀なくされているのに、1軍選手は高級料理にかぶりついてセレブ暮らしをするという地獄と天国のように差が出ているのだ。しかし、これぐらい差が離れている方が2軍選手と1軍選手にも活力が漲り、「1軍に這い上がろう」「2軍には絶対に落ちないぞ」という気持ちが芽生えてそれ相応の努力をするのだから結果的には悪くは無い。なんせ1軍にさえ上がれば誰もが羨む豪遊生活が待っているのだから。
しかし、そんな1軍選手でもミラベルのように干されてしまえば意味が無い。怪我で2軍暮らしを余儀なくされているとかならば話は別だが、技術の衰えやスランプなどで落ちたのならば彼らと同じ待遇を受ける羽目になるので、ほとんどの選手は晩節を汚すことなく引退していく。1軍の暮らしを満喫していれば、とてもじゃないが辛い思いをしてまで2軍で頑張る必要性など全く無いのだ。しかし隣に座っているミラベルは違う。日の丸弁当と井戸水を受け入れて、喉に流し込んでいるではないか。1軍という天国に浸っていたにも関わらず、2軍生活に文句の一つも言わずに努力を続けるのは恐らくミラベルぐらいだろう。そもそも1軍で何年も活躍していた選手が晩節を汚して2軍生活をするのはあまり評価はされないので、2軍にいるベテラン選手はミラベルぐらいだ。そんな彼女が2軍の腐れ飯を受け入れているから、チビも頑張るしかなかった。




