047 過酷な2軍生活
2000本安打を放ったミラベルとの対談が始まった。対談というと少し大げさだが、チビにとってはレジェンドの体験談や思想を聞くことで今後の野球人生を支える原動力にしようという思いが密かにあった。
「どうやってモチベーションを保っているのか不思議だな……1軍の栄光を知っているのに、こんな劣悪な環境に耐えようだなんて僕には無理かもしれません」
そうなのだ。なんせ、1軍と2軍は天国と地獄のように明確にかけ離れている。1軍にはバッティングピッチャーやノック指導などが当たり前のようにあるが、2軍にはそんな練習方法は無い。全て自分でこなさないといけないのでチームの練習は全くやらないし、やろうと思えばチームメンバーを集めないといけない。しかし、誰も練習などやりたがらないのでチーム練習など出来ないと同じだ。よって2軍選手は自分流の練習をしないといけないし、それを教えてくれる者もいないのだ。それでも試合は多く組まれているので毎日のように野球は出来るのだからチビのように野球そのものが好きな選手にとっては楽かもしれないが、そうじゃない選手にとっては地獄の日々だ。
「確かにそうね。2軍は1軍よりも試合が多いし」
1軍の試合数は144試合から20試合増えて今では164試合になっているのだが、対する2軍の試合数は184試合という無茶苦茶な試合数を必要とされている。決して怪我をしない頑丈な選手を育成しようとするNPBの考え方と言われているが、ここまでの試合数があれば逆に怪我をしそうなぐらいの勢いだ。しかもチーム数が100年前よりも圧倒的に多く増えているので、移動も楽じゃない。北海道で試合をしていたのに、明日になったら沖縄でプレーするなど日常茶飯事だ。移動方法もバスや飛行機という悪夢のような乗り物ばかりで、これでは明日になるのが憂鬱になるのも無理はない。
「でも、ミラベルさんは過酷な2軍でも頑張ってますよね。そのモチベーションはどこからくるのですかね」
チビは改めてそう訊くのだった。




