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調和の王〜影から継がれたもの〜  作者: 俐月
2章

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【余話】レギオンにいる理由ーダリアの場合

1章、レネウス編。群れの嵐の後の話です。

 




 帝国、最南端の湾口都市――レネウス。

 そのレギオン支部の規模は、それなりに大きい。

 職員もそれなりにいる。

 その支部を統括しているのが、ダリアだった。



 今日も綺麗な金髪のポニーテールを揺らして、レギオン支部内を闊歩している彼女の姿は凛々しくて美しい。






 レギオンに所属するクランの人たちは、曲者が多い印象が強かった。


 見るからに有能で、美しく聡明な彼女なのに、何故面倒ごとの多そうな、レギオン支部なんかで働いているんだろう?




 揺れるポニーテールをついつい目で追いながら、僕はそんなことを考えていた。



「え? レギオン支部で働き出したキッカケ?」



 僕が尋ねると、ダリアは目を丸くして隣にいた姉――メリアを見た。


 ダリアとメリアは似ているようで、近くで見ると全然違う。


 メリアの方は胸が異常に大きいし、その上露出度の高い服を好んで着ている。


 ついつい、胸に目がいってしまうのを、僕はグッと堪えた。



「そうね〜、レギオンのみんなはそれぞれ何かしら事情を抱えてる人が多いのよ」


「職員もですか?」



 レギオンに所属するクランは、納得できる。


 エーレの率いるクランーーカロンだって、そんな雰囲気がある。


 そもそも好んで、傭兵として生きていく人には、何かしらの事情があるに違いない。



「レギオンマスターに拾われたとか、恩があるって人は結構いるよね〜」



 メリアが昼だというのに、どこかから持ち出したエールを煽りながら答えた。



「じゃあ、ダリアさんたちも?」



 興味本位で聞くと、ダリアとメリアは目を合わせて、困ったように眉を下げる。



「私たちが今こうして、平和に暮らせてるのはあのゴリラのおかげだよね〜」


「もう姉さん、マスターのことまたそんな風に言って」



 ゴリラ‥‥‥

 レギオンマスターって、どんな人なんだろう。



 結局、彼女たちはそれ以上語りたがらなかった。







「大人って、どうして昔のことを語りたがらないんですか?」



 部屋に戻って、そこにいた相部屋のシュトルツと何故かいるリーベにそんな質問を投げかけてみた。



「え? なに急に。

 聞いてもいないのに、すんごい語る人もいるじゃん?」


「確かにそういう人もいるとは聞きますけど、僕の周りにはいなかったんですよ」



 シュトルツはベッドに仰向けになって、天井を眺めていた。


 リーベは、テーブルの前で何か書類のようなものに目を落としていた。




「必要がないからだろう。

 すでに過去のことで、自分の中で整理がついていることを、わざわざ語る理由がない」



 リーベが書類に落とした目を離さずに答えた。



「まー、ほら。

 人が共感や理解を求める時って、大体は自分の中でまだ解決できてない時だから。多分?」



 シュトルツはそう言って、ゴロンと寝返りを打ち、僕の方を見てきた。



「じゃあ、貴方たちが何も教えてくれないのは?」



 彼らのことを僕は、まだ何一つ知らない。



「それとこれとは話が別だよねぇ?

 俺ら別にそこまで成熟してるつもりないし?」


「そうだな」



 無感動な声色で賛同を示したリーベ。





 聞いたものの、やっぱりよくわからなかった。



 僕は自分のことを、人に聞いてほしいと思う。

 共感と理解をしてほしい。

 出来るなら、先人から解決策も聞きたい。



 でも上手く話せる自信はないし、逃げてるという状況から、今それをすることが叶わないだけで‥‥‥



 それっきり部屋は沈黙に包まれた。


 僕は疲れた体をベッドに投げ出して、天井を見つめた。




「てか」


 しばらく経って、シュトルツが思い出したように沈黙を破った。



「なんでそんなこと聞いたの?」


「ダリアさんがどうして、レギオン支部で働いてるのかなーって気になって、聞いてみたけど詳しくは教えてくれなくて」


「なーんだ、そんなことかー」



 心底、どうでもよさそうにシュトルツは呟いた。



「なんだ‥‥って」


「ちょっと考えたらわかると思うけどなぁ」



  欠伸と共に言ったシュトルツに、すぐにリーベが答えた。



「レギオンの成り立ちを知らないだろうから、わからなくても仕方がないと思うが」


「成り立ち?」


「レギオンは準自治権を認められた特例組織だ。

 所属するクランの身元を証明し、時には保護する」



  そういえば.そんなことを言っていた。


  国を介さず、独自の権利を認められているため、レギオンが正式発行した銀版があれば、それだけで越境が可能だ。


  ギルドとは違って、国に依存しない形を取るレギオン。



「まー、レギオンに所属してる人はレギオンの保護下にあるってこと。

 何かやらかしても、国が裁く前にレギオンを介さなきゃいけない。で、基本的にその責任はレギオンが取る。

 つまりはレギオンに所属していれば、国は簡単に手出しが出来ない。ってことなんだけど」


「そんなことあるんですね。まるで一つの国みたいだ」




  珍しく説明を買って出たシュトルツの言葉に、感心した。

  レギオンというのは、思ってる以上に、凄い組織なのかもしれない。



「国の手が回らない危ない仕事を率先してやるのが、レギオンだし?」



 つまりダリアは、レギオンの保護下に入らないといけない理由があったのかもしれない。



「加護持ちってのはいいことだけじゃないってこと」



 シュトルツが、最後に付け足した言葉に、僕は納得した。



 光の精霊の加護を持つ、ダリア。


 それを利用しようとする輩も多いだろう。

 特に聖国は光の加護持ちを見つけたら、レヒト協会への入信を執拗なまでに誘うと聞いたことがある。



「色々大変なんですね〜」



 他人事のような言葉が口をついて出た。

 他人事だけど、他人事ではない。

 僕だって、逃げてる危うい立場なのだ。



「あまり人の事情を詮索するものではない」



 リーベの刺すような言葉に僕は思わず、顔を引き攣らせてしまった。



「すみません」


「別にダリア嬢はそんなこと気にしないと思うけどねぇ」



 シュトルツの飄々とした口調は、僕の耳には入らなかった。





 翌日、そのことをダリアに謝ると


「え? そんなこと気にしてたの?

 なんとも思ってないわよ。特に言うことじゃないから言わなかっただけよ」


 と、笑いながら返された。



 彼女は過去に、聖国からの勧誘が酷すぎて、悩んだ末にレギオンに身を置くことになったらしい。

 今ではレネウスのレギオン支部で働くのは、楽しいから結果的によかったとさえ言っていた。



「あのゴリラもなんだかんだいい人だしねぇ」


「だから姉さん、ゴリラは失礼でしょ」



 メリアの言うゴリラーーレギオンマスターって一体‥‥‥



「レギオンマスターってどんな人なんですか?」



 すると、二人は顔を見合わせた。



「んー、マフィアのボスみたいな?」とメリア。


「どこにでもいるただの中年のおじさんよ」とダリア。



 ゴリラでマフィアのボスで、おじさん。


 なんとなく想像はつくけど、やっぱりわからない。




「3国を相手取って、準自治権を認めさせたんだから、かなりのやり手なのよ。マスターは。

 カロンにいるなら、そのうち会うこともあると思うわよ?」


「まぁ、基本的に表に出てこない人だけどね〜」



 ダリアの言葉に、次いでメリアが言う。



 僕がカロンといるのは、一時的なことだし、どうやら会う機会はなさそうだ。


 どんな人か、少し興味はあるけど、僕とは関わりのない世界だし。

 きっと生きる世界も全然違う。



 レギオンに所属するクランや職員がどんな背景でレギオンに身を置き、どんな事情を抱えていても、やっぱり僕には他人事なのかもしれない。





 いつか遠い未来で、今僕の身に起きていることを笑って話せる日が‥‥

 語る必要すら感じないほど、遠い過去にすることが出来るかな‥‥


 そうなればいいな。



 そう思いながら、前で揺れる金髪のポニーテールを眺めていた。








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