表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生したら絶滅寸前の希少種族でした。【WEB版】  作者: 古森きり@書き下ろし『もふもふ第五王子』
特別編〜五歳のわたし〜

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

109/113

五歳のわたし第6話


「よし! テーブル拭き完了、野菜の用意も完了! ……あとは……」


 でもこれだけじゃなんかいつもの喫茶コーナー、よね。

 飾り付けとか、した方がいいかしら?

 いや、まだ早いわ。

 テーブルクロスぐらいなら、用意しておいてもバレないかな?


「ティナリスちゃーん!」

「きゃぁぁあ!」


 バッターン!

 と、本宅の扉が開く。

 なななななに!? まだプロポーズ成功のお祝いの準備も朝食できましたよー、って呼びに行ってもいないわよ!?

 いや、お父さんが今厨房で朝ご飯は作ってると思うので、間もなく呼びに行くつもりでしたけど!

 ロインさん、あんなに大慌てで……なにか一大事!?


「ゆ、ゆび、ゆびわ! 指輪がない!」

「……………………」


 半泣き。

 はあ?

 え?

 今、なん……ゆび、指輪が?


「……ええええええええええぇ!?」


 ないいいぃーーーーー!?

 今指輪がないって言ったぁぁぁあ!?

 ……この世界もプロポーズの時指輪を渡すんだ~。

 って冷静にほっこりしてる場合じゃない!


「どういうことですか!」

「確かに買って荷物の中に入れたはずなんだけど! 今確認したら入ってなくて!」

「全部ひっくり返してみたんですか!? うっかりベッドの下とかに落としてません!?」

「全部見たよ!」


 なにやっとんじゃこの人おおおぉ!

 プロポーズの日に指輪なくすとかなにやっとんじゃこの人おおおぉーーーー!


「おい、どうかしたのか?」

「お父さん! このダメ男が指輪をなくしてしまったそうです!」

「指輪をなくし……? は、はあ!? なにやってんだお前! 『双子月』は今夜だろ!?」

「だ、だからあの……ティナリスちゃん、指輪の錬成とか……できたりしないかな~……なんて……」

「指輪の錬成!?」


 そ、そんなことできるの!?

 やったことないし!


「おまっ……ティナにたかる気か!」

「だ、だってもう他に確実な方法がないというか! いや、探しますよ!? 最後まで諦めずに探しますけど! でも万が一見つからなかったら……」

「……で、でもあの、指輪の錬成ってできるものなんですか……?」

「できるとは思うが……ティナの錬金術はどちらかというと『練金薬師』系の錬金術だ。金属系の錬成とは畑違いだな」

「そ、そんな……」


 錬金術にも種類があるものね。

 うーん、でも、これは大ピンチだわ。

 なんとかしてあげたい……。


「あの、わたし書斎で金属の錬成について少し調べてきます」

「構わないが、金属系の錬金術は薬より禁止要項も多かったはずだ。難しかったら俺に相談してくれよ?」

「はい、わかりました」

「ロイン、お前はもう一度部屋を探してこい。落ち着いて、ゆっくり探すんだ。服のポケットや布団の中とかもちゃんとな」

「は、はいぃ……」


 えぇい、なんでもっとちゃんと確認しておかないのよこのダメ男。

 書斎に急いで、本棚の錬金術コーナーを改めて探る。

 金属系の錬金術……この辺りかしら?

 グレーの表紙の本を一冊取り出して、開く。

 うん、これで合ってる。

『錬金術、金属の加工編』。


「……げっ」


 なによこれ、わたしの知ってる錬金術じゃない!


――必要なのは錬成するための回路。


 回路!?

 うっ、鍋と練金棒だけで作る感じじゃない!


――金属と金属を掛け合わせることにより、全く別の金属を生み出す。ただし、金、銀、プラチナなどの貴金属の錬成は各国の法律で重罪。


 違うの~、わたしがやりたいのはこういう、絶対面倒くさい感じのやつじゃなくて金属の加工してなのぉ~!

 どうしよう、これでも初心者用みたい。

 なんか必要なものが高温の鉄を入れても問題のない鍋とか、高温の金属を混ぜ合わせても問題のない練金棒とか、今すぐに入手は不可能そうなものばかり!

 あ、これは詰んだ。

 ロインさん終わった。

 こうなったら指輪なしでプロポーズしてもらうしかないわね。

 はい、終了。

 わたしには向いてないし、こっちの錬金術。

 今朝エノファさんに『錬金術の才能がある』って褒められたけど、金属系の錬金術はわたしには無理でした。

 これはもう錬金術にこだわらず、ハンドメイド的なもので代用するしかないんじゃない?

 この際ビーズの指輪でも、エノファさんは喜んでくれるんじゃないかしら?

 あれ、それよくない?

 女子的には嬉しくない?

 恋人が一生懸命、自分のために指輪を……たとえ安物のビーズでもハンドメイドなら!


「ハンドメイドの本!」


 あるかしら!

 あった!

 きっとお婆さんの本ね。

 取り出して目次を読む。

 編み物やパッチワーク、刺繍、押し花……。


「押し花……」


 最初に目に留まったのはなぜかその項目。

 ページを開く。

 あ、押し花のページに本当に押し花が挟まってるわ。

 アセビ、かな?

 前世、近所の一軒家に木が植わっていて、花を見たことある。

 植木に使われることが多くて、その家の人に「その花は綺麗だけど有毒植物だから、気をつけるんだよ」って言われてすごく印象に残ったのよね。

 薄いピンクの紙に貼り付けられて、その裏には日付と『ピエリスの花』とある。

 その横には……花言葉?

 この世界にも花言葉があるのね……。


「『生涯あなたと二人旅』……え、これって……!」


 プロポーズの言葉!?

 ……いや、花言葉か。

 へえ、なんだかロマンチック~。

 お婆さん、こんな趣味があったんだ~。


「…………」


 そうだったんだ……残念だな。

 わたしが三つの時に亡くなってしまったお婆さん。

 こんな素敵な趣味があったなら、色々お話聞いてみたかった。


「花……花かぁ。そういえば小学生くらいの頃、なずなとかで、花かんむりとか、指輪とかネックレスとか作ったな…………あ、指輪……」


 いえ、忘れていたわけでは、決して。

 ……ん? 指輪?


「…………え? それはそれで素敵じゃない?」


 問題はロインさんに作れるかどうかだけど!

 いや、あんな簡単なものを作れないほどダメ男じゃないわよね。

 吟遊詩人なんだもの、楽器弾くんだもの!

 というわけで早速下へ戻り、死にそうな顔で朝食を食べていたロインさんに提案してみる。


「花で指輪!?」


 まあ、案の定驚かれたけれど。


「花で指輪なんて作れんのか?」

「えっと、茎の長いお花の茎をこう、指の太さにくるっと捻って巻いていくだけなんですけどね……いい考えがあるんです!」

「「いい考え?」」


 男には絶対思いつかないと思うわ。

 そりゃ、わたしもお婆さんの本を見るまで思いつかなかったけど。


「押し花にするんです。書斎から花言葉の本も見つけてきたので、これでこの辺りにある花の花言葉を調べて、プロポーズの言葉に添えるんですよ! そして贈った花の指輪は、押し花にして取っておくんです」

「っ!」

「へえ……そりゃあ、なかなかロマンチックかもしれないなぁ。しかも安上がりときたもんだ」

「女の人を喜ばせるのに、本当はお金なんか要らないんですよ」

「……そ、そういうもんかぁ?」

「そういうものですー」


 お父さん、女心わからなさそうだもんなー。

 ロインさんはすぐに花言葉の本を開いて、これ、それ、と悩み始める。

 おおう、どうやら薪は増えないようだわ。残念!


「こりゃ一日中悩みそうだな」

「エノファさんはどうしたんですか?」

「飯食ったら釣りをやってみたいとかでリホデ湖に行ったぜ。まあ、これに気を遣ったんだろうけど」


 これ。

 ロインさんね。

 うん、間違いない。

 わたしが戻ってきた時、顔が死にそうだったもの。


「エノファさん本当にいい人……」

「こいつにはもったいないなぁ」


 本当だわ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【宣伝】
『追放悪役令嬢の旦那様』
aubh3lgrafru8nlejtjv4uphjx9k_7i1_c0_hs_4cx8.jpg
ツギクルバナー

書籍版、発売中です!
詳しくはツギクルホームページへ
1巻
2巻
3巻
4巻
5巻
6巻
7巻
8巻
9巻
【コミカライズ】
マンガアプリ「マンガPark」で先読み連載中!
コミック1巻〜7も大好評発売中です!

コミカライズ「マンガUP」で連載中!
『うちのお嬢様が破滅エンドしかない悪役令嬢のようなので俺が救済したいと思います。』 321811000629.jpg
詳しくはこちら カドカワBOOKS様ホームページ

1hxm3gog5t1ebzv5l4dm7li2543t_tvn_6a_8w_1122.jpg
『巻き込まれ召喚された身でうっかり王子様に蹴りを入れたら、溺愛花嫁として迎えられることになりました』
各電子書籍サイトで配信開始!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ