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9 誕生日プレゼント

「うれしいのは俺の方だよ。こんなおいしいケーキを作ってもらえたんだから」

「どんどん食べてくれ、ゆきと。あたしの分もやるよ」

 桃香が二口目をよそって、俺の口に突っ込んでくる。


 もぐもぐ


「んーおいしい。ほっぺが落ちそうだ」


「桃香ちゃんはえらいなあ。スポンジを焼くのが難しいから、お店で売っているのを買ってきてもよかったのに、手作りにしたんだから」

 千紘姉さんも感心している。


「大好きなゆきとのために、誕生日ケーキは全部手作りにしたかったんだ」

 桃香が顔を赤くしている。


 俺はよくわかっていないが、桃香は難しいことにチャレンジしてくれたようだ。


 俺はケーキを自分の分と桃香の分を食べた。桃香の分を全部食べると申し訳ないので、桃香には3口ほどだけ残したけど。ますますお腹いっぱいで苦しいくらいだ。

 桃香は俺が食べたフォークでケーキを食べていた。また間接キスしてしまったよ。


「では、ウチからプレゼントを贈呈(ぞうてい)させていただきます」

 麿莉奈が立ち上がって、椅子の背もたれに隠していた紙袋を手に取る。


 麿莉奈はプレゼント係Aだから、二つもらえるプレゼントの一つ目ということになる。紙袋はチェック柄で高級感がある。


「なんだろう」

「超絶大金持ちの幸斗さんにプレゼントって難しいです。あらゆるものを幸斗さんのお金で買えてしまいますので。プレゼントの金額よりも、幸斗さんに似合うやろうなって、ウチが選んだもののデザインをご評価いただけたらと思います」

 麿莉奈が慎重に前置きしている。


「確かに……1兆円持っている俺にプレゼントってほぼ無意味だよね」

 俺は麿莉奈が何をプレゼントしたら俺が喜ぶのか考えるのに苦労しただろうなと思う。


「お誕生日、おめでとうございます。受取ってください」

 麿莉奈が改めてお祝いを言って、俺に紙袋を差し出してくる。


「ありがとう。開けていい?」

「はい、どうぞ」


 俺は紙袋に手を突っ込む。中に紙で包装された物が入っている。軽い。

 取り出して、紙を両手で破る。


「財布?」

 出てきたのは黒い革製(かわせい)の財布だ。


「はい。イタリアのブランドの財布です」

「へえ」


「幸斗さんは大金持ちなのにブランド品に興味のない方です。ブランド品なんか持たないっていうのもかっこいいんですけど、ちょっとはお持ちになった方がウチはうれしいです。幸斗さんが、もっとかっこよくしてくれはりますと、付き従うウチたちお嫁様候補の格が上がるというものですから」

「な、なるほど……」


 麿莉奈の言うとおりだろう。俺自身はブランド品なんかどうでもよくて、ブランド品なんかに(あこが)れる奴はバカだと思ってるくらいだ。


 しかし俺には素晴らしいお嫁様候補が5人もいる。俺は、彼女らのために身だしなみを整える義務というものがあるんだろうな。


「最近はスマホでお金を払えますから、そんなに現金を使う機会もないんですけどね。イマイチ高の学食で幸斗さんがお金を払って下さる時に、さっとその財布を出すとかっこいいです。他の女子には、その財布のブランドがわかりますからね、きゃー幸斗さん素敵ってなると思います。ウチたちも幸斗さんが誇らしいです」


「ふーん、そういうもんなんだ。俺はブランドが全然わからないから、麿莉奈に選んでもらえて助かったよ。この財布、高かったでしょ」

「それなりの値段ですね。ウチは落ちぶれ気味やけど、まあ大丈夫ですから」


 麿莉奈は強がって見せる。麿莉奈のお金で買って、他の女の子は出していないようだ。


 麿莉奈の実家は倒産寸前の会社を抱えているから、余裕はないはずだ。無理をさせて申し訳ない。

 後で、こっそり麿莉奈にお金を渡しておこうと思う。俺を引き立てる財布を選んでくれた麿莉奈の気持ちがうれしい。


「ありがとう、大事に使わせてもらうよ」

 俺はとても感謝する。

 麿莉奈はうれしそうにはにかんだ。


「つぎは、わたしなのです」

 プレゼント係Bのニーナちゃんがおずおずと俺に近寄って来る。後ろ手に何か隠し持っているようだ。


「今度は何だろう」


「うう……ゆきとさんがドン引きしないか心配なのです」

 ニーナちゃんが顔を赤くする。


「まさかニーナ自身がプレゼントじゃないだろうなっ」

 桃香が血相(けっそう)を変えて立ち上がる。


 女の子が体にリボンを付けて、自身をプレゼントにするっていうことがあるらしいけど、ニーナちゃんがやるのか――!?

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