9 金銭感覚がおかしくなる
「あ、あのっ 俺はもうじき17才ですけど、あと1年ちょっとで結婚ですか。急すぎますよ」
俺は5月31日生まれ。
もう2か月早かったら、千紘姉さんと同学年だったんだ……無念。それはさておき。
なんで俺は高校生のうちに結婚しないといけないんだ。
じいちゃんが孫の顔を早く見たいっていうならともかく、もうくたばっているのに。
「若い男に金と自由を与えるとロクなことにならない、とおじい様はお考えでした。愛人が千人もいるハーレム王国を建設してしまうでしょう」
「くっ……」
言われてみれば男の夢だ。今は千紘姉さんしか思い浮かべていなかったが、そのうち誘惑に遭うかもしれない。
裸の美少女千人にちやほやされたい。否定する男は嘘つき偽善者。道徳の教科書でも読んでいろ。
「幸斗様がしっかりした女性と結婚して身を固めれば、お金をバカなことに使わないでしょう。結婚しないなら遺産は引き渡さない。恵まれない人に寄付した方がましだ、ということでした」
「あああ、止めて止めて。結婚するする」
すでに1兆円は俺の物と思っちゃったからね。取り上げられるとダメージがでかすぎる。
氷室さんがにっこりする。
「おじい様があの世でお喜びになりますよ。幸斗様には最高の女性と結婚して、愛し合ってほしい、と願っていましたから」
「はぁ? それって当たり前じゃないですか?」
わざわざ好きでもない女性と結婚するのは意味がわからない。
「先ほど申したとおり、おじい様は裸一貫から成り上がりました。支えたのは、幸斗様の亡きおばあ様です。2人が愛し合い、力を合わせたのが成功の秘訣だったそうですよ」
「いい話ですけどね」
俺は口調に嫌味を込める。じいちゃんは大金持ちになっても浮気なんてしなかったんだろう。立派な人だよ。尊敬する。
高校生男子に貞節を求められるのは、荷が重いんだが。
「おじい様は幸せな結婚はとても難しい、ともおっしゃっていました。結婚は苦難の連続。ビジネスの百倍もストレスがかかる時もあると。ですが2人で乗り越えられた時の幸福感は何物にも勝る。あなたにその快感を味わって欲しいようでした」
「ちっ 余計なお世話だ」
俺は思わず舌打ちしてしまう。結婚しろっていうのはハラスメントの一種だよな。
「何かおっしゃいましたか?」
「い、いえ」
「僭越ですが、お嫁様として選び出されるバトルロワイヤル……略して、お嫁様バトルロワイヤルの司会進行は私が務めさせていただきます。突然5人と同棲するというのは戸惑って当然ですが、5人同時にお見合いするようなものだと思って下さい。寝食をともにすることで、お互いをより深く知り合えますよね、ククク」
氷室さんが悪だくみしているような含み笑いをする。
お堅い人というのが第一印象だが、底が知れない。この氷室さんが司会者やるのかよ……
「テレビ番組みたいですけど……放送されないですよね?」
俺は今、ア〇ゾンやネットフリッ○スのリアル恋愛バラエティ企画に巻き込まれてないよな。俺の醜態を全世界に配信とかやめてほしい。
「放送も録画もされませんからご安心を。ああいう恋愛バラエティなんて、資産数億円、年収数千万円風情の男が、えらそーに嫁選びをするんです。資産1兆円のあなたのバトルロワイヤルを放送した日には、しょぼい男の企画に女が集まらなくなりますよね」
「ははは……」
俺は空笑い。金銭感覚がおかしくなる。
数億円でバトルロワイヤル開催するものなんだ。1兆円あったら開催は当然なんですかねぇ。
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