81 桃香の真実2
俺は桃香と向き合う。
桃香はパパ活しているところを見られて、申し訳なさそうにうつむいている。
「すまないが全部見させてもらった。桃香がパパ活やっているのは柚子香ちゃんの病気のためだってのもわかっている」
「……で、でもさ、あたし、ゆきと以外の男に……」
桃香は悪いことをしているっていう自覚はあったようだ。
俺は首を振る。
「気にしてないよ。桃香はオッサンに体を触れさせたり、エッチなことはしてないんだろ?」
「うん、あたしはエッチなことはしてないよっ 柚子香がそこまでしてお金稼いで欲しくないって言って、約束したから。あたし処女だしっ ゆきと、今すぐあたしを抱いてよっ」
桃香は顔を上げて真剣に訴えてくる。
「いい、俺は桃香を信じる」
桃香は柚子香ちゃんのために自分を犠牲にしているし、柚子香ちゃんは桃香のことを心配している。
美しい姉妹愛だよ。
全てが明らかになって、俺は震えが来ている。
桃香と柚子香ちゃんをどうしたいか、俺の中で答えが出た。
俺は氷室さんに顔を向ける。
「桃香はいい子だ。桃香のためにも柚子香ちゃんを助けたい。何か助ける方法はないのかよ。氷室さんは頭いい人でしょ。他の子供を犠牲にせずに助ける方法を考えてくれよ。金はいくらかかってもいいから、柚子香ちゃんを助けて下さ――――い」
叫んで、頭を下げる。
俺は氷室さんに無茶振りをしているって、わかっている。でもこう言わずにはいられない。
「ふふ、了解です」
意外にも氷室さんがあっさりと応じてくれる。
「え!? 方法はあるんですか?」
がばっと頭を上げた。
「ちゃんと考えておきましたよ。幸斗様は必ずこうおっしゃると予想して。幸斗様は私の見込んだとおりの人でしたね、合格です」
氷室さんが微笑む。
「……俺が合格って? どういうこと?」
「柚子香さんをどうしたいかで、幸斗様の人柄を試させていただいておりました。他の子を犠牲にしてでも柚子香さんを助けたいと言ったら救いようのないバカです。私は、幸斗様も柚子香さんも見捨てるところでした」
「うう……ひどいけど……そうなるよね」
「そして柚子香さんを助ければ、他の子供が犠牲になると聞いて、諦めるのが凡人。ですが幸斗様は両方助かる方法を探そうとしています。非凡ですね。やはり上に立つ人の発想はそうでなくっちゃ」
「俺は全然考えてないんだけど……そうしたいってだけで」
「いいんですよ。細かいことは、私みたいな使用人に任せておけば。大事なのは、非凡な決断をすることです」
「本当に助かるの? 柚子香ちゃんが?」
「最善を尽くします。私に任せて下さい」
氷室さんが胸に右手を当てる。
体中から力が抜けていく。
桃香をすっかり好きになっちゃったから、柚子香ちゃんを亡くして桃香を悲しませたくない。ただその一心で、無茶苦茶なお願いを氷室さんにぶつけた。
俺の心の奥底から湧き上がった衝動に身を任せて良かったなんて……
「今日、私は幸斗様が素敵な人だとわかりました。お嫁様バトルロワイヤルの司会をさせていただくのにふさわしい方です。幸斗様がクズだったら、私のやる気もなくなりますが、ますますしっかり務めねばという気になりました」
「はは……そうなんだ。それで桃香の尾行に付き合ってくれたんだね。氷室さんは桃香じゃなく俺を見てたんだ」
「おじい様からは、子供の命を救うことにお金を惜しんだり、かわいそうな姉妹を助けないようではダメだ。幸斗様がショボい選択をしたら、1兆円を没収するようにと指示されております」
「ええええ、そうだったの!?」
「はーい。情けない孫にお金を持たせておくくらいなら、全部寄付した方がマシということでした。へっへっへ、危ないところでしたねー」
氷室さんは邪悪な笑いをして、俺を脅かす。
「あ、あのさ……あたしは付いてけてないんだけど、氷室さんが柚子香の病気を治してくれるってことなんだよね」
桃香が割り込んでくる。
「はい。治療法に心当たりがありますので」
「マジで? 病院でどうにもならないって言われてるのに」
「私は医者ではありませんが、最高の医療環境を整えるお手伝いはできますから」
氷室さんの顔は自信に満ちている。
普段おっかない女の人ゆえに、頼りになりそうだ。
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