8 お嫁様バトルロワイヤル
現実と思えない金額。
あっけにとられていると氷室さんが説明を続ける。
「もっとも、日本の相続税は高額です。約半分のお金を国に召し上げられますが、1兆円ぐらい残って、幸斗様のものになります」
「い、1兆円もらえるの、僕が――⁉︎」
「はい、資産の大部分は六文銭ホールディングスの株式で、他には現金を千億円ほどお持ちでした。現金についてはあなたの銀行口座に振り込み済みです」
「え、僕は銀行口座なんか持ってないですよ」
「実は、おじい様が幸斗様の銀行口座をお作りになっていました。これが通帳です」
氷室さんが鞄から通帳を取り出して、テーブルに置く。
六文銭幸斗と名前が書いてある。恐る恐る手に取って開いてみる。
最初の行に、見たことのない数が印字されている。
「一、十、百、千、万、十万……」
千億を数えたのは人生で初めてだ。
「六文銭ホールディングス傘下の銀行です。おじい様の指示で、幸斗様の本人確認を省略して、銀行口座が作られたわけです」
「こ、これ、本当に僕がもらっていいの?」
「ええ、幸斗様のお金ですから」
氷室さんは満面の笑顔でこれ以上ない幸運を祝福してくれている。
もう一度通帳に目を落とす。
千億。千億だぞ。しかも他にも9千億くらいもらえるときた。
「現金の千億は当面の生活に困らないよう、すぐお渡しするようにおじい様が指示していたものです。株式の方を相続税として半分、国に納めます。ですから現金は相続税を気にせず使って結構ですよ」
当面の生活って、一生かかっても千億って使えんの? スケールがでかすぎる……
通帳をもらって、ちょっとは嘘じゃない気がしてきた。
確かにこんな大金をもらえるとわかっていたら調子に乗って、庶民を見下す傲慢な人間に育っていただろう。
俺を児童養護施設に置いていたのは、じいちゃんの教育方針だったんだ……
「相続税の手続きは私の方で進めておきます。幸斗様は六文銭ホールディングスの大株主ですが、経営に関しては今の社長に任せておきなさいとおじい様が遺言しています。経営には口出ししないということでいいですね」
「もちろんです」
経営、何それという感じでよくわからないので適当に答えておく。
俺の意識はホールディングスなんかよりも、千紘姉さんに向かっている。こんだけ大金があったら豪邸を立てて、千紘姉さんと遊んで暮らせるではないか。
千紘姉さんは保育士になって社会の役に立ちたいという立派な心掛けの人だが、俺の申し出は絶対に受けてもらう。
なにせ俺は1兆円も相続税を納めてやるのだ。児童養護施設で育ててもらったのと高校に通わせてもらう恩の1万倍くらい返しているはずである。
こほん。
氷室さんが咳払いした。
「おじい様は遺産を渡すにあたって条件を出していらっしゃいます」
「え、そ、それは一体!?」
今さら何だよ――!?
氷室さんが、すうっと息を吸う。
「幸斗様に、最高の女性がお嫁様として選び出されるバトルロワイヤルの開催でーす」
陽気な声で宣言した。
「はあああああああぁ!?」
「幸斗様には5人の女子高生と同棲をしていただきます。そして法律上、結婚が可能となる18才の誕生日に結婚相手を決めてもらいます。そして相手の女の子も18才になり次第、日をおかずに入籍して下さい」
氷室さんがにこにこ顔で説明を続ける。
本作の短編版
『1兆円持ってる俺は、ギャンブルで無双して美女にデレられてしまう~日常的に美少女を競わせてリアル版ウ〇娘やってるようなもんだからね』もあります。
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