77 桃香がNTRれる?
◆◇◆
桃香は病院を出て、イマイチ高に行くのかと思いきや今岡駅前の繁華街へ移動する。
ビルの一階のファミレスに入っていく。
時刻は14時ちょっと前。桃香は遅い昼飯を食べるのかなと思う。今から昼飯食ってたら最後の授業が終わってしまう。桃香は丸一日サボりが確定だ。
氷室さんはファミレスの斜め向かいで 車を路駐させた。
「張り込みの定番、アンパンとかを買っておきました。お茶もいろいろありますよ」
氷室さんは後部座席からコンビニの袋を取って、俺に渡してくれる。
「どうも。準備周到ですね」
俺は氷室さんが食料まで買い込んでおいたことに感心する。昨日、桃香の尾行をしたいと言った時は乗り気じゃなかったのに。桃香の行動を氷室さんは予想して、準備しておいてくれたんだ。
桃香の今日の行動は氷室さんの予想どおり。たいてい桃香はこういうことをしているってことだ。
俺はお腹が空いているので、アンパンを食べ始める。刑事になった気分だ。
車の窓からファミレスの中が見える。桃香は奥の方の2人掛けテーブルに一人で座った。
貧乏な桃香にファミレスで食べる金なんかあるんだろうか。嫌な予感がどんどんする。
桃香の前に一人の男が現れる。メタボ腹で、バーコード頭のオッサンだ。桃香は立ち上がって、男に笑顔を向けている。
「あ、あのオッサンはだれなんすか?……桃香の叔父さんじゃないですよね」
俺は震える声で氷室さんに確認する。
「桃香様に叔父はいません。赤の他人ですよ」
氷室さんからそっけない返事がある。
「じゃ、じゃあ、あれはパパ活……なんで桃香はパパ活なんかやってるんですか。病気の治療代を稼ぐためですか?」
「そうですね。柚子香さんの病気は難病指定されているので、国が治療費のかなりを助成してくれます。でも全部じゃありません。新しい薬を試す時とか、何十万円も払わないといけません」
「うう……」
「あと桃香様がお金を稼げば、それだけ母親が楽をできます。母親が仕事を減らして、柚子香さんのお見舞いに行くことができるじゃないですか」
「……それはそうですけど……」
「女子高生が自身の性的魅力を換金するのは容易。いくらでもオッサンが寄ってきます。桃香様ほどエロい体だったらなおさら。今稼がなきゃいつ稼ぐんだって感じでしょう」
「でも桃香はお嫁様バトルロワイヤルやってるんですよ。パパ活なんかやらなくたって俺のお嫁様になればすごい金をゲットできるのに。目先の小金なんかに目が眩むなんて、どうして?」
「バトルロワイヤルの結果が出るのは1年後。桃香様は待てないんです。柚子香さんの命が刻々と減ってますからね」
氷室さんの言葉が、俺の心に重たくのしかかる。
桃香は、柚子香ちゃんの治療費と母親が柚子香ちゃんと会う時間を作れるように自分の時間を切り売りしているんだ。
オッサンと話したりするのは気持ち悪くてしょうがないだろう。でも家族のために我慢してやっている。桃香はとてもやさしい子だから。
「氷室さん……何百万円か桃香に渡してやって下さいよ。そうしたら桃香はパパ活なんかしなくていい。母親だって仕事をしばらく休んで、柚子香ちゃんといられるんです」
俺の資産1兆円のうち、9千億円は氷室さんが管理しているようなものだ。タワマンの最上階やリムジンを購入したり、バトルロワイヤル開催の経費を支払ってくれているみたいだ。
「不可です。言ったでしょう、バトルロワイヤル参加者の家庭に、お嫁様を決める前にお金を渡すことは禁止されています」
「でもさっ こんなの桃香が不利過ぎでしょ」
俺はキレる。
他の4人は、俺にご奉仕するために100パーセントの時間を使うことができる。
桃香だけが足枷をされている状態。
俺は桃香がNTRれると気が気じゃなくなって来た。




