76 桃香はえらい
頭が良すぎる氷室さんは、他の命が見えている。氷室さんは共感能力の欠落した人間じゃない。むしろとてもやさしい人。
「そうか……だったら俺はどうしたらいいんだ……」
「どうにもできないと思いますよ。ですが、1千億円までなら幸斗様の自由にしていいお金です。どうしても柚子香さんを助けたければ、おやりになったらいいでしょう。影響を気にせずにね」
1千億円は俺が現金で持ってる全額だ。前に氷室さんは1千億円は俺が自由にしていい金だと言っていた。
でも俺の金の使い方は、氷室さんや他の女の子にチェックされる。1人の女の子ばっかり優遇するわけにいかないし、後先考えない愚かなお金の使い方をしたら軽蔑される。
「うう……」
1千億円を今すぐ突っ込めと喉まで出掛かっている。だが他の子供の命を犠牲にするかもと思うと踏ん切りがつかない。
桃香と柚子香ちゃん自身も、そんなことは望んでないだろうと思う。
「逆ギレしてすみませんでした。幸斗様、今日のところは桃香様の行動観察に専念されたらいいでしょう。桃香様と柚子香さんが本当に助ける価値のある姉妹なのか見極めるってことで」
「いえ、俺の方こそすみません。助ける価値ってどういうことですか……助けたいに決まってますけど」
「ご自身の目で確かめてください」
氷室さんはもったいぶった言い方ばかりする。これから桃香が、悪い子の一面を見せるかのようだ。
桃香はパパ活で汚れているというのか……やっぱり問題はそこに行く着く。
「わかりました。今日は最後まで氷室さんに付き合ってもらいますよ。ところで、桃香は母子家庭ですよね。父親はなんでいなくなったんですか?」
母親は仕事が大変だという話を聞いたが、父親の存在感がまるでない。
「父親は蒸発しました」
「は?」
「柚子香さんが難病だとわかると、すぐにいなくなってしまったようです。逃げたんですよ、柚子香さんを支えるのがしんどいから。母親に桃香様と柚子香さんの二人の子を産ませるだけ産ませて」
「なんてゴミクズだ」
「よくある話です。難病の子供に付き添うのは、ほとんど全てがシングルマザー。父親は速攻で逃げ出します。それくらい難病の子供の世話って大変なんですよ」
「同じ男として恥ずかしい……桃香は母親と一緒に柚子香ちゃんを支えてて、えらいじゃん」
「その点は確かに。柚子香さんの病態が急に悪化することがあります。仕事中の母親に代わって、桃香様が病院に駆けつけて付き添いをしなくちゃいけない。病院との連絡用にスマホを持っているんですよ」
「なるほど……桃香がスマホをいつもいじっているわけが、ほんとよくわかったよ」
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