64 藍のパンティー2
俺は振り返って、藍が駆け戻ってこないか確認する。
外で足音はしないから、藍が来る気配はない。
ごくり……
俺はクンクンする変態じゃないと思っていたけど、目の前に美少女の使用済みパンティーが落ちていると魅惑されてしまう。
いや、俺がおかしいんじゃなくて、ほとんどの男はやるだろう、この状況だったら。
もう一度振り返って、藍の気配を確認。
てか、脱衣所の扉に鍵を掛けられる。鍵を掛けてしまえば、クンクンしているところに藍が戻ってきて見つかるっていう事態を避けられる。
よし。
俺は逸る心を抑えながら、扉に引き返す。鍵を掛けた。
パンティーの置かれた棚の方に歩いていく。
ドクンドクンドクンドクン
俺は今、ファーストキスをする時ぐらい鼓動が激しくなっている。
クンクンしたら人間として大事な物を無くしてしまいそうだが、誘惑には抗えない。
パンティーを右手でつまんだ。
ゆっくり俺は鼻先に近づける。
クンクン
……しようとした瞬間――
これは藍の罠だ――
とハッとした。
慌ててパンティを放り投げる。
パンティーが残っていたのは偶然じゃない。絶対に藍が意図的に残していったんだよ。
もし俺がクンクンしてしまったら……きっと匂いで強烈な印象を受ける。
後で藍に「先輩、クンクンしましたよね?」って聞かれた時に「クンクンなんかするかっ!」と嘘ついても、後ろめたさがあって、藍にはバレる。
藍には俺が変態であるという弱みを握られてしまうことになる。絶対に避けなければいけない事態だ。
くうう……
涙を飲んで、藍のパンティーをクンクンするのは諦めよう。
俺は床に落ちたパンティーを指で摘まむ。匂いが鼻に届かないように腕を伸ばしたまま、脱衣所の籠の中に落す。
洗濯物は籠に入れておけば、クリーニング屋さんが洗濯してくれるのだ。
藍にパンティーが残ってなかったか聞かれても、「籠に入れといた」で終わらせる。俺に何もやましいことはない。堂々としていればいいのだ。
ふううう……
藍はとんでもない罠を仕掛けていったものだ。
恐怖感に打ち震えてしまう。
藍は檜風呂に間違えて入ったと言っていたが、多分嘘だ。俺の風呂に、俺よりも先に入って、罠パンティーを仕掛けるチャンスを狙っていたに違いない。
今日俺がトレーニングマシンの方に行って、運動してから風呂に入るってわかったから、藍は作戦を決行することにしたんだよ。
なんて狡猾な子なんだ。藍以外の女の子は使用済みパンティーの罠を俺に仕掛けるような気がしない。
藍は俺を殺りにに来てたよ。
目にも止まらぬ速さで合気道の技を決めるようなものだ。俺は普段、藍と過ごす時間は短い。だが藍にとっては、時間の長さは問題じゃない。俺が油断したら一瞬で決めてしまう。
殺られるところだった……
あ、そうだ。脱衣所の鍵は外しておこう。藍が戻ってきて、鍵がかかっていたら疑われてしまうからな。見られたら困ることなんか何もないよって感じにしておかないと。
俺は膝がちょっと震えているが、扉の傍までまた歩いて行って立ち止まる。耳を澄ますが周囲で物音はしない。藍は近くにいないはずだ。そっと鍵を外しておいた。
はあぁ……ため息をつきながら服を脱ぐ。
パンティーは名残惜しいが諦めよう。
浴室に入る。
湯気が立ち込めている。
今日のところは藍がつかったお風呂で満足しておこう。なにしろ藍がシャワーを浴びずに入ったお風呂だからな。
俺はちゃんとシャワーを浴びてから入るもんね。俺なんかの汗が混じらないように、しっかり流しておいて……お風呂につかる、と。
ふう……
藍の汗につかっているような気分になるね。なんかゾクゾクする。
やっぱり俺って変態かな。
いや、多くの男が興奮するでしょ。俺だけがおかしいわけじゃない。
俺が藍の汗風呂に入るのは何の後ろめたさを感じる必要はない。藍のせいなんだし。俺は入るって、藍に言っちゃってるしね。俺はなんとも思いませんでしたよという、涼しい顔をしていれば良い。
藍がシャワーを浴びずに入ったというのは、わざとだろう。俺が汗風呂に入って喜ぶ様を想像して、ニヤニヤしてそうだ。だが、それくらいの変態は許容範囲。恥ずかしがることはない。
藍が檜風呂に使っている様子を想像する。肌についた汗がお湯に流れ込んでいったんだね。
ああ……恍惚となるね。美少女との同棲って素晴らしい。
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