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61 藍の汗

 ◆◇◆


 平日の夜。


 麿莉奈が作ってくれた晩ご飯をいっぱい食べた。

 そしてリビングでニーナちゃんと30分ほどアニメを見てダラダラする。

 

 お腹がこなれてきたな。よし、今日は……

 俺は意を決して立ち上がる。


 広大なタワマン最上階には、トレーニングマシンをいくつも設置した一角がある。たまには運動しようと思う。

 ちょうどTシャツにトレパンという動きやすい服を着ている。洗面所で予備のタオルを取ってから行った。


 トレーニングエリアには、藍が先に来ていた。

 藍は白いTシャツに黒い短パン、トレーニングシューズという服装。


 鉄棒みたいな器具にぶら下がって、懸垂をやっている。肌に汗が浮いているから、トレーニングに精を出している感じである。さすが体育会系女子。


「先輩、どうしたんですか?」

 藍がぶら下がったまま聞いてくる。


「たまには運動しようと思ってね。麿莉奈のご馳走食べてて、最近体重が増えてきた気がするから」

 実際、ベルトがきつくなってきているのだ。昼ご飯は学食でSランチを食べて、夜ご飯は麿莉奈のフルコースみたいなのが連日続く。


 おいしいし、女の子に甘やかしてもらうのは気分がいいんだけど、メタボになってしまう。

 俺は王様だからメタボになってもいいっちゃあいいんだけどね。


「トレーニングシューズなら先輩のも用意してありますよ」

 藍は鉄棒からぴょんと降りた。内履(うちば)き用下駄箱の前に案内してくれる。トレーニングシューズがいくつも並んでいる。氷室さんが、俺と女の子の分を予め用意しておいてくれたんだろう。


 サイズが合うものを履いてみる。

「おお、俺の足にぴったりだ」

 さすがは氷室さん。俺の足の形まで密かに調べていたのかもしれない。


「トレーニングマシンの使い方わかりますか? 説明しましょうか?」

 藍が親切に言ってくれる。


「頼むよ。俺は使うのが初めてだから」

「どれがいいですか?」


「カロリーを消費できるのがいい。あまり苦しいのは嫌だな」

 俺はわがまま言い放題。


「でしたらルームランナーでいいでしょうね」

 藍は俺をルームランナーの前に連れて行ってくれる。


「この上で走ってればいいんだな」

 ルームランナーはよく見かける普通のタイプだ。


「はい。テレビつけましょう」

 藍がボタンを押すと、正面のモニターにテレビが映る。


「おおっ 走ってて退屈しないな」


「最初はゆっくり目を30分くらいでいいですね。乗ってください、先輩」

 藍がセットしてくれる。


 俺がルールランナーに乗ると、藍はスタートボタンを押す。


「動き出した!?」

 俺は初心者なのでいちいち驚く。ベルトの回転に合わせて走る。


「ふふっ 先輩は面白いですよね。自分も隣でちょっと走ります」

 藍は左横のルールランナーに乗る。


「なあ、藍はよくここでトレーニングしてるのか?」

 走りながら尋ねる。


「一日おきに使ってますよ。筋トレした後、一日休んだ方が効果的なので」

 藍も走りながら答えてくれる。


「ふうん。スポ根で毎日ひたすらトレーニングするわけじゃないんだな」

「そういう部活もまだ多いですけど、自分の合気道部はわりと合理的に練習する方です」


「良いことだ。日本の運動部は異常だからな。つらい練習をひたすら我慢ていうブラック企業の社畜養成機関になってて、入る気になれないよ。しかし藍は部活の後も自主トレしてて、よくやるよな」


「せっかくいいトレーニングマシンがありますからね。お嫁様バトルロワイヤルに参加してよかったですよ」


「そんなにうれしいことなのか……トレーニングマシンがあるのは?」

「はい。実家の周りで夜中にランニングなんかできませんからね」


「ああ、藍の家は駅裏だもんな」

 今岡駅の裏には、県内随一の底辺校カス高があるのを思い出す。暴力が支配するカス高生が駅裏をうろついていて治安が悪いのだ。


 藍が夜中にランニングなんかしてたら、カス高生に拉致されてレ○プされてしまうだろう。

 実際、俺と藍が初めて出会った時に、カス高に絡まれていた藍を助けた。


 あんな危険な目には二度と遭いたくない。

 大事な娘さんの藍をお嫁様候補としてお預かりしているから、タワマンの中で運動してくれて安心である。

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よろしくお願いいたします。

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