42 美少女に取り合いにされるって疲れる
「待って待って。エッチはなし!」
俺は声を張り上げる。
「「「「えええ――――」」」」
不満の声が上がる。
「とにかく、エッチは当分なし。俺の心の準備ってものができてない」
俺は童貞ですからね。女の子との初体験をどうしたらいいか全然わからない。
しかも5人連続で、とかありえないよ。
毅然として拒否する。
部屋の空気が重苦しくなる。エッチに積極的な女の子たちと、消極的な俺で、早くも夫婦生活の不一致が発生したみたい。セックスレスってやつ……?
「ま、まあ、王様のご命令ですから今日のところは引き下がりましょう。さあ、みなさん幸斗さんの部屋から出て行きましょう」
麿莉奈が顔を赤くさせたまま取りなしてくれる。
「正直、自分も心の準備はできてませんでしたしね」
藍がすたすたと部屋を出て行く。
多少気まずくなっても、俺は夜のお勤めを回避できてホッとする。
「あたしはいつでもいいからよ。いつか抱いてくれよな」
桃香が笑顔を俺に見せてベッドから起き上がる。俺が拒絶して感じ悪いんだけど、桃香は気にしてない素振りをしてくれる。やさしい良い子だよ。
「ゆきとさんと、ただ寝るだけじゃダメですか」
ニーナちゃんはベッドに横たわったまま、諦めがつかない様子だ。
「うん、ごめんね」
俺は右手を差し出す。ニーナちゃんの右手を握って、起こした。
ニーナちゃんは名残惜しそうに何度も振り返りながら俺の部屋から出て行った。
「幸斗さん、夜中はドアに鍵をかけておいて下さい。誰かが幸斗さんに夜這いをして既成事実を作ってしまおうとするかもしれませんから」
麿莉奈が言い聞かせてくる。そして桃香をちろっと見る。
桃香がニシシと笑う。俺に夜這いするつもりだったようだ。麿莉奈にはお見通しで、牽制したのだ。
「わかったよ、俺は寝ているとこを起こされたくないから、夜中に誰も来ないでね。鍵をかけとくし」
しっかり言っておく。
「はーい」
桃香が返事して振り返って行く。
「おやすみなさい、幸斗さん」
麿莉奈も去って行く。
「ああ、おやすみ」
「6人で暮らし始める最初は色々と大変ですね」
氷室さんが腕組みして俺を見ている。
「はぁ、ほんとにそうです。風呂で背中流すのとか、一緒に寝るとかびっくりしました」
俺はちょっとイラついている。背中流すのを勧めたのは氷室さんだ。
「生活のルールは皆様で相談して決めていったらいいでしょう。そのうち落ち着きますよ。私はもう別の階の部屋に行って休ませてもらいます」
氷室さんは他人事みたいに言って、去って行った。
俺は歯磨きして、ベッドで横になる。
ようやく一人の時間が持ててホッとする。
美少女に取り合いにされるって男の夢だけど、ちょっと疲れる。ほんと贅沢な悩みだな。




