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【終章】5 女神の慈愛に包まれてる

 麿莉奈は俺から離れていって、藍の隣で立った。


 氷室さんが感嘆を漏らす。

「いやはや、麿莉奈さんからはどんな結末になろうとも、幸斗様のご寵愛を求め続けていくという気迫のプロポーズがなされました。次の千紘様様はどんな素敵なことをおっしゃってくださるんでしょうか。では、どうぞっ」


 千紘姉さんがはにかみながら俺の前に立つ。


「幸斗に改まってお話するのって、慣れてなくって……うまく気持ちを伝えられるかわからないや」

「普段どおり、気楽でいいんじゃないかな、姉さん」


「そ、そうよね。じゃあ幸斗……お姉さんね……幸斗がよかったらだけど……」

「うんうん」


「幸斗のハーレムに入れてくれないかな」

 千紘姉さんはちょっと顔を赤くしてつぶやいた。


「おおー」

 桃香らが感嘆している。


 優勝候補と目されていた千紘姉さんがハーレムでいいと言うのだから、驚くね。


「いいの? 姉さんだったら優勝できちゃうと思うんだけど」

 俺の純情は、千紘姉さんに俺を独り占めしてほしいと告げている。そして、ずっと甘やかしてほしい。


「私が優勝なんて絶対に無理だよ。みんな、私よりもずっと良い子だから」

 千紘姉さんが断言する。本気でそう思っているっぽい。


 俺は千紘姉さんはもっと自信を持ったらいいと思うんだけど…… 千紘姉さんは児童虐待されてたせいで心の奥底で怯えている。完璧な女性になろうとしてなれているのに、自信がない子なんだよね。


 ハーレムだと千紘姉さんが損な気がするんだけど……千紘姉さんはお金に全然興味がないからな。

 千紘姉さんはバトルロワイヤルで優勝したからってお金を浪費しまくるような悪嫁にはならない。ハーレムも、優勝も、あまり変わらないと言えば変わらないんだけど。


「私、バトルロワイヤルに負けたら幸斗とお別れしないといけないでしょ。そんなの悲しすぎる。でもハーレムを選べば幸斗といられるから」


「そ、そうだね……俺も千紘姉さんと別れるのは悲しいよ」

 俺は正直、千紘姉さんがバトルロワイヤルで負ける未来を想像できない。いくら他の子が頑張っても、なんだかんだ理由をつけて愛着のある千紘姉さんを選んじゃうと思う。


 とはいえ千紘姉さんに考え直すことを勧めても無駄な気がしてきた。千紘姉さんのハーレムに入りたいっていう希望は、氷室さんに紙に書いて提出されている。今さら撤回はできないし。


「いいのかな? こんなお姉さんを幸斗のお嫁様の一人にしてもらえるのかな?」


「いいに決まってるよ。姉さんが控え目なのにもほどがある。他の子からしたら嫌味かって思うよ」

 俺は苦笑してしまう。


 千紘姉さんはバトルロワイヤル開始当初は、他の子に勝ちを譲る気がまんまんだった。

 徐々に千紘姉さんも戦意を持つようになってきて、ようやくお泊まりデートのあたりで俺との結婚をかなり意識するようになった。


 でも何がなんでも俺を独り占めにしたいってまでは至っていなかった。


 千紘姉さんが本気出したら無双できるんだけどな……5人の中で最強の爆乳ボディの持ち主であり、俺と幼なじみ。

 パラメータ配分にかなりの不公平感があるくらいだけど、非戦闘的な性格が致命的な弱点。


 もしバトルロワイヤルが続いたら、千紘姉さんの俺を独り占めにしたい欲求が高まるのかもしれない。

 しかし現時点で、ハーレムルートにするか決議することになってしまった。千紘姉さんが、みんな仲良くハーレムで暮らしましょうっていうのは当然なんだろう。

 俺としては千紘姉さんとの純愛に生きたかったか複雑な気持ち。


「ハーレムってさ、バトルロワイヤル状態が続くんでしょ。いいことよね」

 千紘姉さんはニコニコしながら話す。


「ええ!? なんでいいことなの?」

「女の子みんなで競った方が幸斗を大事にできるもん 私、幸斗が大好きだから幸斗が一番幸せになるようにしてあげたいんだ」


「さ、さすが姉さんは俺のことを第一に考えてくれるけど……それはどうなんかなぁ」

 俺は首を傾げてしまう。


 女の子たちにちやほやされるのはうれしいけど、千紘姉さん一人に溺愛されたかったね。

 まあ千紘姉さんなりに俺が最高に幸せな状態を考えてくれたっていうやさしさは伝わってくるけどさ。


「それにね、みんなで一緒に暮らすのが児童養護施設みたいじゃない。私は人がたくさんいるが寂しくなくって落ちつくの」


「姉さんがそれでいいならいいんだけどさ……」

 児童虐待が千紘姉さんの性格に深い影響を及ぼしているのを哀れに思う。


「だから、これからも幸斗のお世話を私にもさせてね。お願い」

「もちろん。俺と一緒にいてくれたら、世間が姉さんを酷い目に遭わせようとするのから俺は守るよ」


 俺は千紘姉さんから世話になるばかりじゃ悪いので、俺も姉さんに誓う。

 千紘姉さんは高校卒業後、就職してどっかで働くつもりだ。働くのはえらいけど、ブラック労働で酷使されるような目には遭わせない。


 昔の俺は無力だったけど、今の俺は財力も権力もある。

 姉さんは素晴らしい女性なのに親ガチャに外れたせいで、つらい人生を送ってきた。俺が姉さんにお返しをして楽にさせてやる番だ。


「幸斗とは10年以上一緒にいるけど、お姉さんに飽きたりしないの?」

「飽きないよ。姉さんとは死ぬまで100年だって一緒にいたい。死んだ後だって、一緒に異世界転生したいくらい」

 俺からはプロポーズのつもりで気持ちを込めて答える。


 バトルロワイヤルは大接戦だけど、やっぱり俺の中での優勝は千紘姉さんだ。


 誰よりも俺にやさしくしてくれて、俺にこの世に愛が存在するって教えてくれたのは千紘姉さん。

 千紘姉さんがいなかったら、俺は誰も信じることができなかったはずだ。


 女の子が近寄って来て、どんなに俺に尽くしてくれたとして金目当てとしか思わない。俺は歪んだ人間に育っていたので、バトルロワイヤルがそもそも成立しない。


 他の子が拮抗して見えてはいるけれど、千紘姉さんという女神の慈愛の中にみんなが包まれているからなんだ。


 俺は深く感謝して、千紘姉さんに永遠の愛を誓う。


 お互いに歩み寄って抱き合う。


「幸斗、大好き♡」

「俺も千紘姉さんが大好きだよ」


 千紘姉さんが俺に顔を向けて熱い視線で見つめている。


 俺は千紘姉さんがキスしたがっているって感じる。千紘姉さんは臆病なので、自分から積極的に行って拒否されたくないのだ。

 だから俺からキスしてあげる。


 ンッ……チュッ……


 パチパチパチパチパチパチ

 他の女の子と氷室さんが拍手で祝福している。


 ンッ……チュッ……

 チュッ……


「ひゅーひゅー」

「幸斗先輩と千紘先輩は姉弟みたいだったのが、ついにくっついた感じですね。感動的です」

 キスしてる俺たちを藍と桃香が囃し立てる。


 俺は舌を千紘姉さんの口に差し込む。


「えっ!? ちょっと……んも……」

 戸惑う千紘姉さんの口を封じてしまう。


 俺は千紘姉さんの口内を蹂躙する。千紘姉さんは俺の物。千紘姉さん自身が、俺のハーレムに入りたいって言ったんだし。


「はぁん……幸斗」

 時折、千紘姉さんが甘い吐息を漏らす。ますます俺は興奮して夢中で、千紘姉さんにディープキスする。


 俺は何分間も千紘姉さんを貪ってから口を離す。俺たちの間に唾液が糸を引いた。

 俺は唾液の糸を右手の甲で絡め取り、舐めた。ちょっと変態ぼい仕草をしてしまった。


「ありがとうね、幸斗。こんな重たいお姉さんをいつも受け止めてくれて」

「俺は姉さんのためだったら何だってするよ」


「幸斗、これからもよろしくお願いします」

 千紘姉さんがお辞儀をする。


「俺こそよろしくね。永遠に。約束だよ」


「うん、私はずっと幸斗と一緒」

 頭を上げた千紘姉さんはすごくいい笑顔を見せてくれる。


 俺たちは助け合って生きてきた。これからもずっとなんだ。


 千紘姉さんはニコニコしたまま、俺の前から去って離れたところで立つ。


 5人の女の子のうち、4人目まで選択の発表が終わった。

 4人の女の子と結婚のキスをしてしまったようなものだ。女の子と次々と関係を持って、とてもイケナイことをした背徳的な気分。

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