40 ロリっ子とお泊りデート
◆◇◆
9月〇日。平日の夜。
俺はお風呂に入ってグレーのパジャマ姿。自室のベッドの上に寝そべって、スマホをいじっている。
トントン
ドアがノックされる。
「ゆきとさん、お話したいことがあるのですが」
ニーナちゃんの声だ。
「どーぞ、鍵空いてるよ」
「わーい、ゆきとさんの部屋なのです」
ニーナちゃんがドアを引いて入ってくる。水色のパジャマ姿だ。
「ドアは開けといてね」
俺の部屋に女の子が入る時は、エッチなことをしているんじゃないかと誤解されないようにドアを開けることにしている。
俺は身を起こして壁にもたれかかる。
右隣にニーナちゃんが、壁にもたれた。ツインテールからシャンプーの甘い香りが漂ってくる。
「じつは……お泊まりデートの行き先をゆきとさんと相談させていただきたいのです」
ニーナちゃんはもじもじしながら切り出す。
お泊まりデート課題は、俺と2人でどっかに1泊2日で旅行してくるというもの。
俺と2人っきりになるのは、うれし恥ずかしいよね。
行き先も予算も自由と、ルールはわりと適当。行き先は俺に内緒にしてサプライズにしてもいいのだが、相談してもよい。
ニーナちゃんは相談することにしたわけだ。
「どこ行くかってことだよね。できれば俺は女の子の生まれ育った場所に行ってみたいけど……ノルウェーは遠いな」
これまでのお泊まりデートでは……
藍と神戸三宮、麿莉奈と京都と、彼女らが生まれ育った場所に行った。
いずれも彼女らの生い立ちや家族について知れて有意義だった。
「はい。1泊2日では無理なのです」
「だよなぁ ノルウェーはいつか行ってみたいけど、また別の機会だね」
「お泊まりデート海外旅行編をやってほしいです。ゆきとさんとノルウェーにいきたいのです」
ニーナちゃんが思いつきを口にする。
「おおっ」
俺は一瞬名案だと思う。
女の子に出す課題を考えるのは大変なのだ。代わりにニーナちゃんが考えてくれて助かる。
しかし……海外旅行って、難度が高すぎるんじゃないのか……俺は行ったことないから、知らんけど。
千紘姉さんも海外旅行はしたことない。桃香もないだろう。千紘姉さんはゆるふわだし、桃香は雑な性格。
千紘姉さんや桃香と俺が海外旅行に行くと、下手したら日本に帰って来れないんじゃ……
お泊まりデート海外旅行編を正式採用するかは、よく検討した方が良さそうだ。
「まあまあ、海外旅行はいつかってことで、まずはニーナちゃんと国内にお泊まりデートだね」
「はいです。ゆきとさんは、どこかいってみたいところはないですか?」
「特に……ない。ニーナちゃんにお任せでいいんだけど」
「でしたら、わたしは伊勢志摩にいってみたいのです」
ニーナちゃんから具体的な地名が出てきて驚く。ニーナちゃんは外国人なのに、俺よりも日本に詳しくなっている感じ。でも、大の親日家だから不思議じゃないか。
「へえ、なんで?」
「伊勢海老や鮑がおいしそうで、じゅるりなのです」
「おお!! 確かに。採れたてはうまいだろうねっ」
「はいです。日本海側のお魚はふだんいただいてますので、太平洋側のお魚を食べてみたいのです」
ニーナちゃんは魚が大好きな子だ。
欧米人は生魚を食べられないらしいけど、ニーナちゃんは生魚をうまうまと食べる。それで伊勢志摩なのかと納得した。
「うんうん、いいね、俺も行ってみたいよ」
ひたすら美味しい物を目当てに旅行するっていうのは気楽で良い。
ニーナちゃんは特段大きな家庭の事情を抱えていないはず。何らかの問題を解決しに行くなんて悩ましいことはしなくてよい。
麿莉奈と京都に行った時は、倒産寸前の御池電機のリストラをするのが大変だった。俺は、女の子のために頑張るっていうのはやぶさかじゃないけど、何もしないで済むのに越したことはないね。
「でも伊勢志摩はちょっと遠いのです。電車で6時間くらいもかかるのです」
「へえ、遠いんだな」
俺は日本地図を頭の中に浮かべる。
北陸から伊勢志摩のある三重県は直線距離だと、東京よりも近そうなんだけど。新幹線が通ってないし、電車が山を迂回して行かないとけないんだな。
手っ取り早く行くんだったら、ヘリコプターをチャーターしてもいいんじゃない?と思いつく。
以前、藍が日帰りデートに連れて行ってくれた時は、ヘリコプターをチャーターしてくれた。俺は超絶お金持ちだから、チャーター料が1分1万円だろうが余裕。
あ、でも、万が一ヘリコプターが墜落でもしたら……ニーナちゃんが死んでしまって、ニーナちゃんのご両親が嘆き悲しむことになる。
藍がヘリコプターを選んだのは自己責任だけど、ニーナちゃんを俺の判断で乗せるのは責任を取りかねるね。大事なニーナちゃんをお預かりしているんだから安全第一だな。
「わたしは電車の中でアニメを見ていれば平気ですが」
ニーナちゃんは長時間の電車を苦にしないと言う。タブレットにネトフリとかのアニメをダウンロードしていけばいい。
「俺もそうだ。じゃあ電車で行こう」
移動手段は普通に電車に決定した。いくら金を持っていても使う機会って、意外に少ない。ちょっと悔しい。
「では旅館の予約などは、わたしがするです」
ニーナちゃんがお泊りデートの課題をこなすためにやってくれると言う。
「待って……せっかくだから豪勢に行こう」
俺はスマホを手に取る。
伊勢志摩観光のサイトを調べて、なんか金を使う機会はないのかと探した。
「英虞湾夕焼けクルーズ……すてきなのです」
ニーナちゃんが俺のスマホを横から覗き込んでつぶやく。
伊勢志摩には英虞湾ていう、入り組んだ地形の海があるらしい。そこをクルーズ船で回るんだが、夕暮れ時は夕日に照らされて特別に美しい光景になるようだ。
「いいね。どうせなら他の客がいないように貸し切りにするか。あるいは、俺たち専用の大型のクルーザーを借りるか買うかして、英虞湾に行ってもらっておこう」
俺は良いアイディアを思いついた。
クルーザーっていかにもお金持ちっぽいよね。クルーザーを俺が運転したら死亡フラグが立つけど、ちゃんと運転免許を持った船員さんたちに任せておけば安全だろう。
「すごいです、そんなことできるのですか?」
「氷室さんに頼めば、楽勝で手配してくれる気がする」
お嫁様バトルロワイヤルの司会進行役の氷室さんは、御池電機のリストラに協力してくれた。それ以来はバスケの審判をしたくらいで暇そうにしているように見える。
クルーザーの手配くらい、バトルロワイヤルを盛り上げるためってことで喜んでやってくれるだろう。
「わー ゆきとさんとのお泊りデートがたのしみなのです」
「俺も楽しみだよ」
かわゆいニーナちゃんとの1泊2日のデート。わくわくするね。
◆◇◆
9月〇日土曜日。
天気は晴。
今日はニーナちゃんとお泊りデート。
2人で電車に乗って、伊勢志摩に向かう。
新幹線と特急列車を乗り継いで6時間以上かかる。
結構遠いんだけど、俺もニーナちゃんもアニメが大好きだから、電車の中でアニメを見てたら平気。
ニーナちゃんは白いワンピース姿。俺は白いTシャツにジーンズという適当な服装。荷物は2人の着替えとかを入れた小さなスーツケースが1個だけ。
特急のグリーン車の座席は……
↑進行方向
窓 俺 ニーナ 通路
……である。
俺とニーナちゃんのシートの間の手すりを持ち上げてしまって、遮るものを無くしている。ニーナちゃんが俺の右腕にずっと抱き着いている。
俺がタブレットを持って、ニーナちゃんと一緒にアニメを見ている。イヤホンは片耳ずつ入れていて、ラブラブな恋人っぽい。
「ゆきとさんと一緒でしあわせなのです」
お泊りデートの醍醐味は俺を独り占めできることらしいから、ニーナちゃんはご機嫌。
普段タワマンでアニメ見てるのと同じようだ。でもイヤホンを2人でしているところが旅行っぽい。
4時過ぎに伊勢志摩の終点、賢島に到着。
温泉旅館にチェックインした。




