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17 女の子たちが俺を大好きになる?

 麿莉奈には、好きな男がいないっていうのは本当らしい。

 一方で、俺にはばっちりと好きな人がいるんだよな……


 千紘姉さん――


 俺の純情は、お嫁様バトルロワイヤルで攪乱(かくらん)される。


 いくら俺が他の女の子もちょっと気になるからって……つくづく余計なお世話だ。

 ラノベのラブコメは三角関係の間を揺れ動く優柔不断なキャラが定番だけど、フラフラできちゃうのはうらやましいよ。


 俺は千紘姉さんとの仲を引き裂かれる気分。


 ああもう、千紘姉さんと駆け落ちしようか。

 1兆円を捨てることになるけど。

 俺たち二人だけで慎ましくも、愛に満ちた暮らしをしたい。


「幸斗さんには、好きな人がいはるんですね?」

 麿莉奈の声で我に返る。


「な、何を突然!?」

 俺は考えていたことを麿莉奈に見抜かれたみたいでびっくりした。


「高校生男子に好きな人がいるのは当然なんでしょう。幸斗さんはその人と結婚したくて、バトルロワイヤルは適当に済ませてしまおうと思うてはるかもしれませんね」


「んなこと考えてないよ」

 俺は否定するものの、完璧に心を読まれている気がした。


「バトルロワイヤルの期間は1年間あります。しかも二度とは戻って来ない高校2年生。受験や就職の心配もしなくていい1年間なんです。適当に済ませてしまうのはもったいないと思わはりません?」


「ま、まあ、そうなんかね」

 俺は言葉を(にご)す。


 千紘姉さんとばっかり仲良くする光景を想像してみる。他の4人はやる気をなくして、どんよりした空気になりそうだ。

 1年間の同棲生活が重苦しいものになるのは、俺もしんどそうだ。


 麿莉奈は俺の前でくるりと立ち塞がる。

 前に進めなくなった俺は立ち止まる。


 ぐいっと麿莉奈が、顔を近づけて来る。


「幸斗さん、差し出がましいことを申しますけど、あなたは女の子たちの気持ちを受け止めるべきやわ」

 麿莉奈の息が吹きかかる。柑橘(かんきつ)系のいい匂いがした。


「え……」


「ウチは、幸斗さんにド底辺の人生で鍛えられたたくましさ、やさしさを感じます」

「ほんとかよ……」


「みんな、幸斗さんを大好きになって、頑張らはります。ウチもやし……そやから、ウチにもチャンスを下さいね、ふふ」

 麿莉奈は言い終えて恥ずかしくなったのか、くるりと背中を向けた。


 真剣な麿莉奈の口ぶりは嘘を含んでいるようには感じられない。演技だとしたら、上手いよな。


 何と答えていいかわからくなった。「チャンスをあげる」って答えて欲しそうだけど、すると千紘姉さんを諦めないといけなくなる。でも麿莉奈を無視するわけにもいかない。


 早くも板挟みになりそうな予感がする。


 俺はちょっと気まずくなりそうだったので話題を変える。


「ええと、京都弁で、”です”って、”どす”って言うんじゃないの? でも麿莉奈は、”どす”って言わないよね。なんで?」


「ぷっ 今どき、”どす”なんて言うのは舞妓(まいこ)はんくらいやわ」

 麿莉奈が吹き出す。


 舞妓はんて、京都にいる芸者さんのことだよね。顔に白粉(おしろい)を塗っている女の人で、お座敷で踊りとかをするってのは聞いたことがある。


「そうなんだ」

「ウチは京都の町中で育ちましたから、ディープな方やけど、さすがに、”どす”は使いません」


「へええ、知らなかった」

 京都民はみんな古風な話し方をするんだと思っていた。

 麿莉奈みたいにいかにも京都キャラって子は、かなりレアなんだな。


「ウチからしたら、幸斗さんがこちらの方言で話さないのが不思議なんやけど」

 麿莉奈が俺が方言で話してないことを指摘する。


「ああ、地元の方言を話すのは年配の人だよ。若い人は標準語」

 若者でも親と話す時は方言が出ちゃうケースもあるんだけど、俺は親がいないからな。一応、方言を使えなくもないけど、普段使わない。


「そうなんやー ウチは方言がわからないので、助かります」

「麿莉奈はいきなり転校させられて、ただでさえ大変だもんね」


 お嫁様バトルロワイヤルなんていう滅茶苦茶なイベントのために、生まれ育った京都を引き剥がされた麿莉奈をかわいそうに思う。

 全然知らない土地に引っ越してきて、言葉が通じなかったら本当に大変だろう。俺は標準語で話してあげよう。


 俺たちは他愛(たわい)もない会話をしているうちにイマイチ高に到着した。

 なんかもう麿莉奈とけっこう打ち解けた気分。俺がかわゆい女の子と親しく話してるなんて不思議。

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