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4 美少女たちのテスト結果

 ◆◇◆

 

 7月、平日の夕方。

 リビング。


 俺はニーナちゃんとソファーに座って格闘ゲームに興じている。ニーナちゃんは白いTシャツにデニムのショートパンツというかわゆい姿。


 右隣に桃香が座った。桃香はグレーの半袖サマーセーターワンピースを着ている。横目で見ると、桃香の胸の辺りがこんもりと盛り上がっている。

 いわゆる童貞を殺すセーターだ。さすがGカップ……デケェ……


「にひひ。このセーターどう? クローゼットにあったんだけど、ゆきとが喜ぶかなって思って着てみたんだ」

 桃香は意識的に童貞の俺を殺しに来てる。


「まったく……クローゼットのコスプレ衣装の充実ぶりには呆れるよな。俺には刺激が強すぎる。桃香には悪いが、別の服を着てもらえると落ち着く」

 俺はゲーム画面を向いて、桃香に言い聞かせる。


「なぁゆきと、遠慮すんなって。あたしにしてほしいことを言ってくれよ。なんでもするからさ」

 桃香がぴとっと俺の肩に頭をくっつけてきた。蠱惑(こわく)的な香水の匂いもプンプンする。


「く、ゲームに集中できない」

 俺の操るキャラクターがガードに失敗。


「チャンスなのです」

 ニーナちゃんのキャラクターが連続技を繰り出す。


 あっという間に体力ゲージがゼロになる。


 うう……

 俺はニーナちゃんの勝利画面を虚しく見つめる。まさに桃香に殺されたようなものだ。

 

 桃香に当たるのは大人気(おとなげ)ないので、俺は不満を漏らさないよう悔しさをこらえる。


「ところで期末テストが返って来たよな。桃香の結果はどうだったんだ?」

 俺はこのまま桃香に殺されたくないから、真面目な話題を切り出してみる。


「あはははっ あたしはテストなんか気にしないから」

 桃香が能天気な笑いをする。


「相当に悪かったってことだな。答案を見せてくれ。俺は桃香が留年しないか心配だからな」

 

 もともと桃香は出席日数が足りない子だったが、先生がお情けで進級をさせてくれていた。


 シングルマザーの母親の代わりに家事をしたり、妹の柚子香ちゃんが難病で入院してて看病しないといけなかったから。

 いわゆるヤングケアラーだ。桃香は大変だったんだから、成績が悪いのはしょうがない。


「え……まぢで見せないといけないの?」

「桃香が留年して、ニーナちゃんと藍と同学年になってしまうのは(みじ)めだろう」


「うぐ……」

「これから勉強を頑張ればいいじゃないか」


 柚子香ちゃんのお見舞いはたまに行くだけで良くなったからな。桃香がパパ活をする必要もなくなったし、勉強する時間は十分に確保できるようになったはずだ。 

 まずは桃香の現状を把握することだ。そして成績向上の方策を練る。


「まいったなぁ」

 桃香は苦笑いしながら、部屋に行った。

 

 俺の期末テストの成績も平均点以下だったから、()められたものじゃないんだけどな。まあ俺は金を持っているから、ぶっちゃけ学校の成績なんかどうでもいい。

 無難に進級して、卒業できればOK。高校は美少女たちと学園生活を楽しむためのところだ。


 桃香がテストの紙束を抱えて戻ってきた。


「あ、ニーナちゃん、ちょっとタイムね」

 俺はゲームを中断。


 桃香がテーブルに答案を広げたので、眺める。


 数学B 0点、数学Ⅱ 0点、英文法 2点、リーディング 3点、現代文 5点、古文 0点、世界史 2点、生物 4点……


「あはは……」

 桃香が空笑い。さすがにこの点数は恥ずかしいようだ。


「想像を絶して悪い……よく進級させてもらえたな……」

 俺が察するに、先生は桃香がヤングケアラーだと聞いて同情してくれたけど、このレベルでは先生も相当悩んだだろう。


「あたし、1年の時からついていけてないからな」

「勉強は積み重ねだからな。数学も英語も前の部分がわかってないと途中からできるってことはないよね。1年の勉強から(さかのぼ)ってやらないとなぁ」

 俺は腕組みして思案する。


 どうしたもんか……俺は桃香に勉強を教えてやれるほど頭が良くない。

 麿莉奈が優等生だから家庭教師役には適任だが、麿莉奈と桃香はお嫁様候補同士でライバルだ。麿莉奈に頼むのは筋違いというものだろう。属性が没落令嬢とギャルで正反対だしなあ。


「ももかさんも、できない子だったのですね」

 ニーナちゃんが立ち上がり、前かがみでテーブルを覗き込んで呟く。


「も……?」

「わたしも、ももかさんと同じくらいの点数なのです。英語はもうちょっといいですが」


「いいっ!? ニーナちゃんもテストの答案見せてよ」

 俺は猛烈に心配になってきた。

 

 ニーナちゃんという大事な娘さんをお預かりしているからね。俺と遊んでばかりいて、バカな子に育ってしまってはご両親に申し訳が立たない。


「はい」

 ニーナちゃんは素直にトタトタと部屋に行く。


「へへ、ニーナもバカだったんだ。あたしだけじゃなくて安心したぜ」

 桃香がニヤニヤしている。桃香が留年しても、ニーナちゃんも1年生のままで引き続き上級生でいられると思ってそうだ。


「ニーナちゃんの成績が悪いとは知らなかったよ。でも考えてみればしょうがないか。ノルウェーからやって来てるんだもんな。日本語がたどたどしいし、漢字が書けないだろうからな」

 むしろよくイマイチ高に受かったなという気がする。


 確か……今年の1年生は定員割れして、希望者が全員入れたんだったな。ニーナちゃんの学力が不足していても受かっちゃったわけだ。

 俺としてはニーナちゃんが同じ学校で良かったんだけど。ニーナちゃんの低学力を放置していていいんだろうか。


 正直、日本の詰め込み教育に意味があるのか疑問なんだが……何でもグーグル先生が教えてくれる時代だというのに、暗記させられることが多すぎるからな。


 ニーナちゃんが戻ってきた。

 テーブルの空いているところに答案を並べていく。


 数学A 5点、数学Ⅰ 4点、英文法 40点、リーディング 33点、現代文 0点、古文 0点、世界史 5点、生物 4点……


 ニーナちゃんは桃香ほどではないが、かなり悪い。


「日本のテストは難しすぎるのです……」

 ニーナちゃんは俺がショックを受けているのを見て、しょんぼりする。


「国語が悪いのはしょうがないよね。ニーナちゃんにとって、日本語は外国語だし、古文に至っては昔の日本語だからなおさらわけわかんないでしょ。英語がいいのは、ノルウェーの英語教育が日本よりマシだったからだろうね」


 日本の英語教育ってショボすぎる。日本人が英語を話せないようにするのが目的だよな。日本人の若者が海外に逃亡しないようにしているとしか思えない。


「あ、はい。でも日本語に訳しなさいっていうのが難しいのです」


「そりゃそうだ」

 俺はニーナちゃんがダメとは思わない。成績が悪くても気にしていない桃香と違って、ニーナちゃんからはいちおう頑張っているという気配を感じる。


 どうしたもんか……家庭教師でも雇ってあげようかな。


「ま、テストなんてどうでもいいじゃん。あたしはゆきとの嫁になるんだから」

 桃香が俺の右腕に抱き着いてくる。


 童貞を殺すセーターがふんわりと腕を包む。

 この感触……桃香はブラジャーを着けてなくない!?


「子づくりに励もうぜ、ゆきと♡」


「だめです。ゆきとさんと結婚するのは、わたしなのです」

 ニーナちゃんが俺と桃香の間に入って、引き離しにかかる。

 金髪、銀髪のコンビは普段わりと仲がいいけど、俺のお嫁様の座は譲れないのだ。


 ニーナちゃんが俺の腕を解放してくれて、俺は殺されずにすんだ。桃香とニーナちゃんはつかみ合いを続けている。


「どうしたの?」

 千紘姉さんの声が背後でする。千紘姉さんはセーラー服姿。帰ってきたばかりのようだ。


「姉さん、桃香とニーナちゃんのテストの点数が悲惨なんだよ」

 俺は振り返って、助けを求める。


 千紘姉さんはテーブルの前に立って、答案を見下ろす。

「あらあら、すごい点数ねえ」


 俺が聞いている話では、千紘姉さんの成績は平均よりもちょっと良いくらいだ。千紘姉さんは塾に通ったこともないのに、よくやっていると思う。


 それに栄養のほとんどがJカップの爆乳に使われているしな。胸の大きな女は頭が悪いなんていうのは偏見だと言われそうだが、千紘姉さんに限っては影響があると思う。

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