3 ニーナちゃんの悩み
「ひっく……ひっく……ごめなさい」
ニーナちゃんが泣き出して、両手で顔を覆う。
「いったい何の病気なの? だ、大丈夫だよっ 俺がいくらでもお金を使って、ニーナちゃんの病気を治してあげるからっ」
俺もうろたえまくり。
「わたし……ひっく……わたしは……」
「うん、何の病気でもどんと来いだよ」
「初潮がまだ来ないのです」
「は?」
「初潮が来なかったら、わたしは赤ちゃんを産めないのです。ゆきとさんと結婚する資格がないのです。うあああああ」
ニーナちゃんはベッドに倒れ伏して、この世の終わりのように泣き出す。
「えーと、初潮って、アレだよね。女の子に毎月生理が来るってやつの最初のやつ」
保健体育で習ったね。女の子は赤ちゃんを産むために体が変わっていくのだ。
「うう……お嫁様候補で初潮が来てないのはわたしだけななです。あいも来てるのに」
「待って待って。そんなに重大なことなの? ニーナちゃんの年だったら、まだ来てないものだったりするんじゃないのかい?」
「15才で来てなかったら遅いのです。わたしはダメな子なのです、ひっく」
ニーナちゃんは身長140センチで、小学生に見える。発育が遅れているのは認めざるをえない。
「お医者さんは何て言っているのさ?」
「うう……先週から血液検査とかをして、特に異常はないので、いつか初潮は来るでしょうって」
「……アバウトだな。不安になるけど、お医者さんがそう言うなら大丈夫でしょ」
「診察が間違っていて、わたしに初潮がずっと来ないかもしれないのです、ひっく」
「ニーナちゃん、泣き止んでよ。俺は大丈夫だと思うから」
「ゆきとさんに悪いのです……ゆきとさんの子供が産めないとお嫁さん失格なのです」
「うーん、俺は別に子供が産まれなくてもいいんだけど……」
「わたしはゆきとさんの赤ちゃんを産みたいのに産めないのです。ぐすっ」
ニーナちゃんは嘆き続ける。
「おーい、ニーナちゃん。ほんと大丈夫だって、そのうち初潮は来るし、来なくても問題ないよ。俺はもっと重大な病気かと心配したんだ。隠していることは他にないんだよね」
「ぐす……ないですが……」
「だったら、気にしないでよ」
「わたしはダメじゃないのですか?」
ニーナちゃんがベッドから顔を上げて、指で涙を拭う。
「ダメじゃないよ。俺は子供はいなくてもいいじゃんて思うから。子育てって大変そうじゃん」
「でも、子供はかわいいのです」
「そうかもしれないけど、子供とニーナちゃんのどっちかを選べって言われたら、俺はニーナちゃんを選ぶよ」
「ほんとうですか?」
「うん、しょせん子供なんて大きくなったら家から出て行っちゃうんだし。お嫁様だったら一生一緒にいてくれるでしょ」
「いっしょがいいです、ゆきとさんと」
ニーナちゃんが立ち上がって俺に抱き着いてくる。
「よしよし、ニーナちゃん、そのうち初潮が来るかもしれないし、焦らずいこうよ」
俺はニーナちゃんを抱きしめて、背中を撫でてやる。
ニーナちゃんはツルペタだし、頭一つ分以上の身長差があるのでエロい気持ちにはならない。
「うう……ゆきとさんにすてられたくないのです」
「捨てないよ」
「ゆきとさん、やさしいのです」
「ずっとやさしくするから、心配しないで」
「ひっく……ゆきとさん、だいすきです」
「俺もニーナちゃんのことが大好きだからね」
初潮が来ないことをニーナちゃんはものすごく深刻に思っている。つまり、それだけニーナちゃんは俺のことが好きっていうことなんだ。
女の子に軽々しく大好きなんて言っちゃいけないんだけど、俺もニーナちゃんの気持ちに応えたくなった。
「うわあああ」
ニーナちゃんが俺の胸で号泣。
俺としてはニーナちゃんがもっと重大な病気なのかと心配したから、ホッとしている。
落ち着くまで泣かせてあげるくらいは余裕。
「ぐすん……ひっく……」
「よしよし」
10分くらいして泣き止んだニーナちゃん。
「ゆきとさんは、わたしの全てを受け入れてくれるです。しあわせなのです」
とてもいい笑顔を見せてくれた。
ニーナちゃんはかわゆいな。
初潮が来ちゃったらこのかわゆさが失われてしまうんじゃないか……
俺としては正直なところ、ニーナちゃんはこのままでもいいと思った。
「ニーナちゃん、ありがとうね。俺に正直にお話してくれて」
「わたしこそゆきとさんにお話しして良かったのです。なんだか気が楽になったのです。ありがとうございますです。眠れないくらい不安でいっぱいだったですから」
「はは……俺のお嫁様になるために、そんなに悩んでたんだ……」
苦笑してしまう。
でも冗談じゃなくて、ニーナちゃんが鬱病になりかけていたのを阻止できたんだろう。
ニーナちゃんの悩みを受け止めることができて、仲がますます深まった感じ。怖かったけど思い切って話を聞いて良かったよ。




