14 没落令嬢かわゆい
「まだバトルロワイヤルは開始前ですからね。駆け引きの開始は会場に全員集合してからですよ」
「わかりました。出過ぎたまねをして申し訳ありません」
素直に謝る麿莉奈。
本来、麿莉奈は上級国民って奴なんだろうけど、えらそーにしないところは好感が持てる。
「というわけで、幸斗様、あなたは御池電機の生殺与奪の権を持つ絶大な資産家です。無能なオッサンどもが失業して、阿鼻叫喚する様を眺めて楽しむも一興。上に立つ者はそれくらいの豪胆さも必要だと、おじい様はおっしゃっていました。些末なことに心を動かされることなく、バトルロワイヤルをお楽しみ下さいね」
氷室さんは俺に帝王学ってのを引き継がせようとしているようだ。オッサン3万人の生活が些末ですか……
でも無能ばかりなら、ほんとに潰してもいいんじゃんという気分にさせられてしまいそう。
世の中にはブラック労働で老害に苦しめられている若者がいっぱいいるらしいからな。今までいい目を見てきたんだし、ざまぁ見ろかもしれない。
う、うむ……
麿莉奈の境遇に同情しないようにしなくちゃ……
俺には千紘姉さんがいるんだ。
しっかし……
孤児院育ちで虐げられてきた俺が、いきなり上に立つって無理があるんだけど、おいおい気持ちを切り替えていかないといけないのかよー
さっきは庶民を見下すなって言ってたのに。
じいちゃんの教育方針は両極端をあわせ持てってことで……難しいな。
「ウチが思うに、ぼんやり学生生活を1年間送るよりは、幸斗さんとセレブ生活する方が楽しいんやないでしょうか。バトルロワイヤルの会場はタワーマンションの最上階、いわゆるペントハウスらしいですから」
麿莉奈が気を取り直したように、はきはき話す。
「そ、そうなんだ」
この児童養護施設でやるわけじゃないんだな。
俺を含めて6人の同棲を、他の人間に邪魔されないようにするってことか。
ますますリアル恋愛バラエティっぽい。
5人のJKとタワマンの最上階で暮らす……JKを囲っているみたいで、なんかものすごく背徳的な感じがするんだけど、いいんだろうか……
「幸斗様も高校生ですから、JKとお付き合いすることについて青少年保護育成条例上の問題はありません。そもそも結婚を前提とした真面目なお付き合いですし。もちろん女の子の保護者の同意も得ますから誘拐罪にも問われません」
弁護士が言うと説得力あるなあ。
「ええと、俺は引っ越さないといけないってことなんですね?」
「はい。あなた方が慣れ親しんだこちらの施設から無理やり引き離すのは気が引けるのですが、おじい様の遺言ですのでご了承を」
氷室さんが言う「あなた方」は俺と千紘姉さんを指している。
「い、いえ、いつか施設は出ないといけないですから。早めに切り上げられてうれしいです!」
オンボロ施設を出られるは正直なところ、嬉しさ9割、寂しさ1割といったところだ。
税金泥棒と罵られることもなくなる。
悲喜こもごも思い出の詰まった施設ではあるが、どうせ高校卒業までしか居られないし。
千紘姉さんと一緒ならどこにでも行く。しかもタワマンだなんて、とても優雅な響きじゃないか。
「ご了承ありがとうございます。エントリーする女の子で唯一、3年生の千紘さんは18才になられています。法律上は保護者の同意なく、ご自身の意志で決められますからね!」
「緻密すぎますよー」
参ったね。
お嫁様バトルロワイヤルは、氷室さんによって全てが合法的に周到に準備されるようだ。
「なお、おじい様はこの児童養護施設に10億円の寄付をするようにと遺言されています。この後で手続きしておきますから」
「おお! いいですね!」
「この崩れそうな建物は新築に建て替えられるでしょう」
氷室さんが応接室の中を見渡している。
一番上等な部屋でも、ぼっろぼろだもん。
「俺を育ててくれた施設に恩を返してくれて、ありがとうございます」
ますます後を気にせず去れるというものだ。千紘姉さんも納得する。
「では今日のところはこれで失礼いたします。会場の準備ができましたらお迎えに上がりますから」
氷室さんが立ち上がる。
麿莉奈が立ち上がって笑顔を向けてくる。
「ウチ、明日からの学校生活がとっても楽しみやわ」
京都弁って、かわいいと感じてしまった。
こんなかわゆい子が同級生……てか、俺のお嫁様候補なんだな。
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