37 美少女姉妹に好かれる
◆◇◆
それから俺たちは金沢大学病院にお見舞いに寄った。
デートプランにはないアドリブだし、デートの日にお見舞いにはいかないものだと思う。
でも俺は水族館デートを考えてくれた柚子香ちゃんに御礼を言いたかった。
柚子香ちゃんの病室は、俺の資金援助によって最上級の個室である。
「よっ 柚子香。元気してるか」
桃香が明るい声で入っていく。
「お姉ちゃん。あっ 幸斗さん!? ペアルックだ」
ベッドで身を起こしている柚子香ちゃんが驚く。俺が行くとは連絡していなかった。さっそくペアルックを指摘されて恥ずかしい。
柚子香ちゃんは病院服を着ている。でも酸素マスクをしていないし、以前ほどチューブが繋がれていない。顔色もいいし、薬が効いて良くなってきているんだと実感する。
「突然やって来てごめん。水族館デートに行ってきたよ。柚子香ちゃんが考えてくれたんだってね。ありがとう」
「い、いえ……幸斗さんに御礼を言われるようなことではないですよ」
「お姉ちゃんなぁ、柚子香がゆきとと水族館デートをしたがってたって言っちゃったよ」
桃香がニヤニヤする。
柚子香ちゃんの顔が、かああああっと赤くなった。
「お姉ちゃん、ひどい。内緒なのにー」
「いやー ゆきとにはバレてるって、柚子香もゆきとが大好きってこと」
「……俺は鈍感系だから気づいてなかったがな……」
「ほら、お姉ちゃん。言っちゃダメだよ。私は重すぎるから、ゆきとさんに迷惑だよ」
「大丈夫だよ。ゆきとはマジでやさしーから」
「ああ、俺には柚子香ちゃんが重いなんてことはない。難病に負けずに戦っている柚子香ちゃんを俺は心の底から尊敬している」
「幸斗さん……」
顔を赤くしている柚子香がかわゆい。桃香に似て顔立ちが整っている。髪型をおしゃれにして、ワンピースとか着て、化粧もちょっとしたらSランク美少女になりそうだ。
「な、ゆきとは、あたしたちのことを全部受け止めてくれているだろ」
「うん……ありがとうございます」
柚子香ちゃんが涙ぐんで、指で目元を押さえる。
「困ったことが合ったら何でも俺に言ってね。俺にとったら柚子香ちゃんは家族も同然だからね。遠慮しないで」
俺のお嫁様候補の桃香にイチャラブしてもらっているからね。妹の柚子香ちゃんも家族ってことで差し支え無し。
「柚子香がゆきとに世話になる分は、お姉ちゃんがご奉仕しとくからな。任せといて」
桃香が誤解を招くことを言っているが、スルー。
「で、では……あ、あの……厚かましいお願いなのですが……」
柚子香ちゃんがうつむいて、おずおずと話す。
「ん? 何でも言ってよ」
「わ、私がもっと元気になったら……私とデートしていただけませんでしょうか?」
柚香ちゃんは真っ赤な顔を上げて言い切った。
びっくりした。
でも、とてもうれしい。
「こちらこそ、柚子香ちゃんとデートさせてください」
俺は一生懸命に告白してくれた柚子香ちゃんに恭しく答える。
「ほんとですか!?」
ぱあああっと明るい顔になる柚子香ちゃん。
「うん。楽しみしているよ」
俺は勝手に柚子香ちゃんとデートの約束をしてしまう。
いつになるかわからないし、実現するかどうかはわからない。
実現しても俺のお嫁様候補は誰も怒らないだろう。みんな心から柚子香ちゃんを祝福してくれるはずだ。
「柚子香、治療を頑張れ。ゆきとがご褒美にどこでも連れてってくれるぞ」
「うん。私、頑張る。私も水族館に幸斗さんと行きたいから……」
柚子香ちゃんは涙をこらえきれなくなった。両手で顔を覆う。柚子香ちゃんの願いは、病院から2時間ほどの近くの水族館に俺と行くことなのだ。
ささやかすぎる願い。それすら叶えることが柚子香ちゃんには難しい。けなげな柚子香ちゃんの思いに打たれて、俺は今後も全力で柚子香ちゃんを支えてやろうと思う。
「死亡フラグにはしないでくれよ」
俺は軽口を言っておく。俺は柚子香ちゃんが治ると信じているから。
「……ううう」
柚子香ちゃんが泣いている。
「良かったなあ柚子香。ゆきとは、柚子香もゆきとを好きでいていいってゆってたぞ」
「ごめんなさい……大好きです、幸斗さん」
顔を手で覆ったまま柚子香ちゃんが呟く。なぜ謝る?
「……照れるな」
美少女姉妹に好かれるって、ドキドキするね。
「柚子香、あたしの水族館Tシャツ、洗って持ってくるからな。柚子香も着て、ゆきととペアルックだ」
桃香が柚子香ちゃんを励まそうとしている。桃香は妹を大事にする良い子だよ。
それから俺たちは面会時間が終わるまで、水族館デートの話を柚子香ちゃんに聞かせてやった。
柚子香ちゃんがとってもうれしそうな顔をしてくれたのを見て、俺は寄り道して良かったと思った。
桃香と柚子香ちゃんと俺の3人で幸せな気分になれるのっていいね。桃香と俺の2人だけで楽しいことをするよりも、柚子香ちゃんも幸せな方が、俺は充実した気分になった。




