18 優等生にざまぁする1
◆◇◆
俺たちは今岡駅前のミスドーナツに歩いて移動する。雨は止んでいる。
このミスドはイマイチ高生のデートスポットである。駅前の人通りの多い場所で、ガラス張りの店内は丸見え。
カップルが付き合っていることを他の生徒に見せびらかすのに、これほどの場所はないのだ。
ゆえにこのミスドに一人で入るイマイチ高生はいない。
カロリー多そうだとか、不飽和脂肪酸が体に悪い、とディスる奴も多い。だが、みんな内心ではいつか彼氏彼女とミスドで食べたいなぁという野望を抱いているのだ。
俺はついに千紘姉さんと憧れのミスドに入ることができる。しかも手を繋いで。
「いらっしゃいませー」
女の店員の声が心地よい。
今日は土曜日で、学校がやってないからイマイチ高生に目撃されるってことはあまりない。部活の子が通り過ぎるくらいだろうけど、感無量である。
俺はオールドファッションとホットコーヒー。千紘姉さんはポンデリングとアイスコーヒー。2人ともミスドが初めてなので、何を頼めばいいかわからなかった。予めスマホで定番のを調べておいた。
トレイを持って、隅のテーブルに着席。
ちょうど3時だから、おやつだ。
「これがドーナツか。俺たちにとっては異世界の食べ物だね」
「幸斗のおかげで食べられるよ、ありがとうね」
しみじみ感謝されてしまう。
たかがドーナツなんだろうけど、されどドーナツなんだよ。
俺はオールドファッションを手に持って噛み付く。
「うまい」
さっくりした食感。砂糖の甘みが広がる。
「もちもちしてるわー こんなの初めて」
千紘姉さんがポンデリングを口にして笑顔。
コーヒーをすする。熱い。
だがドーナツで甘ったるくなった口を引き締めてくれる。
「ドーナツとコーヒーってよく合うな」
「ほんと。おいしいわぁ」
俺は千紘姉さんが喜んでくれて満足。俺を楽しませる課題デートだけど、俺としては千紘姉さんこそ楽しんでほしい。
幼い頃からずうっと千紘姉さんの世話になっているから、恩返しできた気分。
「いらっしゃいませー」
店員さんの声。
入口の方を向くと……男が1人と、女が3人入ってきた。全員私服だが、高校生くらいだ。
ん、メガネかけて七三分けの髪型の男に見覚えがある。誰だっけ……
あっ――
同じ中学校の金田塾行だ。学年で一番勉強ができた奴。といっても親が塾通いに廃課金しまくったからだと言われていた。
成績がいいことを鼻にかけ、将来は医者になると公言していた。親は開業医じゃないんだけど。
俺のことをバカだの、孤児院だのと見下していた。性格に大いに問題のある奴だ。
金田は市内にある進学校の今岡高に行った。日本の偏差値教育ってのは成績のいいゴミを量産する制度だな。
もう二度と会うことはないと思っていたが、まさか出くわすとは。まあ、同じ今岡市内に住んでるからこういうこともあるか。
金田は、女の子3人分のドーナツ代も払っているようだ。男は金田1人だから、ハーレム状態だな。と言っても女の子3人はせいぜいBランク。
俺はSランク美少女5人と同棲しているから、カケラもうらやましくはない。
金田と女の子は俺の隣のテーブルにやってくる。
「おや、どっかで見た顔と思えば、孤児院じゃないか」
金田が俺の横に座ってから、ニヤニヤして話しかけてくる。
千紘姉さんも児童養護施設育ちなのを知らないんだろうけど、失礼にもほどがある。
「ふん、久しぶりだな」
俺はぞんざいに答える。
「孤児院がドーナツ買う金をどこで手に入れたんだ。万引きでもしたんだろう。この社会のゴミが」
金田が吐き捨てる。そして千紘姉さんをチラッと見た。
「幸斗、こちらの方はどなたなの?」
千紘姉さんが金田に警戒の目を向けている。
「僕は今岡高校2年の金田と申します。あなたはどこかで見覚えがありますが……ああ、中学の先輩ですね。孤児院なんかと一緒にいちゃいけませんよ」
金田は俺が紹介するまでもなく、ペラペラとしゃべる。
「私も幸斗と同じ児童養護施設で育ったんですけど」
千紘姉さんがぽつり。
「う……そ、そうだったんですか……とにかく、あなたのような素敵な先輩が孤児院、失礼、幸斗なんかといちゃいけません。ぜひ僕とご一緒に」
「私は幸斗とデート中ですよ」
「うそっ!?」
金田が驚いて、千紘姉さんと俺を交互に見る。釣り合わないと思っている。
デートじゃなくてなんだと思ってたんだ? 姉さんが俺に施しをしているとでも思っていたのかな。
俺の千紘姉さんをナンパしようとするなんて、むかつく。金田の野郎を懲らしめてやりたい……




