IFルート 秘密ドールズ(プラム)
到達条件
・ナタリアからオリビアへの好感度が一定以下。
・第九十四話開始までにプラムからナタリアへの好感度を最大まで上げる。
・第九十六話でホワイトサラマンダーの完全再生を阻止する。
・第九十八話でアロルドを転移させずその場で完全に殺す。
以上の条件を満たすと第九十九話中でプラムの魔導核に言及するときに選択肢が出現するので『俺が何とかしよう』を選択する。
厚めのカーテンを閉め切った部屋の中は日中でも薄暗い。今している事は人に見られたくないし、している相手にもあまり見られたくない。
椅子に座り、エプロンを外し、はだけた胸元にプラムの小さな唇が吸い付く。
凄く恥ずかしい。
だが俺のそんな気も知らずに、プラムは開いた装甲から魔導核の魔力を吸い取る。
「んっ」
身体の一番重要であり敏感な部分を刺激される。椅子に座っていなかったら腰が砕けていたかもしれない。
「お姉様?」
プラムが見上げてくる。声を漏らしてしまった俺を心配してくれたのだろうか。
「大丈夫です。続けなさい」
「……はい」
続きを促すとプラムは再び顔を埋め、魔力を吸い始めた。更に舌を入れ、発生した魔力粉まで舐め取る。
時折響く水音が俺を変な気分にさせた。
どうしてこんな事をしているかというと、プラムに魔力を与える為だ。
プラムの手足は修復が完了したが、充分に稼動させるだけの魔力精製能力を持つ魔導核が用意出来なかった。そもそもホワイトサラマンダーほどの素材はなかなかあるものではない。
なので今は精製型と蓄積型を併用して、停止時に魔力を蓄えつつ外部からも補充出来るようにしている。アナベルもプラムも保有魔力はそこまで多くないので俺も協力しているわけだが、俺の魔力が一番蓄積しやすくなっているのは予想外だ。アナベルの見立てではどうやらホワイトサラマンダーから引き剥がす時に俺の魔力パターンを身体が覚えてしまったらしい。
しかしそれでも一日に五時間程度しか稼動出来ないし、俺も毎日来れるわけじゃない。オリビアが学園を卒業したらクリスティナと進路が別れるわけだから、それまでに他の方法でプラムの魔力を確保しなければいけない。
いや、アテはあるんだ。ただその方法で上手くいく保証は無いし、俺自身にも大きなリスクがあるというだけで。
「お姉様」
呼ばれて俺は思考から意識を戻す。
「もう良いのですか?」
「はい。既に充分な魔力を蓄積したと判断します」
だがプラムは黙って俺を見上げるだけで離れようとしない。
不思議に思っているとプラムは身じろぎをするようにしてくっついてきた。
「どうしました?」
尋ねるがプラムは応えない。
真っ直ぐ見詰めているが、俺の目を見ているわけじゃない。もう少し下のような―
不意に、柔らかいものが唇に触れた。
それがプラムの唇だと理解したのは、既に離れた後だった。
「元気が出るおまじないだと、ルリさんが教えてくれました。お姉様が何か悩んでいるようでしたので試してみましたが、いかがでしょうか?」
頭の処理が追い付かない俺に、プラムは何の事も無さそうに告げる。
「そ、そうですか。ありがとう、プラム」
またルリの入れ知恵かよとか、そういう事を軽々しくするなとか、色々言いたい事はあったけど、今は俺を気遣ってくれたプラムに笑顔を返す。
「喜んでいただけたようで、何よりです」
あ、プラム、今笑った?
そうだ。今更何をビビッてるんだ。俺はプラムの姉じゃないか。何も躊躇う事なんて無い。
上手くいくか解らないなら上手くいくように研究すれば良いじゃないか。
目を開けると、天井の灯りがやけに眩しく見えた。
俺は一糸纏わぬ姿で、アナベルの研究室の中央に設置された大きな作業台の上に横たわっている。手術を髣髴させる状態だが、実際人間に置き換えると手術に相当するだろう。
顔を横に向けると、俺と同じようにプラムが居た。
「再起動したようね。でもまだ魔導核が本調子じゃないから無理に動かない方が良いわよ」
手術を施したアナベルがいつもの薄ら笑いで俺を覗き込む。
「アナベル先生、結果はどうなんですか?」
「ふへっ、勿論成功よ。ただプラムが目覚めるのにはもう少し時間が掛かるでしょうけどね」
「そうですか。良かった」
今回アナベルには俺の魔導核を分解し、その中身の半分をプラムに移植してもらったのだ。
おそらく俺が精製出来る魔力は激減するだろうが、もともと普段から魔力を有り余らせているので特に問題無いだろう。プラムも俺の魔力に馴染んでいたのだから、素材としての相性も魔力量も充分な筈。
後は魔力が充分に精製されるのを待つだけだ。
「あの、ナタリアさん、プラムの為にここまでしていただいて、本当にありがとうございます」
内心胸を撫で下ろしていると、控えていたクリスティナが感極まった様子で涙を溜めていた。
「いえ、姉として妹の為に出来る事をしただけですから」
「妹ねぇ。まぁ、貴女が良いならそれで良いんだけど」
俺が元人間だと知っているアナベルが意味深長に呟く。
確かに本来なら俺とプラムとは何の関係も無い。設計を基にしていて同じ神経糸を使ってはいるが、だからと言ってそれを人間の血縁関係と同じと考えるのは無理があるだろう。
それでも俺はプラムを妹だと思っている。この感情に乏しく、でも真面目で頑張り屋な人形を可愛いと思っている。たとえ作り物だったとしても、プラムという存在は本物だ。
だから俺はプラムの姉でありたい。元男としてはちょっと複雑な気分ではあるけど。
長い時が過ぎた。かつては樹海の中に建っていたオフィーリアの屋敷は長い年月をかけ樹海が切り開かれ道が整備された結果、バメルの郊外という位置になった。
その屋敷にプラムがやって来たのは、オリビア達が魔法学校を卒業してから六十年後の事だった。主の最期を看取り、自由になったので俺の元に来たのだと言う。奇しくも俺も同じ状態だったので、プラムが来てくれて気がまぎれた。
そして更に時が過ぎた。
ガーデランドの屋敷の一室で、プラムは錬金術の実験をしていた。
クリスティナの生前から身体の改造を重ねていたプラムは、今ではナタリアと完全に同じとは言えないがよく似た容姿をしている。
「異常は無し。しかし反応も無し」
プラムが視線を向ける先にはベッドの上に横たわる姉の姿があった。
昔は睡眠を必要としなかったナタリアだが、数年前から徐々に稼働時間が短くなり、ついに目覚めなくなってしまった。
プラムはクリスティナだけでなくナタリアやアナベル、果てはオフィーリアの研究資料を漁り原因究明に努めているが結果は芳しくない。どれだけ調べてもナタリアの身体に異常は見られないのだ。
ナタリアは完全な眠りにつく前に、自分が異世界から転生した元人間の男である事、稼働時間の減少はそれに起因するかもしれないという事をプラムに話していた。
「たとえ身体が人形でも、魂は人間のまま。だから停止する時はきっと魂の寿命なのだと、そう仰っていましたね」
その時のナタリアは悲しそうで、でも何処か満足そうだった。
思いがけずに得た異世界でのセカンドライフは充実していた、楽しかったと、歩くのもままならなくなりながらも語る姉は、命の無い人形だが確かにこの世界で“生きた”のだと、プラムは確信していた。
でも、だけれど―
不意にノックの音が響く。
「失礼します、メイド長」
扉を開けて入ってきたのはこの屋敷で働くメイドだった。だがその容姿を見えれば、彼女が人外の存在であると解るだろう。最初はナタリア一人だったガーデランド家のメイドだが、今ではかなりの大人数が仕えている。その中には人の形をした魔物も少なくない。
「先程お嬢様から三日後にお戻りになるとご連絡がありました」
「そうですか。ではお出迎えの用意と、夕食には上質のお肉を用意しましょう。バメルへ食材の搬入手配を出しておきなさい」
プラムはこの屋敷で働くメイドを統括する立場にある。以前はナタリアが勤めていた役職を引き継いだのだ。
そしてこの屋敷の当主の座もオリビアの血も、今なお受け継がれている。
「それと直接ご確認いただきたい案件があるのですが」
「解りました。すぐに向かいますから先に行っていなさい」
指示を受けたメイドが恭しく一礼し退室する。
プラムは気配が遠ざかるのを確かめた後、物言わぬ姉の顔を覗き込んだ。
肩で揃えられた癖の無い銀髪に、長い睫毛、瑞々しい唇。自分とよく似た、しかし決して手の届かない美しさがそこにはあった。
自身の最期に対してナタリアがどう思っていたのか、プラムには解らない。何処か意地っ張りなところがある姉の事だ。弱音を口にするのを良しとしなかっただろう。だから遺された者は生前の言葉を尊重し、悲しみを乗り越えていくのが最大の手向けになる筈だ。
だが、それでも―
「お姉様、私は」
もっと傍にいてほしかった。
もっと沢山の事を教えてほしかった。
もっと頭を撫でてほしかった。
もっと名前を呼んでほしかった。
双子と見紛うような姿になったが、それでもやはりプラムはナタリアの妹だった。
魂が死んでいるのなら、たとえどれだけ身体を直しても二度と動く事は無い。たとえ動いたとしても、それはもう“姉”ではない。
解っているのだ。
解っていても、諦められないのだ。
「これは私の、叶う事の無い、愚かな我侭です」
せめてほんの一瞬目を開けて、名前を呼んでくれれば、それでいい。
そう願う事こそが、今の自分に心があるという証明なのだから。
プラムは身を屈め、永久に眠る姉と唇を重ねた。
「元気が出るおまじない。帰ってきてからまたしますね」
身を離したプラムは気持ちを切り替え、メイド長として今日もガーデランド家を取り仕切るのだった。
END
色々悩んだ結果プラムENDはこういった形になりました。
現在IFを書いた二人は共にロリ(ミールは成人だが体型はどう見てもロリ、プラムは完成から1ヶ月で見た目は完全にロリ)
ナタリア「俺はロリコンではありません。好きになった相手がたまたまロリだっただけです」
などと供述しており―
プラム「ところでお姉様がもともと男性なのでしたらおねにーさまと呼んだ方がよろしいのでしょうか?」
ナタリア「その呼び方を教えたのはルリですね。ちょっとお仕置きしてきます」




