第8話 幼馴染が一人とは限らない。(4)
あけましておめでとうございます。本年も宜しくお願いします。
◇◇◇
「いや、それはさすがに告ってきた男子がちょっと気の毒だわ。想いを伝えようと思ってる相手が男連れてきて、しかもそいつの名札がついた服を着てるって発狂するだろそれ」
「いや、発狂はしないだろ。メンタル弱すぎかよ」
教室に戻って瑛太に事情を話していると、告白する前に振られた茶髪くんに同情した咲があきれ顔で俺たちを見てきた。
だいたい、俺は第一印象から気に食わなかったんだ。明らかに生まれつきでない茶髪で、耳にはピアスの穴も開いていた。
あんなチャラ男が琴葉に関わってくるだなんて、忌々しいことこの上ない。どうせ自分が告白すればコロリと落ちるとでも思ってたんだろう。なにせ、俺みたいなフツメンとは違ってイケメン様だしな。
「私のことをちゃんとに好きな人は、私がいつもゆーくんと一緒にいることを知ってるよ。だから、そういう人たちは告白の時にゆーくんが立ち会っていても、多少驚きはするけど文句は言ってこないよ」
「まあ、あのチャラ男はいつも琴葉が俺と一緒にいるってことも知らないくらいにしか琴葉を見てなかった軽い男だったってことだな」
「いや、それでも普通は告白の場に男に立ち会われたら怒るけどな」
せっかく話をまとめようとした俺の鼻をくじくように、瑛太がやれやれと俺たちにジト目を向ける。
「お前ら、本当に付き合ってないんだよな?」
「あぁ。大の仲良しだけどな」
「両想いだけどね」
俺と琴葉の言葉を聞いて、瑛太と咲は二人してため息を吐いた。
ダメだよ。幸せが逃げちゃうよ!
二人が一向に幸せを吸い直す気配がないので、俺は調子に乗って続ける。
「親公認だけどな!」
「兄妹も公認だけどね!」
「うるっせぇ! いつまでも惚気んな!」
「あんたの方がうるさいわよ。それよりさ、ずっと思ってたんだけど、二人はなんで付き合わないの?」
キレて怒鳴った瑛太に冷たい視線を送った咲が、心底不思議といったように訊いてきた。
「なんでって…なぁ」
「ねぇ」
俺たちは顔を合わせて、一息つくと口を開く。
「だって、俺たち超仲良しだし。わざわざ付き合うまでもないっていうか」
「うん、そのうち結婚するだろうしね」
「え?」
「え?」
目が合って、一瞬時が止まった。
「いや、それならむしろ付き合うでしょ!」
「まあ、人それぞれということで」
納得いかないらしい咲だが、俺はなんとかまとめようとそんな曖昧なことを言う。
あれ? もしかして俺、今プロポーズされた?
ふとそう思って琴葉を見ると、彼女は黙って微笑んでいた。
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