剣と魔法
「ではまず私からお見せしますね」
そう言って玲奈は自分のステータスを出し、奏太に見えるようにした。
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名前/御堂 玲奈
種族/獣人(狼)
年齢/15
レベル/1
職業/無職
HP : 30/30
MP : 20/20
物理攻撃力 : 50
物理防御力 : 30
魔法攻撃力 : 20
魔法防御力 : 30
敏捷 : 70
スキル 俊足 嗅覚 見切り
称号 ー
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なかなかにバランスが取れたステータスだがやはり自分のステータスは初期にしては高いんだなと奏太はやっと実感した。玲奈のステータスは高い方である。そもそも冒険者学校に今回選ばれたメンバーは他の人と比べステータスの能力値の高さやスキルの豊富さ、そして現在確認できている中で強力だと確認されているスキルを保持している者が集められているのだから玲奈のステータスが悪いわけがない。
「ほ〜、ステータスもスキルも近接系な感じだなぁ。玲奈ちゃん剣道やってるしダンジョンでは剣を使うの?」
「はい、そのつもりです。剣道やってますから、多少は戦えると思うんですけど…」
「いやいや、おやっさんから聞いたよ? 全国大会ベスト8だったんだってな! すごいじゃないか! それだけの腕前があればダンジョンでも活かせるって!」
「そうだよ! 玲奈はもっと自信持っていいってあたしいつも言ってるでしょ? 玲奈はすごいんだからね」
奏太と美緒に褒められ照れたように膝と膝をすり合わせモジモジとしながら顔を赤らめた。
「そ、そうですかね?」
「大丈夫だって! な? 親っさん?」
「ああ、もちろんだ! 何たって俺の娘だからな」
それでもまだ自信なさげに玲奈が聞いてくるので奏太と店主が勇気付けるように玲奈にいった。
「はい…ありがとうございます」
玲奈がはにかんだ笑顔で返すなか、彼女の銀色の毛並みをした耳がピョコピョコと動いていた。奏太の目線はそのピョコピョコ動く犬耳に釘付けだ。ちなみに彼女の尻尾は今奏太には見えないがブンブンと振られている状態である。
「そう言えばさ、やっぱり玲奈ちゃんも親っさんと同じ狼の獣人なんだね?」
「あっ、はい。なんでも親と子供は同一種族になるらしいです」
「ほう。じゃあスキルにある嗅覚や俊足って親っさんも持ってたりする?」
「ああ、持ってるな。どうやら種族スキル見たいなものみたいだ」
「なるほど。親子はそういうとこも一緒になるんだな〜」
奏太のその言葉に対して美緒が手を上げ、待ったの声をあげた。
「あたしはママはあたしと同じで種族はエルフだけど、パパは種族人間だったよ」
変革の日で変わったのは美緒と美緒の母親だけだった。だから美緒の家庭は父親だけ種族が人間なのである。ただし、美緒の父親も大層なイケメンだが。
「へ〜、種族は両親で違うこともあるのか」
「はい、母親の種族が人間で父親の種族が獣人の場合子供はどちらかの親と同じらしいです。他の種族同士の話しでも同じように子供は両親のどちらかの種族と同じになっているとのことですよ」
玲奈は奏太に補足情報を伝える。テレビやニュースで割と報道されているが奏太はまだ知らなかったようだ。
「そうなんだ。カズのとこがカズも奥さんも子供も同じ種族だったからてっきり家族は同じ種族になるのかと思ってたよ」
そう言ったあとふと奏太は自分はどうなんだと考えが頭の中によぎった。
(そういや電話で聞いた俺の母の種族は人間だったなぁ。なんで俺は人間(?)なんだ? 父親…か?)
自問自答するが答えは出ない。というのも奏太の父親はすでに他界しているし、父の親族とは縁がなく連絡先等も知らないからだ。
「ま、結構同じ種族の人同士が夫婦になってるらしいわよ? ネットじゃ相性がいいから、なんて言われてたりするみたいね」
「ほう、そういうものか」
(みんなどこかそういうところで惹かれあっているのだろうか?)
奏太は見えもしないのによくもまぁ、生命の神秘だなと片手を顎に当て、感心するように頷いた。
「で、でも! 違う種族の人も結構多いらしいですよ! だから同じ種族同士だから相性がいいとかそういうわけではないみたいです!」
「そ、そっか」
どこか必死に訴える玲奈に驚いた。また奏太に対して距離を詰めてくるのだから腰が引けてしまう。いくら昔からの顔なじみであるとしても綺麗な女子高生にこんな間近に詰め寄られてしまうとドキドキしてしまう。おまけにシャンプーの香りなのかやたらいい匂いがふわっと香るものだから、奏太は顔を赤らめらないように必死だ。35歳のおっさんが屈するわけにはいかないのだと気合を入れて耐えている。
思わず目を反らすと二ヒヒッといたずらが成功したような笑顔を美緒はこぼしているのが見えた。どうやら玲奈と奏太のやりとりを楽しんで見ていたようだ。
「まぁね〜。やっぱ比率でいうと種族が人間のままの人が多いからさ。人間同士の夫婦が一番多いんだってさ〜」
「なるほど。そりゃそうだな」
取り繕うように美緒が付け足した情報に奏太は思わず納得してしまった。姿に変化があった人の話はよく聞くが全体で見れば変化が起きていない人の方が多いのは街を歩いていてもわかるくらいだ。
「それじゃあ、次はあたしの番だね」
そう言って美緒はステータスを表示させ、見せてきた。
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名前/柚月 美緒
種族/エルフ
年齢/15
レベル/1
職業/無職
HP : 20/20
MP : 50/50
物理攻撃力 : 20
物理防御力 : 20
魔法攻撃力 : 60
魔法防御力 : 40
敏捷 : 50
スキル 精霊魔法 直感 治癒魔法
称号 ー
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「苗字は柚月なんだね」
奏太はステータスを見てまず苗字を確認してしまった。名前はさっきから聞いていたのでわかっていたが苗字をちゃんと知ったのはステータスでだ。それに対して美緒は指で頰をかきながら答えた。
「あ〜、そう言えばまだちゃんと自己紹介してなかったね。あたしは柚月美緒、中学生時代に何度かお店で顔合わせてたから知ってると思うけど玲奈とは中学で知り合って友達になったんだよ? 今じゃ大親友! ね?」
「うん」
玲奈が頰を少し赤らめながらも嬉しそうに返事を返した。二人のそんなやりとりを見て奏太の心が温まる。引っ込み思案だった玲奈にも親友と呼べる友達ができたようで安心した。
奏太は気を取り直して美緒のステータスを確認するとそのスキルに驚いた。
(”精霊魔法”…魔法)
「美緒ちゃんは後衛タイプのステータスみたいだね。それにしても魔法…か。ちなみに魔法ってもう使ってみた?」
「う〜ん、精霊魔法は使ってみたんだけどライターの火を出すくらいのことしかできなかったんだよね。なんでも精霊は街にはあまりいないらしくて自然豊かな森とかダンジョンの中とかだともっとすごいことができるって聞いたから。ダンジョンに入ってみてからじゃないとよくわからないね」
「ほう、精霊魔法はそういう制約があるのか…」
「そうみたい、それと治癒魔法についてはまだやってないんだ。魔法を使うためだけに怪我をするのもやだったし」
「ああ、まぁそりゃそうだな。たまたま怪我した人と出会ったりしないかぎり実証する気になれないか」
「うん、だから怪我したら言ってくれれば治したげるわよ? 実験も兼ねてね」
美緒がウインクしながら言ってくるのに対して奏太は苦笑いしながら答えた。
「できればダンジョンで怪我とかしたくないものだけどなぁ」
奏太は思わずため息をついた。毎回無傷でダンジョンから帰ってこれるとは思えなかった。
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