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疑問の正体

すみませんが少し前話を修正しました。もうすでに前話をお読みの方は一度前話のラストの部分を読み直して頂けると幸いです。

本日(5/6)の16時時点で前話を読んでいない方はそのままお読みください。

 入店を知らせるベルの音とともに入ってきたのは綺麗な長い銀髪と特徴的な犬耳を頭に生やした玲奈だった。そしてその音に引き寄せられるように扉の方を振り向いた奏太と玲奈の視線がぶつかる。


「「あっ…」」


 奏太と玲奈の目と目があい、お互いに声を漏らした。


(なるほど…銀髪・犬耳美少女の正体は玲奈ちゃんだったのか〜)


 びっくりはしたものの奏太は違和感の正体がわかり、頭の中のモヤモヤが解消されてスッキリした気分になった。


「おかえり玲奈。 飯作るからお前も座りなさい。ほらソウちゃん、お待たせ。ご飯のお代わりが欲しかったら言ってくれよ?」

「お、ありがとうおやっさん」


 店主の声に奏太は前に向き直り、定食が乗ったお盆を受け取る。


 今日の日替わり定食は白いご飯になめこ汁、胡瓜のお新香と沢庵が乗った小皿に菜の花の胡麻味噌和えが盛られた小鉢、そしてメインのチキン南蛮。狐色の衣の付いたチキンは一度特製の甘辛ダレにつけられているので照り輝いている。その上に奏太の好きな葵屋自家製のタルタルソースがたっぷりとかけられている。一緒にレモンとプチトマト、キャベツの千切りが添えられており野菜もきちんと取れるボリューム満点な品だ。


「ほら、あとウーロン茶だ」


 日替わり定食はソフトドリンクまでついてなんと1000円。ご飯のお代わりも無料だからとても満足できるのだ。


(いや〜、来てよかった〜)


 奏太は定食に目を向け嬉しそうに目を輝かせた。


「どうしたの玲奈? 立ち止まったりして」

「あ、ごめんなさい美緒(みお)


 玲奈の後ろから可愛らしい女の子の声が聞こえた。どうやら玲奈は友達と一緒だったらしい。玲奈は同じ学校のしかも前の席に座っていた男子が店にいるのに驚いて入り口で立ち止まってしまったようだ。そして彼女は彼の存在が気になっていた。彼の持ち合わせる雰囲気と彼の()()が。

 そして先ほどこの店の店主である玲奈の父は彼をなんと呼んだか? そんな疑問を頭に残したまま、外で待っていた友達の美緒を玲奈は店に招き入れた。


「あ〜! あんたあのナンパ野郎じゃん! なんで玲奈の家の店にいるわけ!?」


 店に入った美緒は奏太の姿に気づき、目を丸めた後、奏太を指差し大きな声で言った。


「み、美緒? 落ち着いて、彼の家が近くなだけかもしれないわ。それにさっきお父さん彼のこと…」

「そんなわけないでしょ! きっと玲奈が気になって家に押しかけてきたんだわ!」


(少女よ…決めつけはよくないぞ?)


 と内心で奏太は呟きながら、チキン南蛮が冷める前に食べようと箸をチキンにのばした。すると前からものすごいプレッシャーとともに恐ろしい声が聞こえた。親っさんだ。


「ナンパ野郎? 何? ソウちゃん、君、玲奈をナンパしたのかい?」


 奏太が前を向くとクリアブルーの瞳にくっきりと黒い丸の瞳孔が浮かび上がり、鋭い犬歯をむき出しにしていた。


(親っさん! 目が怖いよ! 瞳孔が、瞳孔が! 牙むかないで! 何その牙? 狼だっての納得しちゃったよ!)


「いや! 親っさん! ちょっと待ってくれ! 誤解だ!」


 奏太は手を前に突き出し、待てとジェスチャーしたあと説明をしようとした。


「え? ソウちゃん? やっぱりソウちゃんだったんですか?」


 すると奏太が説明する前にパタパタと玲奈が奏太の元へ駆け寄ってきた。可愛らしい動作だがその速度はびっくりするほど速かった。そして玲奈が奏太の顔を確認するために自分の顔を近づけてきた。奏太は下手したら自分の娘と言っていいくらいの年齢の美少女に”ソウちゃん”と呼ばれるのは気恥ずかしいと思っていた。しかしそれこそ彼女がまだ幼い頃から奏太のことをそう呼んでいたので呼び方を変えてくれとも言えずにいたのだ。


(近い! 近いよ!)


 奏太はそれに驚き、顔を遠ざけるように体をそらした。そうして玲奈は納得した顔をして言った。


「話した時の仕草と座席表に書かれた名前でもしかしてと思ってたんですけど…。やっぱりソウちゃんでしたか…」

「まぁ…ね」


(あ〜そうか座席表に名前書いてあったっけな〜。親っさん達の苗字忘れてたから気づかなかったわ)


 苦笑いしながら奏太がなるほどと心の中で頷いているといつの間にか近くにきていた美緒が奏太の顔をまじまじと見つめた後疑問の声をあげた。


「え? 何言ってるのみんな? ソウちゃんって…確かおじさんじゃなかったっけ?」

「ぐっ…」


 その玲奈の悪気のない言葉に奏太の胸にぐさっときた。思わず胸元を抑える。わかっている。自分など彼女たちの年齢からしたらもうすでにおっさんでしかないのだと。奏太自身、自分のことをおっさんだと思っているし否定はできないがそれでも可愛い(少なくとも見た目は)女子高生におっさんと言われると傷つくのだ。


(少女よ…。おじさんの心は割と繊細なんだぞ?)


 奏太の心は泣いていた。もう土砂降りだ。どうやら本当に繊細らしい。社会のストレスとは別方面の痛みで耐性がなかったらしい。


「ああ、ちょうど俺もそれを聞こうとしてたところだ。その制服の意味も含めて…な。とりあえず、玲奈も座りなさい。美緒ちゃんもよくきてくれたね。食べてくんだろ?」

「あっ、はい、おじさん。お邪魔します」


 そう言って二人はカウンター席に着くのであった。


 そこで奏太はやっと気づいた。美緒ちゃんとは中学から玲奈の友達となった子で、前に玲奈が嬉しそうに奏太に美緒のことを話していた。それに何度かこうして顔を合わせていた子だ。長い黒髪を頭の後ろでまとめ、ポニーテールにしていた玲奈に負けず劣らずの端正な顔と吊り目がちょってキツイ印象を与えるが、コロコロとよく変わる表情が愛らしい子だったなと。

 それが今じゃ金髪碧眼透き通るような白い肌、そしてピョンと尖った長い耳を持つ幼いながら美貌を感じるエルフだ。奏太がわからなかったのも無理もないだろう。今の奏太より背が高く170cmくらいはあるだろうすらりとしたモデル体型をしている。とある部分もすらりとしているがまぁこれから育つかもしれないなと目線をそらしながら奏太は思った。

読んでいただきありがとうございました。


面白いと思っていただけたらブクマ・評価などを頂けると作者のモチベに繋がります。


よろしくお願いします。

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