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ボーイ(?) ミーツ ガール

やっとヒロイン登場です。


※少々おかしなところがあったため修正をしました

「はぁ…」


 思わず奏太の口からため息が漏れた。


 斎藤と二人で飲んだ次の日に郵便受けを覗くと都立冒険者学校から入学通知が来ていたのだ。そこからの展開は不思議なほど早かった。間違いじゃないか封筒に書かれた宛先に電話するも間違いないと言われた。そして今回のこれは政府としても特例中の特例で拒否権はないとのことだった。会社に電話するとすでに政府から連絡があったようで首とまでは行かないまでもしばらくは休職扱いになるとのこと。もちろん給料は出ない。

 奏太としては正直納得できないが都立冒険者学校に入れば補助費が出ると学校の職員に言われたこと。そしてダンジョンで得たものを冒険者協会売り報酬を得ることができるというので奏太は自分の生活のために泣く泣く冒険者学校に入学することを決意したのだ。


 奏太はそこで回想するのをやめ、周りを見渡す。”都立東京冒険者学校”創立初の入学式と言うことで様々なメディアが押し寄せているし、さらには大勢のお偉いさんが出席している。日本全国の都道府県で同じように冒険者学校ができているという。テレビやネットでも大いに騒がれているので情報は嫌でも耳に入ってきた。ここまで強行的に実施される理由は世界中でスタンピートを止めることができず、魔物に地域を占領されたということがあるからだ。この日本でも人口が過疎化していた地域が魔物に占領されてしまったくらいだ。


(本当に…なんで俺ここにいるんだろう? そしてここ本当に日本か?)


 奏太が周りの生徒を見渡すと赤・青・金といった様々な髪の色、ケモミミやら尻尾が生えている人が大勢いた。なんの変哲もない日本人という感じの生徒は四分の一より少ないのではないだろうか。奏太自身は瞳の色が赤くなっていたものの他は特に変わっている部分はないのでネットで買った黒のカラーコンタクトを付けている今おかしなところはない。奏太は現状に上手くついていけず痛む頭に耐えながら式が終わるのをまっていた。


 ♢


「あの〜、前進んでますよ?」

「え?」


 奏太が気づかなぬうちに入学式が終わり、今は生徒が教員に誘導され教室に向かっているところだった。どうやら現実逃避をしていたせいで全然式の進行状況を把握できていないようだった。


「あっ、すまん」


 そう言ったあと奏太は先に前に進んで行った生徒の後を慌てて追いかける。新品のシューズが体育館の床と擦れキュッキュッと鳴った。


(まずったな〜、初っ端からうっかりしてしまった。目立たないようにしようと思ってたのに)


 体育館から出たところで後ろの女の子に話しかけられた。さっき移動が始まってるのを教えてくれた女生徒だ。


「あの…大丈夫ですか? 式の最中もぼんやりしていたようですけど…」

「ああ、大丈夫大丈夫! ごめんね、心配かけて」


 奏太は女生徒にとっさに謝ったのちその子の浮世離れした容姿を見て驚いた。白い肌に整った顔、瞳は青く髪の色は銀色で艶やかなロングヘアー。そしてなによりとても綺麗な毛並みの犬耳が頭からぴょっこり生えていた。胸もこの歳にしてはそこそこありそうだ。


(うわっ! すっごい綺麗な子だな〜)


 その子のあまりの綺麗さに奏太は驚いたがそれと同時にどこか頭に引っかかるものがあり、思わずその女の子の顔をまじまじと見つめながら首を傾げてしまった。


「どうかされましたか?」


 その女生徒は不思議そうな目でこちらを見つめ質問してきた。


「ん〜? どこかであったことありましたっけ?」

「え?」


 女生徒が不思議そうにそして少し驚いたように目を大きく開いた。そしてその子の後ろから別の金髪をした目つきが鋭い女の子が現れ、奏太に注意するように言った。


「ちょっと、何あんた? こんなとこでナンパ?」

「え? あ! すみません、なんでもないです!」


 そう言ったあと奏太は教室へ急いだ。奏太の内心は動揺でいっぱいだった。


(うわぁ〜、しくった! 目立たないようにしようと思ってたのに確かに今のじゃナンパだよな? 恥ずかしい! にしても綺麗な子が多すぎるわ! あの犬耳の子もだけど金髪の子も可愛かったな〜。 あの子はエルフかな?)


 そんなことを考えながら教室の中に入る。事前に配布されていた資料から奏太の所属は1ーFつまり一年生ということだ。そして黒板に貼ってあった座席表を見て自分の席を確認しいそいそと席についた。周囲の初々しい雰囲気に馴染めず。奏太は必死に自分の気配を消すかのように周りを気にしてホームルームが始まるのを待った。


 しばらくするとこのクラスの担当だという教師が教室に入ってきて来週の月曜日のことについて軽く説明があったあと今日は解散ということになった。


 ホームルームが終わると生徒達がお互いに交流を深めるように賑やかに話し出した。そしてそこから奏太に関しての話し声が聞こえる。


「ほらあいつ、入学早々ナンパしてたぜ!」

「おっ、やるな! で、誰にだ?」

「ああ、御堂にだ」

「ああ、わかる! 御堂はここら辺じゃ美少女って有名だったからな〜」

「おまけにあの日の変化でさらに美少女になったしな! いや、あの犬耳は神だね!」

「まぁ、今のところ誰が告っても撃沈してるがな!」

「ははっ、てかあいつじゃ御堂に吊り合わなくね?」

「ちげ〜ね〜な!」


 楽しそうに男子生徒達がこちらを見ながらゲラゲラと笑っている。いたたまれない雰囲気だ。奏太の胃がキリキリと痛んだ。後ろの席には先ほどの女生徒がいるのだから辞めてほしいと奏太は切に願った。


 どのタイミングで帰るか奏太は思案していた。気にしないようにしていたが後ろの席は先ほどの銀髪・犬耳の女生徒だ。どうやら席は名前順らしく入学式と同じで彼女が奏太の後ろの席だったのだ。奏太の勘違いかもしれないがなにやら先ほどから後ろにいるその女の子がこちらに話しかけたそうなオーラを放っている気がする。


「あ、あの…」


少女が勇気を持って声をかけようとしたところで茶髪に黒い犬耳を生やし、もともとあった人間の耳にピアスを複数つけたチャラめの男子が遮った。


「なぁ御堂? これからみんなでカラオケ行くんだけどさ。お前も来ないか?」


 彼に続いて彼の友達と見られるチャラそうな連中がやってくるのを見て、奏太の中で面倒ごとに巻き込まれる前に退散しようという意思が固まり、カバンを持ってそそくさと教室を出て行く。こんな若い子達にカラオケとか誘われても困るし、誘われなかったら誘われなかったで胃が痛くなりそうだからだ。


「あ、あの…ごめんなさい。私は…お家の手伝いがあるので」


 最後に後ろから聞こえたその声にやはりどこかで聞いたことのある声だなっと奏太は思いながらしれっと退散させてもらうのであった。



 ♢



 奏太は電車に乗り自宅の最寄駅で降りた。お昼時ということもありお腹が空いていたのでどこかで外食しようかとも考えたが今日は土曜日ということもあり、駅前は多くの人で賑わっており、騒がしかったため駅前の店で食べるのは断念し、おとなしく家路についた。


 しかし、奏太は家に帰る途中にいい匂いがしてふと足を止めた。その香りの元は個人経営の料理屋である葵屋だ。落ち着いた一軒家のような佇まいをしていおり、一階は食事処、二階は店主一家の居住スペースとなっている。帰ってから自分で作るのも正直面倒だし、美味いものを食べたい。それに…


(そういえばこの姿になってから色々あってまだ一度も入っていなかったな〜)


 奏太は世界変革の日から今までこの店に足を運んでいなかった。正直気疲れで仕事以外あまり外を出歩きたくないと思っていたのでここ最近は飲み屋に出かけたのも斎藤とこないだ飲んだときくらいが最後だった。

 さて、今日の日替わり定食はなんだろうかと店前の立てあるボードを見ると、そこには綺麗な文字で本日の日替わり定食 ”チキン南蛮”と書かれていた。


(おっ! チキン南蛮じゃん! やった!)


 これは奏太がこの店で最も好きな定食メニューだ。これは寄ってくしかないと彼は決意し、扉を開ける。


 “カランカラン”という音がしたあと威勢の良い店主の声で出迎えられた。


「いらっしゃい!」


 店内は8人程度が座れる広めのカウンター席と奥にある4、5人が座れるくらいの座敷しかない。この時間は座敷は使えず、カウンター席のみとなっている。こぢんまりとしているが清潔感があり、シンプルだが味のある家具や雑貨がいい雰囲気をしている奏太お気に入りの店だ。


 まだ時刻は11時半といったところで客は奏太の他には70代くらいのお爺さんしかいない。そのお爺さんも奏太と同じくこの店の常連の一人でよく知っている人で名前を松本昭三(まつもとしょうぞう)、皆んなは松爺(まつじい)と呼んでいる。

 彼は日替わり定食のチキン南蛮を食べながらまだ昼だというのにすでに焼酎を飲んでいるようだ。70代にして真昼間から酒と揚げ物をいくとはまだまだ元気なようだ。


「空いてる席へどうぞ〜」


 奏太はカウンター席の右端から二番目の席に座る。ここが奏太のこの店のお気に入りの席なのだ。店主の髪や眉毛などといった毛の色が白く見える。店主にも変化があったようだ。席に着くなり奏太はとりあえずいつも通りに店主に声をかけてみた。


「親っさんお久しぶり〜」


 店主は奏太の顔を見て、はて? という顔をした後奏太に言いった。


「ん? お客さん、前にも来てくれたことがあるのかい?」


(はぁ…まあそうかわからないよなぁこれじゃあ)


 一抹の寂しさを感じたあと奏太は苦笑を浮かべた。自分のことを説明しようと口を開きかけたがその時店主とは別の人物から声が上がった。


「お前さん…もしかしてソウちゃんかい?」


 店主は目を丸くし、もう一人の客である松爺の方を見た。


「松爺なに言ってんだい? ソウちゃんが学生服着てるわけないだろ? ボケたか?」

「おい、(しょう)ちゃん! わしゃまだまだボケとらんわい!」


 店主の名前は翔一(しょういち)といい松爺からは翔ちゃんと呼ばれている。


(え? マジで?)


 奏太は松爺が自分のことに気づいたことに驚きと嬉しさを感じて笑顔になった。


「よくわかったな松爺! 昼間っから酒飲んでる割に鋭いな!」

「ほほ、な〜にこれぐらい嗜みじゃい!」

「え!? 本当ソウちゃんなのかい?」

「ほれみろわしの言ったと通りだったじゃろう?」


 店主は驚愕の表情で、そして松爺は勝ち誇った顔をしていた。そして店主は奏太におしぼりと水の入ったグラスを渡しながら言った。


「驚いたな〜、顔も若返ったような感じだし…というかなんで学生服着てんだい?」


 当然の疑問である。店主と奏太は長い付き合いだし大体の年齢も知られているのだ。


「色々あったんだよ。…俺もさ」

「へぇ〜、あとで聞かせてくれよ」

「ああ」

「で、注文はどうする? 日替わり定食でいいかい?」

「ああ、日替わり定食でお願い。飲み物はウーロン茶で」

「だろうと思ったよ。ソウちゃんタルタル好きだもんな〜」

「いや〜、この店のタルタルは特別美味しいからな」


 お世辞じゃなくここのタルタルソースは自家製ピクルスと店主こだわりの新鮮で濃厚な卵が使用されておりとても美味しいのだ。


「ソウちゃんにそう言ってもらえると嬉しいよ!」


 そう言って店主が揚げ物の支度に入ったところで店主が頭にいつも巻いている藍色のバンダナの下から覗く髪の色が違うことが気になった。


「親っさん、その白髪はあの日の影響かい?」


 そう聞くと店主はいやいやと首を降って、手をこちらに待てという風に掲げた。衣を付けたチキンを揚げ油に投入したあと奏太の方を向き店主は言った。


「いや、これは銀髪だからな! 白髪じゃないからな!」

「へ〜」

「わしより、年老いて見えるわい」


 奏太のそっけない返事と松爺の言葉にショックを受けた店主はさらに説明する。


「いや、あの世界変革の日とか言われた日にな? この通り毛の色が銀色になっちまってよ。それとあまり飲食店だから外したくないんだけどよ…」


 店主はそう言いながらバンダナを外した。


「ほらっ、この通り、犬耳が生えてきやがったんだよ。種族的には狼らしいがな」


 店主の言う通り、店主の頭には綺麗な銀の毛並みをした犬耳が生えていた。店主は端正な顔をしており、よく似合っていた。その様子に奏太は笑いながら店主の言葉を聞いていた。


(ははは、必死だな〜。あれ? 銀髪と犬耳? なんかこの組み合わせ見覚えがあるような…)


 奏太は疑問に思ったものの気のせいかと頭をふる。店主はバンダナを頭に巻き直しつつ奏太に言った。


「学生服といやあ、今日玲奈の入学式だったんだよ。俺は仕込みがあるから行けなかったんだがな…」

「おお、そういえば今年から玲奈ちゃん高校だったっけ?」

「そうそう、制服がこれまたよくにあっててよ! いや〜カミさんににてますます美人になったよ本当に」

「へ〜、そういや剣道も強いんだっけ?」

「おう、全国大会ベスト8! 勉強もクラスで上位らしくてな! 親としては鼻高々だよ」


 店主の娘自慢を微笑ましく思いながら奏太は聞いていた。この店にはかれこれ10年くらい通っているので店主の娘の玲奈の小さい頃もよく覚えている。店で両親が働いている中、カウンターの右端の席で大人しく絵本を読んでいた。


「そういや玲奈が寂しがってたぞ。ソウちゃん最近なかなかきてくれなかったからさ」

「ごめんごめん、最近この姿を見てわかる通り色々あってさ。なかなか来れなかったんだよ」

「そうか、玲奈も制服姿を見せたいって言ってたからさ。また顔出してくれよ。今日は早く帰るかわからないからな」

「ああ、もちろん。玲奈ちゃんの制服姿楽しみにさせてもらうよ」


 奏太にとっても玲奈は娘のような存在で今も昔も懐いてくれており、自然と笑顔がこぼれた。


「そうそう、それにな。なんと驚くことに玲奈は最近話題になってる東京都冒険者学校に行くことになったんだよ!」

「へ、へ〜」


 聞き覚えがある学校の名前が上がり、奏太はビクッとしつつも平静を装って相槌をうつ。


「ダンジョンに潜ることもあるっていうから親としては心配もあるんだがよ。ん? そういえばソウちゃんの着てるその制服って…東京冒険者学校のじゃないか?」

「あ、ああ、そうだよ。と、ところで親っさんの苗字ってなんだっけ?」


動揺が隠せず、奏太のグラスを持つ手が震えた。


「うちか? うちは御堂だ」







 その時、店の扉が開きカランカランっと来店を告げるベルが鳴った。


「ただいま〜」


 その声の主を確かめるように奏太が扉の方を見るとそこにいたのはあの銀髪・犬耳の美少女だった。 

申し訳ありませんがクラスをDからFに修正させていただきました。

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