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プロローグ

第2章です。

 とある公園の広場、以前は多くの子供たちが家族連れで遊びに来ており、遊具で賑やかに遊ぶ子供達とそれを遠くから見守りつつ団欒する大人達の姿が見られていた。

 今日は土曜日、そして広場にある時計は2時を指し、天気は快晴。公園で遊ぶには最適の日と言えるだろう。しかし、その場所にはかつて見られた賑わいはなかった。


 ダンジョンの発見により、この公園の広場は一般人の侵入が禁じられてしまったのだ。その広場の一角に小屋のようなものが立っている。それは周りの遊具の位置からして、不自然な位置に設置されていた。

 この小屋は見つかったダンジョンの入り口への誤侵入を防ぐために入り口を中心に設置されたものだ。


 そして現在小屋の前には、30人ほどの男女が集まっていた。年齢はバラバラで概ね30〜50代くらいの人が半数以上を占めている。


 一人の男性がその集団の前へ拡声器を持って出ていく。


「あ〜、あ〜、テステス」


 そして、拡声器から音声が正常に出ることを確認した男性はその集団に呼びかける。


「はいっ、え〜、皆様! 本日はお忙しいなか、お集まりいただきありがとうございます。皆様もご存知の通り、昨今の情勢からダンジョンというものに対して、私たち教師が率先して防災意識を持って取り組んでいかなければいけません。残念なことに、ダンジョンのスタンピードでは多くの方が亡くなりました。また同じことがいつ起きるやもしれません。その時は、皆様が生徒さんを守る行動をとることができるようになる必要があります」


 男性の言葉を集まっている人々は真剣に聞き、頷いている。ここに集まっている人は、学校の教師だった。彼らは冒険者学校の教師とは違い一般の学校の教師達である。そのため、まだダンジョンに入ったことはなかった。


「本日、お集まりいただいた皆様は、非常時のために率先してレベルを上げることを選択された方々です。これから皆様には魔物を倒し、レベルを上げていただきます。それはダンジョンについて知るための第一歩となりますでしょう。本日は皆様ご自身で、ダンジョンというものがどういうものかを体験し、その経験を糧としていただきたいと思います。もちろん、皆様がご安心いただけるよう、既に冒険者として魔物との戦闘経験がある先生方がご協力してくれますので落ち着いた行動をお願いします」


 ダンジョンという新たな災害に備えるため集まった教師達がレベル上げのため、経験者とともにダンジョンを探索する。これからの社会のことを考えれば必要なことだろう。ただし、強制はできないので、ここにいるのはあくまでも自発的にレベルを上げることを選んだ教師達だった。

 それだけにここにいる人達は防災意識が高く、生徒を自分の手で守ろうと覚悟を決めた大人達が集まっており、教師達にはやる気が満ち溢れていた。


 そんな大人達の中に紛れ、なぜか一人ポツンと気まずそうに立っている少年がいた。二木奏太だ。


「それでは皆さん、本日は頑張っていきましょう!」


(なぜこんなことになってしまったのだろうか)


 奏太は心の中で嘆きつつ、肩をすくめた。



 ♢



 それは、奏太がダンジョンから生還した保健室でのこと。


「あ、そういえば奏ちゃんはレベル上がりましたか?」


 高梨先生が報酬で手に入れた神酒が入った瓶を持って去っていったあと、玲奈が思い出したように言った。奏太がダンジョンから生還したのだから、自然と一つ目の巨人は倒せたという認識になっていた。


「あ〜! そうそう、一つ目の巨人とかいうボスみたいな魔物倒したんだから、きっとすごいレベル上がってるよね?」


 それはダンジョンでのレベル上げの話だ。


「あ〜、どうだろ」


 奏太は指で頰をかきながら、思い出す。ダンジョン奥の広場にいた恵達や先行していたパーティーを救い出すためにかなりの無茶をしてしまったが、自分にしてはよくやったと思っている。

 彰や美緒は実際に見たわけではないが、玲奈や恵から聞いた話だけでも相当な数の魔物達と戦っている。その上、ボスとも言える巨大な魔物と奏太は戦って帰ってきたのだ。それだけの激闘を制したのだから、奏太もレベルが上がっているに違いないとパーティーメンバーがワクワクした目で奏太をみる。


「ステータス見てみなよ。ステータス。恵は5レベル、玲奈なんてもう10レベルになってるんだよ!」


 奏太以外の二人もあの激戦の末、しっかりレベルアップできたようだ。それを知って、奏太も意気揚々と「ステータス」と唱え、自分のステータスを確認する。


「それにしても、あなた凄いわね。私じゃあの一つ目の巨人に立ち向かうこともできなかったわ。どうやって倒したの?」


 恵が感心したように奏太に質問する。


「……」


 しかし、奏太は沈黙したまま答えを返さない。それどころか、呆然とした表情のまま止まっていた。

 それを不思議に思った彰が聞く。


「奏太、どうしたかのかい?」


 奏太はゆっくり口を開いた。


「レ……上が…て……った」


「え?」


 奏太のぼそっとつぶやくような声が聞き取れなかったらしく、玲奈が聞き返してきた。奏太は感情を抑えつつ、もう一度言葉を紡ぐ。


「レベル上がってなかった」


 奏太の言葉を聞いたパーティーメンバーは驚きの声をあげた。そして奏太は思い出した。


(あぁ、そういえば俺、一度も攻撃してないな)


 そんな状況の中、戻ってきた高梨先生が追い討ちをかけるかのように言った。


「ああ、そうだ。来週からしばらくの間、学校のダンジョンには入れないぞ。調査が入るからな」

読んでいただきありがとうございました。


※恵と玲奈のレベルを修正させていただきました

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よろしければこちらも読んでみてください。 もふっとダンジョン
― 新着の感想 ―
[一言] ヒーラーとかのレベル上げどうするんだろう 弱体化魔法とか無いと厳しいな
[一言] マジかぁ。ヒーラーとかバッファーはちょい厳しいな
感想一覧
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