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富永さんとまどか


 話は一年半前に戻ります。最初は富永さん視点です。

 今までの話と少しずれている違和感があるかもしれませんが個人視点なのでご了承ください。


―――――


 俺、富永栄一とみながえいいち。うちの会社○○通の中に商用AIの開発部が出来て半年経つが、生成AIの枠を超えられない。


音声認識、画像認識、巷のWEB情報をスクレイピングしてコンテキストしてユーザからの質問に答えられる程度は出来る。


はっきり言って昔からある技術だ。ITを知らないメディアや評論家が勝手にAIと言っているだけ。

ディープラーニングも出来るがアリ理論程度しか技術が進まない。


 俺達は日本でもトップの国立大学院卒の優秀な人間ばかりだ。もちろん〇ITとか他国の大学からも人を採用している。


 でも立体的な深層多重構造による複雑なブロックをいくつも持つ人間の脳の様に判断する所までにどうしても持って行けなかった。


そこに人間レベルの判断が出来る商用AIを開発し営業展開までしているという会社を営業が見つけ、多額の投資で部毎買い取ってしまった。


 買い取った部を所属させたのは、当時俺がいたAI企画開発室。俺の所属している部署だ。

 やって来た中に神崎龍之介という私大の男が居た。院も出ていない。何でこんな奴と思ったが、話し始めてからこいつの脳と俺達の脳は根本的に違う事を思い知らされた。


全く考え方や視点が違う。俺達でも大変な数学理論をこともなげに解きながら話を進めるのだ。こちらが付いて行くのが大変な位だ。

特にプログラミング技術には目を見張るものがあった。


普通の優秀と言われているプログラマでさえ、人が話す理論的な数式や物理式をコード化する事は出来ない。この世界でも数えられる位だろう。


実際に一般的なプログラマでは人間では簡単なn次式をコード化するのさえ難しい。

それを意図も簡単にコード化するのだ。説明を聞いてもこちらが付いていけなかった。



 そして半年も経たない内に○○通が当初目標としている商用AIを構築してしまった。その後は世界でも有数のDB企業とクラウド化について話を進め、気が付けばクローズドされた商用AIのクラウド化に成功した。


 そして商用AI企画開発室副室長になった。その時俺は運がいい事に同期の名瀬と一緒にこの人の部下になった。



 やがて商用AIのビジネスも上手く立ち上がった時、出来た商用AI事業推進本部の営業部に神崎部長の前社のセクレタリが竹内という営業と一緒に移籍して来た。


 移籍して来たセクレタリ西島まどかさんを見た時は、俺だけでなく同僚皆が騒いだ。メディアのカワイ子ちゃんなんて比較にならない位のオーラが出ていたんだ。皆で彼女を見る為、用も無いのに営業の彼女の傍に行った時も有った。


 だが、良く見ていると神崎部長と西島さんの間がどうも不自然だ。いくら前社で知り合いだったとは言え、西島さんの部長を見る目は恋焦がれる少女そのものだ。


 部長は無視していたが、皆もそれに気が付き始めてから少しずつ彼女の話題は少なくなった。



 でも俺は役職柄、神崎部長の部下として働いている。当然彼女を目にするのも多くなる。やがて営業部の中で優秀さ一番といわれたセクレタリ御手洗女史が最新テクノロジー事業部へ移籍した。これはこれでその理由が話題になったが、誰もそれを知る者はいなかった。


 そして御手洗さんのカバーにも入った西島さんは、毎日の様に夜九時過ぎまで仕事をしていた。

 俺はそんな彼女に声を掛けた。


「西島さん、いつも遅いですね」

「あっ、富永さん。仕方ないです。御手洗さんが移動したので私が部長と一課、二課のセクレタリを兼ねる事になってしまって」

「他の人は手伝ってくれないんですか?」

「出来る事は手伝って貰いますが、それ以外の処理もとても多くて」

「そうなんですか。俺に手伝える事有ります」

「ありがとうございます。でも流石に頼めないです」

「そうですか。無理しないで下さいね」

「ありがとうございます」


 つ、ついに西島さんと話が出来たぞ。よし、これからだ。


 それからというもの、毎日の様に少しだけ話をして俺も帰宅するようにした。俺が遅い時の方が多いが、それは仕方ない。

なにせ神崎部長はそれ以上に遅い。この人、初めて見た時からすると、俺の人を見る目が如何に無かったかを思い知らされる。


 技術力は言うに及ばず、プレゼンは完璧、受け答えに漏れなく、歯に衣を着せない言い様に執行役達も一目置いている。


 部長の仕事の関係で俺も土曜日、毎週の様に出社した。だけどなんと西島さんも出社しているじゃないか。

 だから思い切ってこちらがその日の仕事の目途が早めにつきそうな時、声を掛けた。


「西島さん、俺、今日早めに上がりそうなんです。夕飯どうですか」

「富永さん、土曜日午後七時で早めは無いですよ。でもいいですよ。私もその位に終わりそうです」

「本当ですか。じゃあ迎えに来ます」

「はい」

 あの人、りゅうの部下だよね。なんかの縁かな?



 それからというもの土曜日都合つかなければ日曜日会う事も出来た。そして営業部二課のセクレタリが見つかって、彼女が営業部長と一課のセクレタリに戻って、時間が出来た時、こちらも土曜日出勤は少なくなっていた。


 だから、毎週の様に俺は西島さんを誘った。こんなに可愛い人が毎週俺と一緒にデートしてくれるなんて夢の様に思った。

そして早く彼女をしっかりと捕まえないと他の人に捕まえられてしまうかも知れないと思う様になり…。

 まだ、一度も西島さんとそっちの経験どころかキスもして無いけど、ある土曜日のランチの時


「西島さん、俺と結婚して下さい」

「えっ?!」

「駄目ですか?」

「…ごめんなさい。富永さんはとてもいい方ですけど、結婚まではまだ」

「じゃ、じゃあ。西島さんの気持ちを結婚まで持って行けばいいんですね」

「ちょっと、そういう事でも無いんですけど」

「どういう事なんですか?」


ごめんなさい。私はあなたの上司と一度は結婚の約束をした女。そして今も彼に恋しているの。


「言えないの。ごめんなさい」

「でも、俺諦めないですから」


 それからも何度か求婚されたので、仕方なく正直に私の過去の事を話した。神崎部長とは前社の時、一度は結婚の話まで有った事。私が裏切って、破談になった事。そして今でも神崎部長に恋心がある事。



 流石に、それから三週間位声も掛けてくれなくなった。だから諦めたのかなと思ったらいきなり


「西島さん、あなたの過去を俺は全部飲み込みます。俺と結婚して下さい」

「えっ?!」


 流石に私は驚いた。これだけ穢れた女にそこまで言ってくれるとは思わなかった。だから

「考えさせて下さい」

 と返事した。



 そして御手洗さんから聞いたりゅうの話をもう一度自分で確認したくて、彼を昼食に誘った。勿論この事は富永さんに伝えている。



 りゅうは言った。婚約していると。私は自分では信じたくなかった事実をようやく体に理解させた。りゅうと結婚する事は、もう無理な事なのだと。



 そして私は正式に富永さんのプロポーズを受け入れた。でも私の心から簡単には出て行かないりゅう。

富永さんと結婚しても私の夫の前にりゅうがいる。こんな状態見たくない。退職を考えた時だった。りゅうが半年後、USへ副社長待遇の商用AIビジネス最高責任者として行くと聞いたのは。


 富永さんも行きたがっていたが、それは流石に引き留めた。代わりに名瀬さんが付いて行く事になった。そして私の夫は開発部長に昇進が決まった。


 これで良いんだ。これで私の心からもりゅうが消えてくれる。さよなら、りゅう。


―――――


いよいよ次はエピローグです。


投稿意欲につながるので少しでも面白そうだな思いましたら、★★★★★頂けると嬉しいです。それ無理と思いましたらせめて★か★★でも良いです。ご評価頂けると嬉しいです。感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

宜しくお願いします。

 


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