御手洗さんと夏休み
前話よりちょっと長いです。
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八月最後の週、夏休みを取る事が出来た。開発室のメンバーも順次取得していたので、立場的に俺が最後という事で気兼ねなく休める。
前後の土日を入れると九日間の休みだ。最初の土日は優香と過ごした。最近は、俺のアパートの部屋も段々彼女の食器や洗面所に彼女の物が置かれる様になった。ちょっとまだ気持ちが定まっていないので、あまり好ましくは思っていないのだけど。
そして今日は月曜日。御手洗さんと二泊三日の旅行に出かける日だ。これは思い切り割り切っている旅行だと思っている。
彼女とはそういう事もするだろうけど、別にその後付き合うとかするつもりはない。彼女は知らないけど。
彼女は東横沿線に住んでいるので、レンタカーを借りた所から近い中目黒駅で待合せした。
朝早いので普段込み合うこの道路も今は、空いている。車の中で待っているとガードになっている駅から彼女が出て来た。車を降りて手を上げると直ぐに気付いてこちらに寄って来た。
「おはよう、りゅう」
「おはようございます。御手洗さん。荷物は後部座席に置いて下さい」
しかし、女性と言うのは二泊なのに男の一週間分位あるな。
「分かった」
彼女が後部座席のドアを開けて大きな荷物を後部座席に置くと助手席に座った。
「一応、燃費を気にしてPHVにしました」
「へーっ、詳しく分からないけど静かでいいね」
「これから首都高三号線に乗ってそのまま東名に入ります」
「分かったわ。ねえ、りゅう。お願いがある。この旅行の時だけでも千賀子って呼んで」
まあ、気持ちはわかるけど。
「この旅行の時だけですよ。千賀子さん」
「さん。要らないんだけど」
「…………」
まあいいか。
池尻入路から入り、そのまま三号線を東名へ。この前優香を乗せた自分の車ではないが、二人で二千CC有れば、アクセルを足を乗せているだけでいい。取敢えずは巡航八十キロ。
用賀料金所を通過した所で千賀子さんが話しかけて来た。
「久しぶりに高速乗ったから緊張しちゃった。でもまだ空いているね」
「まあ、夏休みはもう終わりだし、商用車は、五、十日ではないのでそんなに多くないのがいいですね」
「土肥温泉でホテル予約している。途中水族館に寄る事にしているけどいいかな?」
「任せます。三島IC降りたらウナギ食べようか。ちょっと調べたら、三島神社の傍に有名なお店があるんだ。これは俺が予約している」
「ほんと!嬉しいなぁ」
りゅう、きちんと考えてくれているんだ。
途中SAで二十分位、休憩して三島市に入った。
少し早く着いたのでうなぎ屋専用の駐車場に入れて近くにある川を見ていると
「りゅう、見て鯉が泳いでいる」
「この辺は水が綺麗で有名だからね」
「そうなんだぁ。涼しそうだな」
「生活用水の入らない源流からの水だから結構冷たいんじゃないかな」
「ふふっ、真面目な事言うのね」
そんな話をしながら、うなぎ屋に行って待っていると順番が来た。中に入るとテーブルと座敷がある。俺達は座敷の方に案内された。
「りゅうは、どれ食べるの?」
「俺はひつまぶし」
「えっ、暇つぶし?」
「いや、ひつまぶし」
「ふーん」
メニューを見ながら
「これかぁ。私も食べてみようかな」
注文した後、周りをちらりと見ると観光客や会社員で一杯だ。やはり有名なうなぎ屋さんなんだ。楽しみだな。りゅうと一緒に居るだけでも嬉しいのに。
「千賀子さん、顔が緩んでいるけど」
「えっ、あ、ああ。りゅうとこうして居れるのが嬉しくて」
「そ、そうか」
話をしている内に注文のひつまぶしが来た。美味しそうな匂いが漂っている。しかし、これはどうやって食べれば。
「りゅう、これって」
「ああ、最初の一杯は、そのままご飯とウナギを食べる。二杯目は薬味とか自由に。三杯目は、それに出汁を掛けて食べるんだ。でも自分の好きで食べるのが一番だよ」
「へーっ、そうなんだ」
私は、取敢えず、ご飯と上に載っているウナギをお茶碗に盛り、パクリ。
「美味しい。りゅう、これ美味しいよ」
「そ、そうか。良かった」
彼女の声に隣のテーブルの老夫婦が微笑んでいる。ちょっと恥ずかしい。
二杯目は薬味を乗せて食べた。これも
「美味しい、うなぎとご飯に薬味が効いて堪らない味を出している」
「うん、美味しいな」
確かに美味しいが俺は三杯目が楽しみだ。
彼女は二杯目と同じにしたお茶碗に出汁を掛けた。
「こ、これは。東京で食べるうなぎより全然美味しい。味が口の中に広がって香が鼻から抜ける」
君は料理評論家か?
千賀子さんは綺麗に食べ終わると
「美味しかったぁ。りゅう嬉しいよ。こんなに美味しいうなぎ屋さんに連れて来てくれて」
「そうか、喜んでくれて嬉しいよ」
俺達はそれから三島大社を散策してから伊豆縦貫自動車道に乗った。
「りゅう、結構三島でのんびりしたから、水族館に寄るとホテルに着くのが夕方になる。水族館止めて直接行く?そうすれば砂浜とか歩ける時間ある」
「でも明日は一日中浜辺にいるんだろう?」
「そうだね。じゃあ、寄ろうか」
俺達は、途中水族館で一時間半位、のんびり見た後、そのまま下の道路で土肥温泉に行った。
千賀子さんが予約してくれたのは、結構有名なホテル。露天風呂付部屋で朝夕部屋食。これって結構するよな。まあ、今回は割り勘と言っているけど、いくらになるんだ?
案内された部屋からは海と海岸が見える。そして海の向こうにはなんと富士山が見えるという部屋だ。
部屋に案内してくれた仲居さんが、この部屋は、このホテルでも一番景色がいい部屋なんですよと言っていた。
しかし、疑問が一つあった。ベッドルームが無い。まさか…。いずれ分かるだろうけど。
「りゅう、取敢えず温泉に入ろうか。ここの露天風呂は景色がとてもいいって聞いている。
待合せは風呂の入り口前にある休憩所という事で男風呂の暖簾がぶら下がった扉を開けるとあまり人がいない。
まあ、月曜日だからなと思いながら露天風呂に行くと前面に大きく広がった景色が見える。これは確かにいいな。
温泉は単純泉の様で色は着いていない。しかし、緩く体を包み込む様な肌触りがある。来て良かったな。
一時間位のんびり入った後、風呂場を出ると、まだ千賀子さんは出ていなかった。傍に有る冷水を飲んで待っていると
「りゅう、ちょっと長くなっちゃった」
浴衣に長い髪の毛をアップしてうなじがしっかりと見えている。胸の膨らみで浴衣が思い切り浮き上がっていた。
顔が少しピンク色だ。
「ふふっ、りゅう、何処見ているの?」
「えっ、別に」
りゅう、私の胸、ガン見していたよね。夜が楽しみ。
部屋に入ってから、二人で瓶ビールを一本開けた。やはり入浴後の一杯は格別だ。千賀子さんの肌がほんのり赤くなっているのは気のせいか。不味いな乗せられている様な気がする。
時間になり食事が部屋に運ばれてきた。大きなテーブル(和膳)に乗り切れない位の量だ。伊豆の海の幸、山の幸がふんだんに盛り付けられている。
仲居さんにお酒を頼んでからテーブルに着くと
「凄いなこれ、全部二人で食べるのか?」
「そう見たい。私もちょっと驚いている」
「とにかく食べ始めようか」
千賀子さんが俺のグラスにビールを注いでくれた。その後自分のグラスにも注ぐと
「りゅう、楽しもうね」
「ああ、楽しもう」
「「かんぱーい」」
二人共見ても楽しめる料理に結構食欲を示して、ほとんど食べつくした。お酒も結構入っている。
彼女も日本酒を一合、白ワインを二杯飲んでいる。勿論その前にもビールを飲んでいる。俺は日本酒二合に白ワイン三杯だ。流石にお腹が一杯になった。
「ふう、食べたわ。仲居さんに下げて貰おうか」
「そうだな」
俺は備え付けの電話でお願いすると三人の仲居さんが来てあっという間に下げた。そして、今度は男の仲居さんと最初の仲居さんが二人でお布団を敷き始めた。
俺達はベランダ側で椅子に座ってそれを見ていると
「ふふっ、もう一度温泉に入る?勿論、この部屋についている露天だけど」
「えっ!」
仲居さん達は聞こえないのか、聞こえない振りをしているのか、敷き終わると失礼しますとだけ言って部屋を出て行った。
「りゅう、もうここまで来たんだから遠慮しないでね」
実際にこの場になると流石に躊躇する。
「しかし」
彼女は立ち上がると
「見て。ずっとあなたを待っていたのよ」
彼女はアルコールの力を借りているのか、浴衣を止めていた帯を解くと
「ふふっ、下着は付けているわ」
それも遠慮なく取った。俺は目を避けるどころか、ただ彼女の体をじっと見てしまった。
綺麗だ。張りのある大きな胸、しっかりと括れた腰、そして少し大きめのお尻。その姿のまま俺に近付いて
「りゅう、脱がせてあげる」
「いいよ」
「駄目。もう観念しなさい」
こういう状況だと女性のが強いらしい。ただ、問題なのは
「ふふっ、元気になっているわ」
もう彼女の目、顔が雌の女性になっていた。
思惑通りりゅうに抱かれたのは良かったんだけど、こんなにりゅうが上手いなんて。
優しく体全身をゆっくりと触ってくる。そして大切な所を優しくそして激しく…。
最初から思い切りいかされてしまった。何度大きな声を出したか分からない。隣の部屋に聞こえないと良いんだけど思いながら我慢出来なかった。
大学時代に知り合った男の比じゃない。あっ、また。
俺は朝の陽光で目が覚めた。隣には一糸まとわない千賀子さんが目を閉じている。この人は本当に綺麗な人だ。
体も素敵だ。酔った挙句あんな姿見せられたら正常な思考で居れるはずがない。完全に彼女の思惑通りになってしまった。
心配なのは、付けずに何回もしてしまった事だ。もし万一有れば責任を取らざるを得ない。
彼女の姿を見ているとまた元気になってしまった。少しだけ彼女の体を触っていると目を閉じたまま
「いいよ。りゅう。もう一度して」
「で、でも。昨日付けずに…」
「ふふっ、私も大人よ。しっかり飲んでいるわ。りゅうに初めて抱かれるのにあんなの付けて欲しくない。だから大丈夫。ねっ、来て」
もう一度した後は、もう午前七時になっていた。
「朝食、午前八時に頼んであるからもう一度温泉行こうか」
「そうだな」
朝のラウンドの後、三十分位して温泉から出てくるともうお布団は片付けられていた。
少しすると仲居さんが朝食を運んできた。またテーブルの乗り切れない位の多さだ。どう見ても普通の夕食分ある。
「さっ、りゅう、食べようか」
千賀子さんが嬉しそうに言った。
食べ終わると
「午前十時位に砂浜に行こうか。午後三時位まで砂浜にいて、その後は一度上がってから港とか散歩しよう」
「そうだな。それが良いかも」
千賀子さんはブルーの素敵なビキニだった。良く胸の部分が切れないなと思う位だ。
りゅうと一緒に海の中で遊べるなんて夢みたい。思い切り彼に抱き着きながら遊んでいる。
昨日と今日の朝も夢の世界に連れて行ってくれた。今日の夜も同じにして貰える。嬉しくてたまらない。
お昼は浜辺の海の家で定番のラーメン、おでんそれにビールだ。ホテルの料理が豪華すぎるだけにこちらも思い切り新鮮に感じる。
りゅうと素敵な時間を浜辺で過ごした後、一度ホテルに戻って、着替えた。私はTシャツに短パンとビーチサンダル。彼も同じだ。二人共サングラスをしている。
港を歩くと岸壁の直ぐ近くに小さな魚が一杯泳いでいる。私は海に落ちない様にりゅうの腕に摑まっていたけど、彼はそれを避けようともしない。大分触れ合いが慣れて来た。これも大きな前進だ。
「りゅう、見て見て。なんか色んな色の魚が一杯いるね。可愛くて綺麗」
「そうだな。とっても可愛いな」
「私とどっちが可愛い」
「へっ?!千賀子さんは綺麗だよ。そして素敵だ。ここの魚は可愛いけどさ」
「りゅう!」
周りの目を気にせずに思い切り彼を抱きしめてしまった。身長差があるので顔は彼の胸辺りだけど
「嬉しい」
「ち、千賀子さん。周りの人が見ている」
「いいの」
参った。こんな所で強引に引きはがすのもよくないしな。でも周りの人がニヤニヤしながら小声で何か言っている。
少ししてから
「もう、そろそろ」
「分かった」
それからホテルに戻って、外風呂の露天風呂に入って、部屋に戻って思い切りりゅうにくっ付いていた。
夕ご飯を食べ終わって、お布団を敷いて貰った後は、昨日と同じ様に二人で一緒に部屋にある露天風呂に入って、その後は、えへへ。昨日以上に思い切り…して貰った。夢の中にいるみたいだ。
そして翌日は、二人ともまだ夏休みという事も有って、城ヶ島経由で下田に抜けてのんびりと東京に帰った。
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