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シリウスの涙




「うっ……、うぅっ……、ぐすっ」


 クーは自分以外の泣き声に驚いて、泣き止んだ。


――いったい誰が泣いているんだろう。


 疑問に思ったクーが辺りを見回すと、地上を見つめ、大粒の涙をこぼす星がいた。

 彼はシリウス。太陽のいない空で、もっとも明るい星だ。


――あの・・シリウスが泣いている……。


 クーはびっくりして、おどおどしつつも、彼に声をかけた。


「シ、シリウス。だ、大丈夫? いったい、どうして、そんなに泣いているんだい……?」


 顔を上げたシリウスは、泣きすぎて真っ赤な目でクーを見た。


「……クー。今日は、地上でとても悲しいことが――たくさんの人が傷つくことが起こったんだ。」


 そう言うと、また、ポロポロと涙がこぼれ落ちていく。

 そして、シリウスは泣きじゃくりながら、話を続けた。


 大変なことに直面した人たちは、どれほど、苦しんだのだろう。

 どれほど、悲しんだのだろう。

 どんなに、辛かっただろうか。

 どんなに、打ちのめされただろうか。


 彼らのなげきを。

 そして、絶望ぜつぼうを。

 想像しただけで、こんなにも胸が痛い。

 実際に困難に直面した人たちの痛みは、いったい、どれほどのものだろうか。

 心を引き裂かれるような思いをしているのではないだろうか。


「そう思ったら、涙があふれて……、止まらないんだ……っ。」


 彼らを救いたい。

 彼らに、希望を与えたい。

 彼らが暗闇の中で立ち上がる、そのための力を与えたい。


「でも、自分には太陽みたいな、世界を明るく照らす力なんてなくて……。」


 シリウスはそう語ると、涙をぬぐった。


「でも、結局は、自分ができることをするしかないから……。

 泣いている人たちが見上げたその先で、自分が輝いていれば、少しは彼らの心の慰めになるかもしれない。

 そう信じて、もっと、もっと、輝くために、自分は頑張るんだ」


 そう宣言せんげんすると、彼は今まで以上に強く、強く、輝きだした。

 そして、そんな彼の目からはまたも涙がこぼれて、クーはあわてて小瓶で受け止めた。


 これで、最後の一つである「星の涙」が手に入った。

 クーは小瓶をそっと持ち上げ、驚きに目を軽く見開く。

 どうやら、小瓶の中の涙はほんのりと光っているようだ。

 その淡い輝きはなんだか優しく、暖かく――まるで月のようだった。


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