十七話 幽霊になった理由
「ちょっと待ってトキマサさん。ねぇ、貴女アキムラ・ライカって言った?」
「知り合いなん?ゼアミ」
「ええ」
女神の知り合いが悪霊とは世も末だな。
警察知り合いが泥棒だった時の衝撃感と同じ。
女神のゼアミの知り合いっ事はこの悪霊も元女神とかかな?
だとすれば凄い罰当たりな事をした。
(何?私の名前知ってるの?)
ライカさんはゼアミを覚えていない様にゼアミに聞き返した。
「何も何の。貴女を異世界に送ってあげたじゃないの」
(へっ?)
なるほどな、俺と同じ転生者か、納得した。
ゼアミが顔を知っていてライカさんが知らないという事に道理がある。
ゼアミにも人の顔を覚える記憶力があった事に驚きだが。
「あれって確かこの異世界での五十年前だった筈だわ。たまたま交代制の裁判官している時に担当したと思っていたのだけど忘れちゃった?」
めっちゃ昔の事覚えてるのではこの女神。
あと五十年前だって?ゼアミもライカさんも今何歳だ。
(あの時の女神様?)
ライカさんは思い出したのかゼアミを見ながらそう言う。
久しぶりに顔見知りに出会ったのか彼女を纏っていた黒い霧が薄れていく。
「確か、貴女は人形を操るスキルを与えた筈なのだけど合ってるかしら?」
(はい、合ってます。貴女から「人形好きなんだから人形を操って幸せに暮らせば」って言われて勝手にスキルを決められて転生されました)
なんだろう、想像してみると何処かデジャブが、俺の時とほぼ同じ。
「お前、昔から変わってねえな」
「う、五月蝿いわよ」
五月蝿いではない、結構問題だと思うぞ。
勝手にチートスキル決められて異世界転生させられるの。
例えるなら勝手に装備決められて無人島から脱出しろって言われているのとそう変わりない。
「でもどうして?確かに貴女は人形使いのただの人間だから死んじゃうのは当たり前だけど悪霊になるなんて」
確かにこれにはゼアミの言い分が合っている。
(それには訳がありまして)
そう言いながらライカさんは自らの過去を話してくれた。
ゼアミからチートスキル『人形魔術』を与えられた後出来る限りの人形を作りまくった。
その能力を用いて見世物やら催し物を行い拍手喝采の嵐に見舞われた。
そしてその名声は王国中に知れ渡りいつしかは王様御用達の娯楽を行う者になった。
利益を出していつしかはこの町一番のお金持ちになった。
悠々自適に暮らしていたがある時人形魔術の実験で失敗して死んでしまった。
「それは災難だったわね」
(はい)
これには可哀想に思わざるを得ないな。
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