十一話 西洋人形は可愛い
「オニイチャン、コワイ。オコラナイデ、コワイ」
俺が側から見れば加害しているDV男みたいになってる。
この西洋人形達は意外にも精神が弱かったのだろう。
まぁ見た目はただのか弱い乙女。
顔を伏せて掃除機を持ち大筆を構えた今の俺は怖いだろうな。
「これ、俺が悪いんか」
俺が攻撃され反撃すると言う普通の熱い戦いになる筈だったのにそれらも終わった後の図。
不戦勝で終わっているのでいい事なしだがなんかパッとしない。
とりあえず筆を構えるのはやめて戦闘開始状態を解く。
これでこの場の緊張度は100%から20%くらいにはなった筈だ。
手を膝に乗せ視点を低くして聞いてみる。
「お嬢ちゃん、大丈夫?」
「オニイチャン、オコッテナイ?」
「怒ってないし、怒る事されてないんだが?」
殺害予告ぐらいの脅迫されただけなので大丈夫だからな。
それって冷静に考えるとヤバいけど。
現代世界なら警察ものだしニュースものだ。
「ホントウ?オコッテナイ?ワタシタチ、イケナイコトバ、ツカッタノニ、オニイチャンタチ、トジコメタノニ、オコッテナイ」
「怒ってないで」
「私は怒ってるけどね!」
ゼアミが立場を人形より上だと判断したのか少し強めに言う。
人形達から見ればどうかは分からないが手足を震わせながら言われても説得力無いぞ。
そんな俺の背中に隠れて髪の毛だけ見えている状態。
ちゃんと顔を出して目を合わせて言ってくれないと俺が言っているみたいになるやん。
腹話術的な感じで俺が口動かしてる感じになる。
「ゴメンナサイ。ワタシタチ、ワルイコトシタ。ゴメンナサイ」
思っていた通り、ほらなった。
「そんなに縮こまらんでも良えんやで、俺の方が悪かったし、な!」
怒られて縮こまっている姿が飼い主に怒られている飼い犬に似ている。
元々子犬くらいの西洋人形だから罪悪感が湧く。
何回も謝られてるせいかこちらが悪い気がしてきた。
スカート捲りをした俺が完全に悪いし謝るのは俺の方なんだけども。
「デモ、トジコメタ。メイレイダッタトハイエ、ワタシタチ、ワルイ。ダガラ、アヤマル」
「ちょいと待て。命令やったん?誰がしたんや」
「イエナイ、クチガサケテモ。ワガイエノ、アルジダナンテ、イエナイ」
「言っとるやんけ」
口が裂ける前に言って閉まってる、順序が逆になってしまってるよ。
「ワルイコトシタ、オワビニ、トビラ、アケル」
人形が扉に向かって稚拙な指を動かす。
ガタッ
何やら鍵が空いた音が部屋と廊下に響き渡った。
ようやく、この部屋を出てサンサンを助けに行ける。
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