21話 属性が多すぎるメイド
「ニャーハオ。上位職の冒険者募集書から見にきたのだがここで合っているアルか?」
どこかで聞いた事あるような言語が俺の後ろから声が聞こえた。
一昔前に流行った中国キャラの台詞。
声がかけられて反射的に後ろを振り向く。
まさかこんなヘンテコパーティに入ってくれる冒険者がいるのか?
そう俺が見た相手。
第一印象は先を見据えているような目尻の尖った漆黒の瞳。
赤の生地に金の線が入った団子カバーと俗に言われるメイドの象徴ホワイトブリムを着け。
黒蜜に茶が少し混じった艶のある黒髪を後ろで三つ編みで包んでいる。
手首には金属製の籠手、足首には脛当てを着けている。
中華料理店でよく見るチャイナドレス姿にメイドのエプロン要素を取り込んでいる。
服からは年相応とは言えないほどの大きな胸をした中華娘が立っていた。
身長はゼアミより高く少し俺より低い推定150センチぐらい。
13から15歳ぐらいだろうか、手足ともに防具の下には包帯が巻かれている。
これがあれですかロリ巨乳とかいう萌えの権化ですか。
いやしかしロリはゼアミが属性として持っているのでどう判別すれば良い?
にしてもメイド&中華って、ヤベェぞ。職業が分からん。
「えっ、ええ。ここであっとりまっけど」
「チェチェン。では自己紹介するアル。一世の名前は三丰。サンサンと呼んで欲しいアル。【バーザーカー】の職を持ち、最強の拳法家兼メイドになる事を夢見る美少女ネ」
「それ自分で言うんかい」
自負するほど美少女ってな。
まぁ彼女が自負するのも無理はない。
現に美少女だし。
しかもゼアミが望んでいた上位職のうち【バーサーカー】である。
見た目に反して戦闘狂なのだろう。
そして一番肝心な部分を聞く。
「うん、ほいであれですか?パーティに入ってくれるんですか?」
「そうアル、そうアル。だから此処まできたアルヨ〜」
そう言いながらおれが書いた募集用紙を持った手をブンブン振り回す。
ありがたい、こんな二人しかいないパーティーの募集。
それに集ってくれる人がいたのは本当にありがたい。
時間をかけた甲斐があったと言うこと。
「あら?貴方ってまさか煌華民の娘?随分遠いところから来たのね。結構やるじゃない」
ゼアミが問うとサンサンは頷きながらゼアミに自身の身分証を渡す。
「ふふん。そうアル。伝説の拳法家と私の真のご主人を目指して三千里。旅の途中に餓死しそうになりながらもなんとか生還する生命力。私の拳は敵の胴体をも打ち破り、その気功砲は大岩をも散りと化すアル。そして郷土料理も作れる女子力も兼ね備えているネ。と、ここで自己アピールは終わりとしまして【バーザーカー】はいりませんか?私と契約してご主人様になって欲しいアル。そして少しお金を貸して頂けませんか、出来れば白米一杯でも。その面接&研修はその後でやりますから。お願いアル」
そう言ったあとサンサンはしゃがみ込み俺の足にしがみついて涙目で見てくる。
そして俺達にも聞こえるほどの腹の虫が切なく鳴いた。
おいおい、手始めに物乞いをしてきたぞこの娘は。
いや、将来仲間になるであろうこの娘を引き止められるならば飯代くらいどうだって良い。
しかもどっかの魔法少女の妖精の決め台詞を聞いた気がしたのだが。
その契約は今は仮契約ということで。
「君には飢餓を乗り越えられる生命力があるから大丈夫や…………っちゅうのは冗談。ほら好きなもの買うてきな」
そう言いながら銀貨を数枚渡すとその顔はパァと輝き出した。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「ありがとうアルありがとうアル。命の恩人。この御恩はいつか返すアルヨ。もぐもぐ」
「本当よ。トキマサ。久しぶりの牛丼、美味しいわ」
ドナドナウシの牛丼を頬張りながらお礼を言うサンサン。
ゼアミは牛肉を食べたいと言い少しお高めを選んでいた。
この女神本当に金がかかるな。
まぁ討伐依頼は今のところ彼女の犠牲があって行えているから文句はないが。
美少女二人が嬉々として牛丼を食う光景はよもや喜劇でしかない。
もう少し淑女というか品位が無いのか。
食べ盛りの娘たちにたくさん食べてもらうのは構わないのだけどそれでも。
二人が食っている間に俺は俺でサンサンの身分証を拝見していた。
個人情報は流石にプライベートの上女の子であるため。
俺もまた(変態)紳士の一人。
女性の身体のことに関しては見ないで能力値を見させてもらっていた。
「先ほどの事はトキマサさんに説明しておくわ。煌華民の娘はね、生まれつき高い戦闘能力を秘めていて、手足の硬化や一時的な身体能力増加、そして魔術とは異なる気を使って気功砲など未知な能力を持っている。そして武者修行とか言う訓練期間を経て大体は国家の傭兵になる程よ。大体が騎士などと行動を共にしていると思うのだけど」
「へえ特徴的な部分が多い民族なんやな」
「特徴的な口癖とはどう言う事アルね。この口癖にに聞きたい事があるアルか?ならわたしが説明するアル」
「いや待て、口癖までは言ってへんやろ。それにわいは容姿である黒目黒髪を称賛して言うたのに。口癖を出すって事は自覚があるって事やろ。それにアルアルやかましい」
「なっ。そんな事言わないで欲しいアル。実はそんな事言って本当は聞きたいヨロシ?意外とツンデレあるね旦那」
ツンデレじゃねえよ。
そこまで裏表の気丈が激しい面倒臭い性格では無いし。
ニヤけ顔をしながら腕をぐいぐい近づいてくるサンサンを無視してゼアミに身分証を渡す。
「ふむふむ。筋力も並の数倍だし耐久力と生命力が平均より上、幸運値が私と同じくらいだけど【バーザーカー】にはいらないし、火力的に問題無いと思うわ。身分証の偽造、改竄はできないし、それにスキル[鎧袖一触]を覚えているなんて凄いじゃない。このスキル難易度が極高で覚えれる人が数人くらいしかいないって謳われる最強火力攻撃だもの」
「それってそんなに強いんか?」
「強いなんてものじゃないわよ。空間破壊攻撃よ、空間破壊。防御バフを無効化して体力を全て持っていく最強スキルよ」
えっそれって強キャラ過ぎでは?
要は防御バフを全て破壊して攻撃してくるキャラってことだろ?
敵であったときはゲーマーにトラウマ植え付けそう。
牛丼を黙々と食べるサンサンを見る。
口元にご飯粒をつけながら黙々と食べ続ける。
マジか。こう見えてとんでもない娘が入ったな。
「ご馳走アル。ぷは〜久しぶりの満腹アルヨ」
「よぉ〜し。では食後三十分後にクエスト再開といこう。それと俺はトキマサでコイツはゼアミ。よろしゅうな最強【バーザーカー】」
「こっ、こちらこそよろしくアル」
こうして新たな仲間を入れてクリオネへのリベンジが始まった。
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